物質誘発性障害は薬物の直接的作用が関わる 物質関連障害 物質使用障害 物質使用障害は 物質関連障害の一種であり,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける病的な行動パターンを伴う。脳内神経回路の変化などの生理学的臨床像が認められることもある。 関わる物質は多くの場合, 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラスに含まれるものである。このような物質はいずれも脳内報酬系を直接活性化し,快感をもたらす。活性化が非常に強いために,患者はその物質を強く渇望し,その... さらに読む の一種であり,以下のものがある:
中毒
離脱
物質誘発性精神障害
物質使用に関連する病的な行動パターン(例,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける)を伴う物質関連障害は 物質使用障害 物質使用障害 物質使用障害は 物質関連障害の一種であり,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける病的な行動パターンを伴う。脳内神経回路の変化などの生理学的臨床像が認められることもある。 関わる物質は多くの場合, 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラスに含まれるものである。このような物質はいずれも脳内報酬系を直接活性化し,快感をもたらす。活性化が非常に強いために,患者はその物質を強く渇望し,その... さらに読む とみなされる。「嗜癖(addiction)」,「乱用(abuse)」,「依存(dependence)」といった一般的な用語は,定義があまりに曖昧かつ多様であるため,系統的診断には有用ではない。
中毒および離脱の具体的な臨床像および治療は物質または物質のクラスによって異なり,本マニュアルの別の箇所で考察されている。
中毒
中毒とは,可逆的で物質特異的な精神的および行動的変化の症候群が発生することを指し,知覚変化,多幸感,認知障害,判断力低下,身体的および社会的機能の低下,気分の変動,好戦性,またはこれらの併発などがみられる。極端な場合,中毒は過剰摂取,重大な病的状態,および死亡リスクに至ることがある。
離脱
離脱とは,物質の摂取の中止または摂取量の低減により引き起こされる物質特異的な生理的作用,症状,および行動の変化を指す。物質の離脱による障害として分類されるには,その離脱症候群が患者に著しい苦痛または機能障害(例,社会的,職業的)を引き起こしていることが必要である。離脱が生じている患者の大半は,その物質を再投与することで症状が軽減することを認識している。
離脱症候群を生じている患者に 物質使用障害 物質使用障害 物質使用障害は 物質関連障害の一種であり,物質の使用に関連する重大な問題を体験しているにもかかわらず,患者がその物質を使用し続ける病的な行動パターンを伴う。脳内神経回路の変化などの生理学的臨床像が認められることもある。 関わる物質は多くの場合, 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラスに含まれるものである。このような物質はいずれも脳内報酬系を直接活性化し,快感をもたらす。活性化が非常に強いために,患者はその物質を強く渇望し,その... さらに読む が認められる場合もあるが,一部の薬物,特に オピオイド オピオイド使用障害とリハビリテーション 「オピオイド」とは,特異的オピオイド受容体に結合するいくつかの天然物質(ケシに由来する),およびこれらの半合成/合成アナログを指す用語である。オピオイドは強力な鎮痛薬であると同時に,広く入手可能で多幸作用があるため,一般的な乱用薬物でもある。 オピオイド鎮痛薬ならびに オピオイド中毒および離脱も参照のこと。 ヘロインの乱用が広くみられ,処方されたオピオイド鎮痛薬(例,モルヒネ,オキシコドン,ヒドロコドン,フェンタニル)の乱用も増加してお... さらに読む , 催眠鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬には,ベンゾジアゼピン系,バルビツール酸系,およびこれらに関連する薬剤がある。高用量の薬剤は昏迷や呼吸抑制を引き起こすことがあり,その場合は 気管挿管と 機械的人工換気により管理する。長期薬剤使用者は激越と痙攣発作の離脱症候群を呈する場合があるため,代替薬(ペントバルビタールまたはフェノバルビタール)を併用下または非併用下でゆっくりと減薬することによって依存を管理する。... さらに読む ,および 刺激薬 アンフェタミン アンフェタミンは中枢刺激作用と多幸作用がある交感神経刺激薬であり,その中毒性有害作用には,せん妄,高血圧,痙攣発作,および高体温がある(これらは横紋筋融解症や腎不全を引き起こすことがある)。中毒の管理は,静注ベンゾジアゼピン系薬剤(激越,高血圧,および痙攣発作)や冷却法(高体温)などの支持療法により行う。典型的な離脱症候群は存在しない。 このクラスの元となった薬物であるアンフェタミンは,そのフェニル環上の様々な置換によって修飾された結果... さらに読む は,合法的かつ医学的な理由で比較的短期間(オピオイドでは1週間未満)の処方に従って摂取した場合でも離脱症状が生じることがある。適切な医療用途の後に生じる離脱症状は物質使用障害の診断基準として考慮されない。
物質誘発性精神障害
物質誘発性精神障害は,物質の使用または離脱により生じる精神状態の変化で,独立した精神障害(例, うつ病 抑うつ障害群 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む , 精神病 統合失調症および関連障害群に関する序論 統合失調症および関連する精神病性障害( 短期精神病性障害, 妄想性障害, 統合失調感情障害, 統合失調症様障害,および 統合失調型パーソナリティ障害)は,精神病症状に加えて,しばしば陰性症状と認知機能障害により最も強く特徴づけられる。 精神病症状には,妄想,幻覚,まとまりのない思考および発語,ならびに奇異で不適切な行動(緊張病を含む)が含... さらに読む , 不安 不安症の概要 恐怖や不安は誰もが日常的に経験するものである。 恐怖とは,直ちに認識可能な外部からの脅威(例,侵入者,凍結した路面でスピンする車)に対する情動的,身体的,および行動的な反応である。 不安とは,神経過敏や心配事による苦痛で不快な感情状態であり,その原因はあまり明確ではない。脅威が生じる厳密な時期と不安との間に強い結びつきはなく,不安は脅威の... さらに読む ,または神経認知障害)に類似するもののことである。
物質誘発性とみなされるためには,関与する物質にこの障害を引き起こす作用があることが知られている必要がある。物質は 一般的に物質関連障害を引き起こす10の薬物クラス 物質関連障害群の概要 物質関連障害群には,脳内報酬系を直接活性化する薬物が関与する。報酬系が活性化されると,典型的には快感が生じるが,具体的にどのような快感が誘発されるかは,薬物に応じて広い幅がある。このような薬物は,薬理学的機序の差異(全く別とは言えない)に基づき10のクラスに分類される。該当する薬物クラスとしては以下のものがある:... さらに読む に含まれている場合もあるが,そうでないものも多数存在する(例,抗コリン薬とコルチコステロイドは一時的な精神病性症候群を引き起こすことがある)。さらに,精神障害は以下の条件を満たしている必要がある:
物質中毒または離脱から1カ月以内に現れる
著しい苦痛または機能障害を引き起こしている
物質使用以前には認められなかった
相当の期間持続することはない*
*アルコール,吸入剤,または催眠鎮静薬により引き起こされるある種の神経認知障害および幻覚剤により引き起こされる知覚障害は長期に及ぶことがある。