身体集中反復行動症

執筆者:Katharine Anne Phillips, MD, Weill Cornell Medical College;
Dan J. Stein, MD, PhD, University of Cape Town
レビュー/改訂 2021年 1月
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身体集中反復行動症(body-focused repetitive behavior disorder)は,身体集中反復行動(例,爪を噛む,唇を噛む,頬を噛む)およびその行動をやめようとする試みにより特徴づけられる。

身体集中反復行動症は,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)における他の特定される強迫症および関連症の一例である。DSM-5では,強迫症および関連症群の章において抜毛症(トリコチロマニア)と皮膚むしり症を異なる障害として分類しているが,これらの行動は身体集中反復行動の一種でもある。

症状と徴候

本障害の患者は,身体を対象とする行為(例,爪を噛む,唇を噛む,頬を噛む)を繰り返し行う。

それらの行為をいくらか自動的に(すなわち,十分に意識せずに)行う患者もいれば,それらの行為をより意識している患者もいる。その行動は,強迫観念や外見に関する悩みによって誘発されるわけではないが,緊張感や不安感が先行していて,それがその行動によって軽減している場合があり,しばしばその後に満足感を覚えている。身体集中反復行動症の患者は,典型的には自らの行動をやめたり頻度を減らしたりしようと試みるが,いずれも不成功に終わる。

重度の爪噛みまたは爪むしり(爪甲損傷癖)により,著しい爪変形(例,洗濯板状の変形,または嗜癖性爪変形[habit-tic nail deformity])や爪下出血が生じることもある。

診断

  • 臨床基準

DSM-5の身体集中反復行動症の診断基準を満たすには,典型的には患者が以下に該当する必要がある:

  • 抜毛または皮膚むしり以外の身体集中反復行動を呈する

  • その行動をやめることや頻度を減らすことを繰り返し試みる

  • その行動により著しい苦痛または機能障害を経験する

治療

  • N-アセチルシステイン

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはクロミプラミン

  • 認知行動療法(通常は習慣逆転法)

身体集中反復行動症の治療法として薬剤(例,N-アセチルシステイン,SSRI,またはクロミプラミン)や認知行動療法(習慣逆転法が最も多い)などがあるが,データが非常に限られている。習慣逆転法は,行動療法的な側面が強く,以下で構成される:

  • 気づきの訓練(例,セルフモニタリング,行動の引き金になる因子の特定)

  • 刺激統制法(身体集中行動を始める可能性を低下させるために状況を変化させる手法―例,誘因の回避)

  • 競合反応訓練(身体集中行動の代わりに,こぶしを握りしめる,編み物をする,手の上に座るなど別の行動を行うよう指導する)

治療は抜毛症および皮膚むしり症のそれと同様である。

要点

  • 身体集中反復行動症では,爪を噛む,唇を噛む,頬を噛むなどの身体集中行動を繰り返し行う。

  • それらの身体集中行動は,強迫観念や外見に関する悩みによって誘発されるわけではないが,緊張感や不安感が先行していて,それがその行動によって軽減している場合があり,しばしばその後に満足感を覚えている。

  • 典型的には,本障害の患者は自らの行動をやめたり頻度を減らしたりしようと試みるが,いずれも不成功に終わる。

  • N-アセチルシステイン,SSRI,もしくはクロミプラミン,および/または習慣逆転法を含む認知行動療法を用いて治療する。

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