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回避性パーソナリティ障害(AVPD)

執筆者:

Andrew Skodol

, MD, University of Arizona College of Medicine

レビュー/改訂 2019年 12月
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回避性パーソナリティ障害は,拒絶,批判,または屈辱を受けるリスクを伴う社会的状況または交流を回避することを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は精神療法,抗不安薬,および抗うつ薬による。

回避性パーソナリティ障害患者は強い不全感を抱いており,否定的に評価される可能性のあるあらゆる状況を回避することで不適応的に対処する。

米国における回避性パーソナリティ障害について報告されている有病率は様々であるが,推定有病率は約2.4%である。回避性パーソナリティ障害は男女で同等に生じる。

併存症がよくみられる。患者は うつ病 うつ病(単極性障害) 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む ,持続性抑うつ障害, 強迫症 強迫症 (OCD) 強迫症(OCD)は,反復的かつ持続的で,患者自身の意思に反し,かつ侵入的に生じる思考,衝動,もしくはイメージ(これらを強迫観念と称する),および/または強迫観念が引き起こす不安を軽減ないし避けるために患者が行わざるを得ないと感じる反復的な行動もしくは精神的行為(これらを強迫行為と称する)を特徴とする。診断は病歴に基づく。治療は精神療法(具... さらに読む ,または 不安症 不安症の概要 恐怖や不安は誰もが日常的に経験するものである。 恐怖とは,直ちに認識可能な外部からの脅威(例,侵入者,凍結した路面でスピンする車)に対する情動的,身体的,および行動的な反応である。 不安とは,神経過敏や心配事による苦痛で不快な感情状態であり,その原因はあまり明確ではない。脅威が生じる厳密な時期と不安との間に強い結びつきはなく,不安は脅威の... さらに読む (例, パニック症 パニック発作およびパニック症 パニック発作は,身体症状および/または認知面での症状を伴う強い不快感,不安,または恐怖が,突然に,個別に,短時間発現する現象である。パニック症は,パニック発作が繰り返し発生し,典型的にはそれに付随して,将来の発作に対する恐怖,または発作を起こしやすいと考えられる状況を回避しようとする行動の変化が生じる。診断は臨床的に行う。個々のパニック発作は治療を要さないこともある。パニック症は薬物療法,精神療法(例,曝露療法,認知行動療法),またはそ... さらに読む ,特に 社交恐怖症 社交恐怖症 社交恐怖症は,何かを実施する特定の対人場面に曝露することに関する恐怖および不安である。それらの状況は回避されるか,耐えるのに強い不安を伴う。 恐怖症は 不安症の一種で,特定の状況または対象によって恐怖と不安が生じることで,患者はそれらを回避するようになる。その恐怖と不安は,実際の脅威とは(患者が置かれている社会的な状況を考慮しても)釣り合わない。 限局性恐怖症には多くの種類がある。... さらに読む [社交不安症])も有していることが多い。患者が他のパーソナリティ障害(例, 依存性 依存性パーソナリティ障害(DPD) 依存性パーソナリティ障害は,ケアをしてもらいたいという広範かつ過度の欲求を特徴とし,それにより従属的でしがみつく行動がみられる。診断は臨床基準による。治療は精神療法,場合により抗うつ薬による。 ( パーソナリティ障害の概要も参照のこと。) 依存性パーソナリティ障害患者では,ケアをしてもらいたいという要求のために,自律性および関心を失う。自分のケアをすることに強い不安を抱いているため,過度に依存的,服従的になる。... さらに読む 境界性 境界性パーソナリティ障害(BPD) 境界性パーソナリティ障害は,対人関係の不安定性および過敏性,自己像の不安定性,極度の気分変動,ならびに衝動性の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は精神療法および薬剤による。 ( パーソナリティ障害の概要も参照のこと。) 境界性パーソナリティ障害患者は孤独に対する耐え難さを有する;見捨てられることを避けるために死に物狂いの努力を払い,他者が救助またはケアをしてくれるよう仕向ける形で... さらに読む )を有していることもある。社交恐怖症および回避性パーソナリティ障害を有する患者は,いずれかの障害のみの患者よりも重度の症状および能力障害を示す。

AVPDの病因

研究の示唆するところによると,小児期の拒絶および疎外体験ならびに生来の対人不安傾向および社会的回避の特性が回避性パーソナリティ障害に寄与している可能性がある。社会的状況での回避は約2歳という早期から認められている。

AVPDの症状と徴候

回避性パーソナリティ障害患者は,自分が批判されたり,拒絶されたりすること,または他者に気に入られないことを恐れるために,以下の状況のように,仕事でのものを含む社会的交流を回避する:

  • 同僚が自分を批判するのではないかと恐れるために,昇進を拒否する。

  • 会議を避ける。

  • 自分が好かれることを確信できない限り,新しい友人を作ることを回避する。

このような患者は,厳格な検証によりそうではないことが証明されるまで,他者は批判的であり,不満を抱いていると考えている。このため,この障害の患者は,グループに加わり,親密な人間関係を築く前に,繰り返し支持され無批判に受容されることにより安心する必要がある。

回避性パーソナリティ障害患者は社会的交流を望んでいるが,自分の幸福を他者の手に委ねることを恐れている。このような患者は人との交流を限定するため,比較的孤立する傾向があり,必要な場合に患者が助けを求められる社会的ネットワークをもたない。

このような患者は,他者から批判されたり,拒絶されたりすることを常に考えているため,なんであれわずかな批判,否認,または嘲笑に対して極めて敏感である。自分に対する否定的反応の徴候がみられないか警戒している。患者の緊張した不安そうな様子のために周囲から嘲りやからかいを受けることがあり,それにより自信の喪失を強めてしまうようである。

自尊心の低さおよび不全感のために患者は社会的状況,特に新しい状況で抑制的となる。患者は自分が社会的に不器用で,魅力がなく,他の人に劣っていると考えているため,新しい人との交流が阻害される。自分が何か言えば,他者はそれが間違っていると言うと考える傾向があるため,患者は静かで臆病となる傾向があり,姿を消そうとする。嘲られたり,屈辱を感じたりしないために,自分について語りたがらない。批判された際に赤くなったり,泣いてしまったりしまいかと心配する。

回避性パーソナリティ障害患者は,同様の理由で個人的リスクを取ったり,新しい活動に参加したりすることに非常に後向きである。そのような状況では,患者は回避の言い訳をするために,危険を誇張し,ささいな症状または他の問題を利用する傾向がある。患者は安心感と確実性を必要とするため,限定的な生活習慣を好む場合がある。

AVPDの診断

  • 診断基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition[DSM-5])

回避性パーソナリティ障害の診断を下すには,患者に以下が認められる必要がある:

  • 社会的接触の回避,不全感,ならびに批判および拒絶に対する過敏さを示す持続的パターン

このパターンは,以下のうちの4つ以上が認められることによって示される:

  • 自分が批判されたり,拒絶されたりすること,または他者に気に入られないことを恐れるため,対人的接触を伴う仕事関連の活動を回避する

  • 自分が好かれることが確実ではない限り人と関わりたがらない

  • 冷笑または屈辱を恐れるため,親密な関係を築くことをためらう

  • 社会的状況で批判されたり,拒絶されたりすることへのとらわれがある

  • 不全感を覚えているため,新しい社会的状況で抑制的になる

  • 社会的に無能力である,魅力がない,または他者に劣っているという自己像をもっている

  • 恥をかく可能性があるために,個人的リスクを取ったり,新しい活動に参加したりしたがらない

また,症状は成人期早期までに始まっている必要がある。

鑑別診断

回避性パーソナリティ障害は以下の2つの障害と鑑別する必要がある:

AVPDの治療

  • 社会的技能に焦点を当てた認知行動療法

  • 支持的精神療法

  • 精神力動的精神療法

  • 抗不安薬と抗うつ薬

回避性パーソナリティ障害患者はしばしば治療を避ける。

社交恐怖症および回避性パーソナリティ障害の両方を有する患者に対する効果的な治療法としては以下のものがある:

  • 社会的技能の習得に焦点を当て,集団で行う認知行動療法

  • 集団が同じ問題を有する患者から成る場合は,他の集団療法

回避性パーソナリティ障害患者には以下が有益となる:

  • 患者の他者に対する過敏性に対して支持的で,配慮する個人療法

基礎にある葛藤に焦点を当てた精神力動的精神療法が役立つことがある。

効果的な薬物療法として, 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) うつ病の治療には,いくつかの薬物クラスおよび薬物が使用できる: 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニン調節薬(5-HT2遮断薬) セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 ノルアドレナリン-ドパミン再取り込み阻害薬 さらに読む (SSRI), 抗不安薬 治療 全般不安症は,複数の活動または出来事に対する過剰な不安や心配が起こる日が起こらない日より多い状態が,6カ月以上にわたり認められることを特徴とする。 アルコール使用障害, うつ病,または パニック症の患者に併発することが多いが,原因は不明である。診断は病歴および身体診察に基づく。治療法は精神療法,薬物療法,またはその両方である。 ( 不安症の概要も参照のこと。) 全般不安症は頻度の高い疾患であり,1年間で人口の約3%が罹患する。女性は男性... さらに読む (不安を軽減し,患者が新しい社会的状況に自身を曝せるようにするのに役立つ), モノアミン酸化酵素阻害薬 モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI) うつ病の治療には,いくつかの薬物クラスおよび薬物が使用できる: 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニン調節薬(5-HT2遮断薬) セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 ノルアドレナリン-ドパミン再取り込み阻害薬 さらに読む (MAOI)などがある。

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