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急性細菌性髄膜炎

執筆者:

John E. Greenlee

, MD, University of Utah Health

レビュー/改訂 2020年 12月
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急性細菌性髄膜炎は,急速に進行する髄膜およびくも膜下腔の細菌感染症である。典型的な所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は抗菌薬およびコルチコステロイドにより,これらを可及的速やかに投与する。

急性細菌性髄膜炎の病態生理

白血球,免疫グロブリン,および補体は正常では髄液にわずかしかないかまたは存在しないため,初期には細菌は炎症を起こすことなく増殖する。その後,細菌が内毒素およびタイコ酸とその他の物質を放出し,これらが白血球や腫瘍壊死因子(TNF)などを媒介として炎症反応を惹起する。典型的には,髄液中ではタンパク質は増加する一方,細菌がブドウ糖を消費し,髄液中へのブドウ糖の運搬も減るため,ブドウ糖濃度は減少する。急性細菌性髄膜炎では典型的には脳実質が侵される。

くも膜下腔における炎症は皮質脳炎および脳室炎を伴うことがある。

細菌性髄膜炎の合併症は頻度が高く,以下のものがみられる:

急性細菌性髄膜炎の病因

可能性の高い細菌性髄膜炎の原因菌は以下によって変わる:

  • 患者年齢

  • 侵入経路

  • 患者の免疫状態

年齢

  • B群レンサ球菌,特にStreptococcus agalactiae

  • 大腸菌(Escherichia coli)またはその他のグラム陰性細菌

  • Listeria monocytogenes

月齢の高い乳児,小児,および若年成人の細菌性髄膜炎で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis

  • 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae

髄膜炎菌(N. meningitidis)性髄膜炎は,ときに数時間以内に死に至る。髄膜炎菌(N. meningitidis)によって引き起こされる敗血症は,ときに凝固障害と両側性の副腎出血性梗塞を来す(Waterhouse-Friderichsen症候群)。

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型は,以前は6歳未満の小児および全体で髄膜炎の最も一般的な原因であったが,現在ではインフルエンザ菌(H. influenzae)ワクチンが広く用いられている米国および西欧ではまれな原因である。しかしながら,ワクチンが広く使用されていない地域では,インフルエンザ菌(H. influenzae)は依然として一般的な原因となっており,特に生後2カ月から6歳の小児でその傾向が強い。

中年成人および高齢者では,細菌性髄膜炎の最も一般的な原因は以下のものである:

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae

頻度は低いが,髄膜炎菌(N. meningitidis)が中年成人および高齢者に髄膜炎を引き起こすこともある。加齢とともに宿主防御機構が低下すると,L. monocytogenesまたはグラム陰性細菌による髄膜炎を発症しうる。

全ての年齢層において,ときに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が髄膜炎を引き起こすことがある。

侵入経路

侵入経路としては以下のものがある:

  • 血行性に感染(最も一般的な経路)

  • 頭部の内部または周囲の感染した構造物(例,副鼻腔,中耳,乳様突起)から,ときに髄液漏に合併

  • 穿通性の頭部外傷を介して

  • 脳神経外科手技の後(例,脳室シャントが感染した場合)

  • 先天性または後天性の頭蓋骨または脊椎の欠損を介して

上のいずれかの病態がある場合は髄膜炎を発症するリスクが高まる。

免疫状態

全体として,易感染性患者の細菌性髄膜炎で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae

  • L. monocytogenes

  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa

  • 結核菌(Mycobacterium tuberculosis

  • 髄膜炎菌(N. meningitidis

  • グラム陰性細菌

しかしながら,最も可能性が高い細菌は免疫不全の病型によって異なる:

非常に幼若な乳児(特に早産児)と高齢者では,T細胞性免疫が弱い可能性があり,そのため,これらの年齢層ではL. monocytogenesによる髄膜炎のリスクがある。

急性細菌性髄膜炎の症状と徴候

ほとんどの症例において,細菌性髄膜炎は倦怠感,発熱,易刺激性,嘔吐などの非特異的症状が3~5日間の内に潜行的に進行することにより開始する。しかしながら,より急速に発症することもあり,劇症になる可能性があるため,細菌性髄膜炎はそれまで健常であった若年個人が軽度の症状で入眠し,二度と目覚めない結果となりうる数少ない疾患の1つである。

髄膜炎の典型的な症状および徴候としては以下のものがある:

  • 発熱

  • 頻脈

  • 頭痛

  • 羞明

  • 精神状態の変化(例,嗜眠,意識障害)

  • 項部硬直(全ての患者にみられるわけではない)

  • 背部痛(頭痛よりも弱いため,頭痛によって覆い隠されることがある)

急性細菌性髄膜炎の小児の最大40%で初期に痙攣発作が起こり,成人でみられることもある。最大12%の患者が昏睡状態で来院する。

合併する全身感染症を病原体別に以下に示す:

  • 発疹,点状出血,または紫斑(髄膜炎菌血症を示唆する)

  • 肺のコンソリデーション(肺炎球菌[S. pneumoniae]による髄膜炎でしばしばみられる)

  • 心雑音(心内膜炎を示唆する―例,黄色ブドウ球菌[S. aureus]または肺炎球菌[S. pneumoniae]が原因であることが多い)

成人における非典型的な臨床像

易感染性患者,高齢患者,およびアルコール依存症患者では,発熱や項部硬直がみられないか,軽度となることがある。高齢患者ではしばしば,それまで意識清明であった患者の錯乱や,認知症患者における反応性の変化が唯一の徴候となる。そのような患者では,新生児と同様,腰椎穿刺を行う基準を低めに設定すべきである。局所神経脱落症状があるか,頭蓋内圧の亢進が疑われる場合は,脳画像検査(MRIまたはやや劣るがCT)を行うべきである。

脳神経外科手技後に細菌性髄膜炎が発生する場合は,しばしば症状出現に数日かかる。

急性細菌性髄膜炎の診断

  • 髄液検査

急性細菌性髄膜炎が疑われる場合は,直ちに血液培養および髄液検査のため腰椎穿刺(禁忌がない場合)を行う。血糖値を髄液糖の測定値と比較するため,腰椎穿刺の施行時に血液の分析も行うべきである。治療は以下のように開始すべきである:

  • 細菌性髄膜炎が疑われ,患者の状態が極めて不良な場合は,たとえ腰椎穿刺の施行前でも,直ちに抗菌薬とコルチコステロイドを投与する。

  • 細菌性髄膜炎が疑われ,CTまたはMRIが未施行で腰椎穿刺が遅れる場合は,抗菌薬とコルチコステロイドは血液培養の後,神経画像検査の前に開始すべきである;診断確定を待って治療を遅らせてはならない。

典型的な症候(通常は発熱,精神状態の変化,項部硬直など)がみられる患者では,細菌性髄膜炎を疑うべきである。しかしながら,新生児や乳児では現れる症候が異なり,また高齢患者,アルコール依存症患者,および易感染性患者では,症候が認められないか,初期には軽度となる場合があることに留意しておく必要がある。以下の患者では診断が困難になることがある:

  • 脳神経外科的処置を受けた患者(このような処置によっても精神状態の変化と項部硬直が起こる可能性があるため)

  • 高齢患者およびアルコール依存症患者(代謝性脳症[複数の原因が想定される]によって,あるいは転倒と硬膜下血腫によって精神状態の変化が起こっている可能性があるため)

未治療の細菌性髄膜炎は致死的であるため,髄膜炎の可能性が少しでもあれば検査を行うべきである。乳児,高齢患者,アルコール依存症患者,易感染性患者,および脳神経外科手技を受けた患者では,症状が非典型的となることがあるため,検査が特に役立つ。

パール&ピットフォール

  • たとえ臨床所見が髄膜炎に特異的でなくとも腰椎穿刺を行うべきであり,特に乳児,高齢患者,アルコール依存症患者,易感染性患者,および脳神経外科手術を受けた患者ではなおさらである。

所見から急性細菌性髄膜炎が疑われれば,以下のルーチン検査を行う:

  • 髄液検査

  • 血算と白血球分画

  • 生化学検査

  • 血液培養に加え,可能であればポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法

腰椎穿刺

緊急腰椎穿刺の禁忌は,著明な頭蓋内圧亢進または頭蓋内の腫瘤効果(mass effect)を示唆する徴候(例,浮腫,出血,または腫瘍によるもの)であり,典型的な徴候としては以下のものがある:

  • 局所神経脱落症状

  • 乳頭浮腫

  • 意識レベルの低下

  • 痙攣発作(発症から1週間以内)

  • 易感染状態

  • 中枢神経系疾患の既往(例,腫瘤性病変,脳卒中,局所感染症)

このような場合は,腰椎穿刺は脳ヘルニアの原因となる可能性があるため,神経画像検査(典型的にはCTまたはMRI)を行って頭蓋内圧亢進と腫瘤効果がないか確認するまで,腰椎穿刺は延期する。腰椎穿刺を延期した場合は,治療は直ちに開始するのが最善である(培養のための血液検体採取後かつ神経画像検査前)。頭蓋内圧が亢進していた場合は低下後,または腫瘤効果と閉塞性水頭症がいずれも検出されなければ,腰椎穿刺を施行できる。

髄液を検査室に提出すべきである:臨床的な適応に応じて細胞数,タンパク質,糖,グラム染色,培養,PCR法,その他の検査を行う。新技術のmultiplex film-array PCRパネルでは,髄液検体中の複数の細菌およびウイルスとCryptococcus neoformansを迅速にスクリーニングできる。この検査は必ずしも常に実施できるものでなく,培養や従来の検査の代わりになるものでもないが,そのような検査を補助する目的で用いられる。同時に血液検体を採取し,検査に出して髄液糖/血糖比を確定すべきである。白血球が採取管の壁に付着すると誤って低い値が出ることがあるため,可及的速やかに髄液細胞数を測定すべきである;極めて膿性の髄液では,白血球が溶解することがある。

細菌性髄膜炎の典型的な髄液所見としては,以下のものがある(髄膜炎における髄液所見 髄膜炎における髄液所見 髄膜炎における髄液所見 の表を参照):

  • 髄液圧亢進

  • しばしば髄液の混濁

  • 白血球数高値(好中球優位)

  • タンパク質上昇

  • 髄液糖/血糖比の低値

髄液糖/血糖比 < 50%は髄膜炎の可能性を示唆する。髄液糖 ≤ 18mg/dLまたは髄液糖/血糖比 < 0.23の場合は,細菌性髄膜炎が強く示唆される。しかしながら,髄液糖の変化は血糖値の変化に対して30~120分遅れる可能性がある。急性細菌性髄膜炎では,タンパク質上昇(通常100~500mg/dL)は血液脳関門の損傷を示唆する。

急性細菌性髄膜炎患者における髄液細胞数ならびにタンパク質および糖値は常に典型的であるとは限らない。非典型的な髄液所見としては以下のものがありうる:

  • 早期では細菌が認められる以外は正常

  • 約14%の患者においてリンパ球優位,特にグラム陰性菌による髄膜炎の新生児,L. monocytogenesによる髄膜炎患者,および部分的に治療を受けた細菌性髄膜炎患者の一部

  • 約9%の患者で糖値が正常

  • 重度の免疫抑制患者では白血球数が正常

最初の髄液所見が不明確な場合は,12~24時間後に腰椎穿刺を再度行うことで,髄液の変化傾向あるいは検査エラーの有無が明らかになることがある。

髄液中の原因菌の同定方法は,グラム染色,培養,可能な場合はPCR法などである。グラム染色はすぐに結果が出るが,得られる情報は限られている。細菌をグラム染色で確実に同定するには,105/mLの菌数が必要である。次のいずれかが起きると,偽陰性の判定が出る可能性がある:

  • 髄液が不注意に取り扱われる。

  • 髄液が沈殿した後に細菌が十分に再懸濁されない。

  • 脱色またはスライドの解釈で誤りが起きる。

嫌気性菌感染またはその他のまれな細菌が疑われる場合は,検体培養が開始される前に検査室にその旨を報告すべきである。先に抗菌薬療法が開始された場合は,グラム染色および培養による診断率は低下する可能性がある。細菌抗原を同定するためのPCR法と可能であれば,ラテックス凝集法は有用な補助検査となる可能性があり,特に抗菌薬がすでに投与された患者ではその可能性が高い。

抗菌薬感受性の判定には細菌培養を要する。

髄膜炎の原因が確定するまで,髄液または血液検体を使用して髄膜炎のその他の原因,例えばウイルス(特に単純ヘルペス),真菌,がん細胞などがないかを確認することもある。

その他の検査

感染が疑われる他の部位(例,尿路または気道)からの検体も培養すべきである。

急性細菌性髄膜炎の予後

抗菌薬治療を行うと,19歳未満の小児では死亡率が3%まで低下する場合もあるが,これより高率となる場合も多く,また,生存児に難聴や精神神経学的障害が残ることがある。死亡率は,たとえ抗菌薬治療を行っても,60歳未満の成人で約17%であるが,60歳以上では最大37%にも上る。黄色ブドウ球菌(S. aureus)による市中髄膜炎の死亡率は43%である。

一般に,死亡率は意識障害または昏睡の深度と相関する。予後不良因子としては以下のものがある:

痙攣発作および髄液糖/血糖比の低下もまた予後不良を示すことがある。

急性細菌性髄膜炎の治療

  • 抗菌薬

  • 脳の炎症および浮腫を軽減するためコルチコステロイド

急性細菌性髄膜炎の治療の中心は抗菌薬である。抗菌薬に加え,脳および脳神経の炎症や頭蓋内圧亢進を軽減する処置などを行う。

ほとんどの患者が集中治療室(ICU)に収容される。

抗菌薬

抗菌薬は原因菌に対し殺菌作用のあるものでなければならず,また血液脳関門を貫通できるものでなければならない。

患者の状態が悪く,所見から髄膜炎が示唆される場合は,血液培養用の検体を採取し次第,たとえ腰椎穿刺を行う前であっても,直ちに抗菌薬(急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬 急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬 急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬 の表を参照)とコルチコステロイドを開始する。また,神経画像検査の結果が出るまで腰椎穿刺を延期する場合は,神経画像検査を行う前に抗菌薬とコルチコステロイドによる治療を開始する。

パール&ピットフォール

  • 患者の状態が悪く見え,急性髄膜炎が疑われる場合は,血液培養検体を採取後できる限り早く,抗菌薬およびコルチコステロイドによる治療を開始するべきである。

適切な経験的抗菌薬は,患者の年齢および免疫状態ならびに感染経路によって異なる(急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬 急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬 急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬 の表を参照)。一般に,肺炎球菌,髄膜炎菌,および黄色ブドウ球菌に効果を示す抗菌薬を使用すべきである。妊婦,新生児,高齢患者,および易感染性患者では,リステリア(Listeria)髄膜炎が起きる可能性があり,特異的な抗菌薬,通常はアンピシリンによる治療が必要である。単純ヘルペス脳炎は初期の細菌性髄膜炎に臨床像が類似することがあり,そのためアシクロビルを追加する。抗菌薬療法は,培養および感受性試験の結果に応じて変更が必要になる場合がある。

一般的に使用されている抗菌薬としては以下のものがある:

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae)および髄膜炎菌(N. meningitidis)に対して,第3世代セファロスポリン系抗菌薬

  • L. monocytogenesに対して,アンピシリン

  • 肺炎球菌(S. pneumoniae)のペニシリン耐性株および黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して,バンコマイシン

コルチコステロイド

デキサメタゾンは脳および脳神経の炎症と浮腫を軽減するために使用するが,治療開始時に投与すべきである。用量は成人では10mg静注,小児では0.15mg/kg静注とする。デキサメタゾンは抗菌薬を開始する直前または開始と同時に投与し,6時間間隔で4日間継続する。

デキサメタゾンについては,肺炎球菌性髄膜炎の患者に対する使用が最もよく確立されている。

その他の対策

その他の対策の有効性はあまり証明されていない。

乳頭浮腫または切迫する脳ヘルニアの徴候がみられる患者には,頭蓋内圧亢進に対する以下の治療を行う:

  • ベッドの頭側を30˚挙上する

  • PCO2が27~30mmHgになるまで過換気を行い,頭蓋内の血管収縮を促す

  • マンニトールの静注による浸透圧利尿

通常,成人にはマンニトール1g/kgを30分かけて急速静注し,必要に応じてこれを3~4時間毎に繰り返すか,または0.25g/kgを2~3時間毎に繰り返す一方,小児には0.5~2.0g/kgを30分かけて急速静注し,これを必要に応じて繰り返す。

さらなる対策としては以下のものがある:

  • 輸液

  • 抗てんかん薬

  • 併存する感染症の治療

  • 特定の合併症に対する治療(例,Waterhouse-Friderichsen症候群に対するコルチコステロイド,硬膜下膿瘍に対する外科的ドレナージ)

急性細菌性髄膜炎の予防

インフルエンザ菌(H. influenzae)b型に対するワクチン,ならびにより程度は低いが髄膜炎菌(N. meningitidis)および肺炎球菌(S. pneumoniae)に対するワクチンは細菌性髄膜炎の発生率を下げた。

物理的対策

治療開始後24時間にわたり患者を(飛沫感染予防策を用いて)空気感染隔離することは,髄膜炎の拡散予防に役立つ可能性がある。手袋,マスク,およびガウンを使用する。

予防接種

予防接種により,特定の病型の細菌性髄膜炎を予防することができる。

  • 免疫不全または機能的無脾症がある2~10歳の小児

  • 全ての小児に11~12歳時に接種,16歳時に追加接種

  • より年長の小児,寮生活をする大学生,および軍隊の新兵で,以前にワクチン接種を受けたことがない者

  • 流行地域への旅行者または居住者

  • 日常的に髄膜炎菌検体を取り扱う検査室職員

髄膜炎の流行中は,リスク集団(例,大学生,小さな町)を同定しなければならず,集団ワクチン接種を開始する前にリスク集団の大きさを判定しなければならない。取り組みには費用がかかり,公共教育および支援が必要であるが,これにより命が救われ,合併症が軽減する。

髄膜炎菌ワクチンに血清型Bの髄膜炎菌性髄膜炎に対する予防効果はなく,ワクチンを接種済みの患者が髄膜炎症状で来院した場合は,このことに留意すべきである。

化学予防

髄膜炎を有する患者と対面で長時間接触した個人(例,家庭またはデイケアでの接触,医療関係者および患者の口腔内分泌物に曝露するその他の人々)には,曝露後化学予防を行うべきである。

髄膜炎菌性髄膜炎に対する化学予防は,以下のいずれかで構成される:

  • リファンピシン600mg(生後1カ月以上の小児には10mg/kg;1カ月未満の小児には5mg/kg),経口,12時間毎,4回

  • セフトリアキソン250mg(15歳未満の小児には125mg),筋注,1回

  • 成人には,フルオロキノロン系薬剤(シプロフロキサシンもしくはレボフロキサシン500mgまたはオフロキサシン400mg),経口,1回

インフルエンザ菌(H. influenzae)b型による髄膜炎に対しては,化学予防としてリファンピシンを20mg/kg,経口,1日1回(最大600mg/日)4日間投与する。2歳未満の小児に保育施設での曝露に対する予防措置が必要か否かについては,コンセンサスが得られていない。

その他の型の細菌性髄膜炎患者との接触に対する化学予防は通常必要ない。

急性細菌性髄膜炎の要点

  • 小児および成人における急性細菌性髄膜炎の一般的な原因菌としては,髄膜炎菌(N. meningitidis)や肺炎球菌(S. pneumoniae)などがあり,乳児および高齢者における一般的な原因菌としては,Listeria属細菌などがあるが,黄色ブドウ球菌(S. aureus)も全ての年齢層でときに髄膜炎を引き起こす。

  • 乳児,アルコール依存症患者,高齢患者,易感染性患者,および脳神経外科手技後に髄膜炎を発症した患者では,典型的な特徴を認めないか,認めても軽度である場合がある。

  • 局所神経脱落症状,意識障害,痙攣発作,または乳頭浮腫(頭蓋内圧亢進または腫瘤効果を示唆する)がある場合は,神経画像検査の結果が出るまで腰椎穿刺を延期する。

  • 急性細菌性髄膜炎は,たとえ診断確定前であっても,可及的速やかに治療を開始する。

  • 経験的に選択される一般的な抗菌薬レジメンには,しばしば第3世代セファロスポリン系薬剤(肺炎球菌[S. pneumoniae]および髄膜炎菌[N. meningitidis]に対して),アンピシリン(L. monocytogenesに対して),バンコマイシン(肺炎球菌[S. pneumoniae ]のペニシリン耐性株および黄色ブドウ球菌[S. aureus]に対して)が含まれる。

  • インフルエンザ菌(H. influenza),肺炎球菌(S. pneumoniae),および髄膜炎菌(N. meningitidis)に対するルーチンのワクチン接種と髄膜炎菌(N. meningitidis)に対する化学予防は髄膜炎の予防に役立つ。

急性細菌性髄膜炎についてのより詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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