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人工関節の感染性関節炎

執筆者:

Steven Schmitt

, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University

レビュー/改訂 2020年 9月
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人工関節には急性および慢性感染症のリスクがあり,敗血症や種々の合併症につながり,死に至ることもある。しばしば最近の転倒歴がみられる。症状としては,関節痛,腫脹,運動制限などがある。診断は様々な基準に基づく。治療は長期にわたる抗菌薬療法と通常は関節切開による。

病因

人工関節では通常の関節よりも感染が多くみられる。感染の原因は,周術期における関節内への細菌の播種のほか,皮膚感染,肺炎,歯科処置,侵襲の大きい器具使用,尿路感染症,ときに転倒に起因する手術後の菌血症によって引き起こされることが多い。

関節の感染の3分の2の症例は術後1年以内に発生する。術後の最初の数カ月間では,原因は症例の50%が 黄色ブドウ球菌 ブドウ球菌感染症 ブドウ球菌はグラム陽性好気性細菌である。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も病原性が強く,典型的には皮膚感染症を引き起こすほか,ときに肺炎,心内膜炎,骨髄炎を引き起こすこともある。一般的には膿瘍形成につながる。一部の菌株は,胃腸炎,熱傷様皮膚症候群,および毒素性ショック症候群を引き起こす毒素を産生する。診断はグラム染色と培養による。治療には通常,ペニシリナーゼ抵抗性β-ラクタム系薬剤を使用する... さらに読む ブドウ球菌感染症 ,35%が混合菌叢,10%がグラム陰性菌,5%が嫌気性菌である。感染した人工肩関節では特にPropionibacterium acnesがよくみられ,その検出には長時間の培養(最長2週間)が必要になることがある。5%未満の症例で Candida カンジダ症(侵襲性) カンジダ症はCandida属真菌(最も頻度が高いのはC. albicans)による感染症であり,皮膚粘膜病変や真菌血症,ときに複数部位の病巣感染症として発症する。症状は感染部位に依存し,具体的には嚥下困難,皮膚粘膜病変,失明,腟症状(そう痒,灼熱感,分泌物),発熱,ショック,乏尿,腎機能停止,播種性血管内凝固症候群などがみられる。診断は,病理組織学的検査および本来は無菌の部位からの培養によって確定される。治療... さらに読む カンジダ症(侵襲性) 属が人工関節に感染する。

症状と徴候

約25%の患者には症状の発現前2週間以内に転倒歴があり,約20%には外科的修復歴がある。

一部の患者では,消失するかに見えた手術創感染があり,何カ月にもわたり順調な術後回復を示した後に,安静時および荷重負荷時に持続性の関節痛が生じている。

人工関節の感染性関節炎の症状および徴候としては疼痛,腫脹,運動制限などがあり,体温は正常のことがある。

診断

  • 臨床基準,微生物学的基準,病理学的基準,および画像診断基準

人工関節の感染性関節炎の診断には,しばしば臨床基準,微生物学的基準,病理学的基準,画像診断基準を組み合わせる必要がある。瘻孔と人工関節との連絡も,それにより感染症の診断に至ると考えられることがある。

細胞数測定および培養のために滑液を採取すべきである。X線では人工関節の緩みまたは骨膜反応が示されることがあるが,X線で診断は決められない。テクネチウム99mによる骨シンチグラフィーおよびインジウムで標識した白血球シンチグラフィーは単純X線よりも感度が高いが,手術直後では特異性に欠ける。最終的に,手術時に採取した人工関節周囲組織を培養および組織学的分析に供することがある。

治療

  • デブリドマンを伴う関節切開

  • 長期にわたる全身投与の抗菌薬療法

人工関節感染症の治療は長期にわたって行う必要があり,通常は全てのセメント,膿瘍,および壊死組織の慎重なデブリドマンとともに人工関節抜去のための関節切開を含む。デブリドマンの後,直ちに人工関節の修正または抗菌薬をしみこませたスペーサーの留置を行い,その後先延ばしにした(2~4カ月)新しい人工関節の埋め込みを,抗菌薬をしみこませたセメントを用いて行う。

いずれの場合も長期にわたる全身投与の抗菌薬療法を用いる;術中培養を行った後に経験的な治療を開始し,通常はメチシリン耐性を有するグラム陽性菌(例,バンコマイシン1gを12時間毎に静注)および好気性グラム陰性菌(例,ピペラシリン/タゾバクタム3.375gを6時間毎に静注またはセフタジジム2gを8時間毎に静注)をカバーする薬剤を組み合わせ,培養および感受性試験の結果に基づいて見直す。

一期的に直ちに交換したか,二次的に期間を置いてから再置換したかにかかわらず,交換した人工関節の38%で感染が発生する。

患者が手術に耐えられない場合は,長期にわたる抗菌薬療法のみを試せる。固定術を伴うまたは伴わない切除関節形成術は,通常はコントロール不良の感染症の患者およびbone stockが不十分な患者に限って行う。

予防

他の適応(例,心臓弁膜症)がない状況で,人工関節を有する患者に対して歯科処置や泌尿器の器具操作などの手技に先立って予防的な抗菌薬投与が必要かどうかは,現在も未解決の問題である。歯科処置を受ける患者における整形外科インプラントの感染予防については,American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)およびAmerican Dental Association(ADA)のガイドラインを参照のこと。

多くの施設では,鼻腔培養で黄色ブドウ球菌(S. aureus)の定着をスクリーニングしている。保菌者については,人工関節を埋め込む手術に先立ってムピロシン軟膏で定着を解消する。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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