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特発性間質性肺炎の概要

執筆者:

Joyce Lee

, MD, MAS, University of Colorado School of Medicine

レビュー/改訂 2019年 9月
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特発性間質性肺炎(IIP)は,類似した臨床的および画像的所見を共有する原因不明の 肺間質の疾患群 間質性肺疾患の概要 間質性肺疾患は,肺胞中隔の肥厚,線維芽細胞の増殖,コラーゲン沈着,および(疾患が進行した場合は)肺線維化を特徴とする,多様な疾患の集合である。間質性肺疾患は様々な基準によって分類しうる(例,急性か慢性か,肉芽腫性か非肉芽腫性か,原因がわかっているか不明か,肺原発性か全身性疾患に続発するものか,喫煙歴があるかないか)。... さらに読む であり,主に肺生検における病理組織パターンにより区別される。組織学的に8つのサブタイプに分類され,その全てが程度の異なる炎症および線維化を特徴とし,いずれも呼吸困難を引き起こす。診断は,病歴,身体診察,高分解能CT,肺機能検査,および肺生検に基づく。治療はサブタイプによって異なる。予後はサブタイプにより異なり,極めて良好なこともあるが,不良な場合はほぼ常に致死的である。

IIPの8つの組織学的亜型を頻度の高い順に示す:

総論の参考文献

  • 1.Travis WD, Costabel U, Hansell DM, et al: An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Statement: Update of the International Multidisciplinary Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias.Am J Respir Crit Care Med 188 (6):733–748, 2013.

特発性間質性肺炎の症状と徴候

特発性間質性肺炎の症状および徴候は通常,非特異的である。咳嗽および労作時呼吸困難は典型的であるが,発症および進行様式は様々である。一般的な徴候には頻呼吸,胸郭の拡張制限,両側肺底部における吸気終末の捻髪音,ばち指などがある。

特発性間質性肺炎の診断

  • 高分解能CT(HRCT)

  • 肺機能検査

  • ときに外科的肺生検

特発性間質性肺炎は,説明のつかない間質性肺疾患のある全ての患者で疑われるべきである。臨床医,放射線科医,および病理医は,個々の患者の診断を決定するため情報を交換し合うべきである。可能性のある原因(間質性肺疾患の原因 間質性肺疾患の原因 間質性肺疾患の原因 の表を参照)は系統立てて評価する。診断率を最大限に高めるため,以下の基準に従って病歴を聴取すべきである:

  • 症状の持続期間

  • 肺疾患,特に肺線維症の家族歴

  • 喫煙歴(ほとんどが現喫煙者または喫煙歴がある場合に起こる疾患もあるため)

  • 現在および過去の薬歴

  • 家族構成員を含む,家庭および職場環境の詳細な情報

業務の内容,有機物および無機物への曝露などを含め,職歴を経時的に全て列挙したリストを入手する(間質性肺疾患の原因 間質性肺疾患の原因 間質性肺疾患の原因 の表を参照)。曝露の程度,曝露の期間,曝露から発症までの潜伏期間,および保護具の使用の有無を明らかにする。

胸部X線を行うと,典型的には異常がみられるが,所見には多様な型を鑑別できるほどの特異性はない。

生理学的障害の重症度を評価するため,しばしば肺機能検査が行われるが,多様な型の鑑別には役立たない。典型的な結果は拘束性パターンであり,肺気量および拡散能の低下を伴う。低酸素血症が運動時によくみられ,安静時にも存在しうる。

HRCTは,気腔を間質性疾患から区別でき,最も有用かつ常に行われる検査である。この検査により,可能性のある病因,程度,および分布を評価することができ,これにより基礎疾患または併存疾患(例,潜在性の縦隔リンパ節腫脹,がん,気腫)を発見できる可能性が高まる。HRCTは仰臥位および腹臥位で行うべきであり,また末梢気道(small airway)の病変を際立たせるため,呼気下のダイナミック画像も撮影すべきである。

結合組織疾患,血管炎,または環境性曝露を示唆する臨床的特徴がみられる患者に対して,臨床検査を行う。対象となる検査には,抗核抗体,リウマトイド因子,および結合組織疾患に対するその他のより特異度の高い血清学的検査(例,リボ核タンパク質[RNP],抗Ro[SSA],抗La[SSB],強皮症抗体[Scl70],抗Jo-1抗体)などがある。

気管支鏡下の経気管支生検は, サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常はまず肺病変を理由に本疾患... さらに読む サルコイドーシス および過敏性肺炎などの特定の間質性肺疾患の鑑別に役立つが,この生検法ではIIPの診断に十分な組織を得られない。気管支肺胞洗浄は一部の患者における鑑別診断の絞り込みに有用であり,またこれにより疾患の進行および治療への反応に関する情報が得られる。しかしながら,多くの間質性肺疾患患者の初期臨床的評価およびフォローアップに関して,この手技が有用であるというエビデンスは確立されていない。

クライオバイオプシーは,切除直前に肺組織を急速に凍結する技術であり,特定の間質性肺疾患の診断補助ツールとして研究されている。採取できる組織の量は経気管支生検よりも多いが外科的肺生検よりは少ない。この手技のリスクには,出血や気胸などがある。クライオバイオプシーは現在も研究中であり,国際的なガイドラインでは推奨されていない;診断における役割はまだ確立されていない。

病歴およびHRCTから診断がつかない場合,診断確定のため外科的肺生検が必要である。胸腔鏡下手術(VATS)により複数部位の検体を得るのが望ましい。

特発性間質性肺炎の治療

  • 疾患によって異なる

  • しばしばコルチコステロイド

  • ときに肺移植

コルチコステロイドは通常, 特発性器質化肺炎 特発性器質化肺炎 特発性器質化肺炎は,隣接する肺胞に生じた慢性炎症により,肉芽組織が肺胞管および肺胞腔を閉塞する特発性の疾患である。 特発性器質化肺炎(COP)は, 特発性間質性肺炎の1つの型であり,通常40代または50代に発症し,男女差はない。喫煙は危険因子ではないと考えられる。 約半数の患者は,疾患発症時に 市中肺炎に似た病態(すなわち,咳嗽,発熱,倦怠感,疲労および体重減少を特徴とするインフルエンザ様の病態が消退しないこと)を経験したことを記憶して... さらに読む 特発性器質化肺炎 リンパ球性間質性肺炎 リンパ球性間質性肺炎 リンパ球性間質性肺炎(LIP)は,肺胞の間質および気腔にリンパ球が浸潤する病態である。原因は不明である。症状および徴候は,咳嗽,進行性の呼吸困難,および断続性ラ音である。診断は病歴,身体診察,画像検査,および肺生検に基づく。治療はコルチコステロイド,細胞傷害性薬剤,またはその両方によるが,その効力は不明である。5年生存率は50~66%である。 リンパ球性間質性肺炎は, 特発性間質性肺炎のまれな型で,小リンパ球および形質細胞(形質細胞の数... さらに読む ,および 非特異性間質性肺炎 非特異性間質性肺炎 非特異性間質性肺炎は,主に女性,非喫煙者,および < 50歳の患者に生じる特発性間質性肺炎である。患者には咳嗽および呼吸困難がみられ,それが数カ月から数年間持続することがある。診断は,高分解能CTおよび肺生検による。治療にはコルチコステロイドのほか,ときに他の免疫抑制療法を使用する。 非特異性間質性肺炎(NSIP)は 特発性間質性肺炎の一種である。これは 特発性肺線維症(IPF)に比べてはるかにまれである。患者の多くは女性であり,... さらに読む 非特異性間質性肺炎 に推奨されるが, 特発性肺線維症 特発性肺線維症 特発性肺線維症(IPF)は,特発性間質性肺炎の最も頻度の高い型であり,進行性の肺線維症を引き起こす。症状および徴候は数カ月から数年にわたって発現し,労作時呼吸困難,咳嗽,および捻髪音(ベルクロラ音)などがある。診断は病歴,身体診察,高分解能CTに基づき,必要があれば肺生検を行う。治療法としては抗線維化薬や酸素療法などがある。ほとんどの患者は悪化し,生存期間の中央値は診断から約3年である。... さらに読む 特発性肺線維症 には推奨されない。

特発性間質性肺炎の要点

  • 特発性間質性肺炎には,8つの組織学的亜型がある。

  • 症状,徴候,および胸部X線所見は非特異的である。

  • IIPの初期診断は主に病歴および高分解能CT(HRCT)に基づいて行う。

  • 臨床的評価およびHRCTで診断がつかない場合は,外科的肺生検を行う。

  • 治療はサブタイプによって異なる。

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