(好酸球性肺疾患の概要 好酸球性肺疾患の概要 好酸球性肺疾患とは,肺胞腔,間質,またはその両方における好酸球の集積を特徴とする多様な疾患の集合である。 末梢血中の好酸球増多もよくみられる。好酸球性肺疾患の原因としては以下のものがある: 感染症(特に 蠕虫感染) 薬剤性肺炎(例,抗菌薬,フェニトイン,L-トリプトファンなどの治療薬によって引き起こされる) 毒素吸入(例,コカインなどのレクリエーショナルドラッグ) 全身性疾患(例,... さらに読む も参照のこと。)
慢性好酸球性肺炎は実際は慢性というわけではない;むしろ,再発性の急性または亜急性疾患である(そのため,再発性好酸球性肺炎という名称の方がふさわしい)。慢性好酸球性肺炎の有病率および発生率は不明である。病因として アレルギー体質 アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要 アレルギー性(アトピー性を含む)およびその他の過敏性疾患は,外来抗原に対する不適切または過剰な免疫応答である。不適切な免疫応答には,内在性の身体成分に対する誤った反応も含まれ,これが 自己免疫疾患を招く。 過敏反応は,ゲル-クームス分類によって4種類の型に分けられる。過敏性疾患には複数の型が含まれることが多い。... さらに読む が疑われている。ほとんどの患者は非喫煙者である。
慢性好酸球性肺炎の症状と徴候
慢性好酸球性肺炎患者はしばしば,咳嗽,発熱,進行性の息切れ,喘鳴,および盗汗を特徴とする劇症病態を呈する。臨床像から 市中肺炎 市中肺炎 市中肺炎(Community-acquired pneumonia)は,病院の外で獲得した肺炎と定義されている。同定される頻度が最も高い病原体は,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae),インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),非定型細菌(すなわち,肺炎クラミジア[Chlamydia pneumoniae],肺炎マイコプラズマ[Mycoplas... さらに読む が示唆されることがある。>50%の症例で, 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む が疾患に随伴,または先行する。症状が再発する患者では,体重減少がみられることがある。
慢性好酸球性肺炎の診断
胸部X線および高分解能CT(HRCT)
肺炎の感染性の原因の除外
気管支肺胞洗浄
特徴的症状および典型的な画像所見のある患者で慢性好酸球性肺炎を疑う。
診断にはまた,血算,赤血球沈降速度(赤沈),ときに鉄検査,および適切な培養による感染性の原因の除外が必要である。末梢血好酸球増多,赤沈の顕著な亢進,鉄欠乏性貧血,および血小板増多は,全て頻繁に認められる。
中肺野および上肺野において最も多くみられる胸部X線所見である,両側性末梢性陰影または胸膜下陰影は,肺水腫のネガ像(photographic negative of pulmonary edema)と呼ばれ(みられるのは全患者の25%未満であるが),本疾患の特徴を実質的に反映している。同様のパターンがHRCTで認められることがあるが,コンソリデーション(浸潤影)の分布は多様で片側性病変のことさえある。
通常は診断を確定するために気管支肺胞洗浄が行われる。気管支肺胞洗浄液で好酸球が40%を超える場合は,慢性好酸球性肺炎を強く示唆する;気管支肺胞洗浄を繰り返し行うことが疾患経過の記録に役立つこともある。
慢性好酸球性肺炎の治療
コルチコステロイドの全身投与
ときに吸入コルチコステロイド,経口コルチコステロイド,またはその両方による維持療法
慢性好酸球性肺炎の患者は,一様にコルチコステロイドの静注または経口投与に反応する;反応しなければ別の診断が示唆される。初期治療はプレドニゾン40~60mg,1日1回である。臨床的改善はしばしば著明かつ急速であり,しばしば48時間以内に起こる。症状およびX線異常所見は,14日以内にほとんどの患者で,1カ月までにはほぼ全ての患者で完全に消失する。
症状および胸部単純X線は,ともに信頼性があり,治療の有効な指標である。HRCTは画像所見の異常の検出に対しより高い感度を有するが,繰り返し実施することに利点はない。
末梢好酸球数,赤沈値,およびIgE値もまた,治療中の臨床経過のフォローアップに使用できる。しかしながら,必ずしも全ての患者で臨床検査の結果が異常であるとは限らない。
多くの患者で治療中止後,または頻度はより低いがコルチコステロイドの漸減中に,症状または画像所見上で再発がみられる。初回エピソードの後,数カ月から数年後に再発が起こりうる。そのため,コルチコステロイド療法が長期間(数年間)必要になる可能性がある。吸入コルチコステロイド(例,フルチカゾンまたはベクロメタゾン500~750μg,1日2回)が効果的なこともあり,特に経口コルチコステロイドの維持量を減量する場合に有用である。
再発は治療の失敗,予後不良,またはより高い合併症発生率を示唆するわけではないと考えられる。患者は初回エピソード時と同様,依然としてコルチコステロイドに反応する。回復した患者の中には気流閉塞(airflow obstruction)が定着する場合もあるが,その異常に臨床的意義かあるかどうかは通常決めかねる。
慢性好酸球性肺炎は,不可逆的な線維化の結果,ときに生理学的に重要な拘束性肺機能異常へと進行することがあるが,異常は通常軽度であるため,この疾患が他の疾患または死亡の原因となることは極めてまれである。