カルチノイド腫瘍 カルチノイド腫瘍の概要 カルチノイド腫瘍は,消化管(90%),膵臓, 気管支のほか,まれに泌尿生殖器においても神経内分泌細胞から発生する。消化管カルチノイド全体の95%以上が虫垂,回腸,直腸という3カ所から発生する。 カルチノイドはしばしば良性であるか,浸潤性であっても限局的であるが,回腸および気管支を侵すものは悪性であることが多い。悪性腫瘍は高分化型から低分化... さらに読む は,消化管(90%),膵臓,気管支のほか,まれに泌尿生殖器においても神経内分泌細胞から発生する。カルチノイドは良性であるか局所浸潤のみである場合が多いが,気管支を侵すものは悪性であることが多い。一般的に,カルチノイド腫瘍の一部では内分泌活性を示し,その可能性は原発部位によって異なるが,回腸および近位結腸で発生した腫瘍で最も高く(40~50%),気管支カルチノイドではより低い。
気管支カルチノイド患者の半数は無症状であるが,残り半数は呼吸困難,喘鳴,咳嗽などの気道閉塞症状を呈し,しばしば喘息と誤診される。反復性肺炎,喀血,および胸痛もよくみられる。
腫瘍随伴症候群としては,異所性ACTHによるクッシング症候群,異所性成長ホルモン放出因子による先端巨大症,異所性ガストリン分泌によるゾリンジャー-エリソン症候群などがあり,カルチノイド患者の3%未満で発生する カルチノイド症候群 カルチノイド症候群 カルチノイド症候群は, カルチノイド腫瘍患者の一部に発生する病態で,皮膚紅潮,腹部痙攣,および下痢を特徴とする。右側の心臓弁膜症が数年後に生じることがある。本症候群は,腫瘍によって分泌される血管作動性物質(セロトニン,ブラジキニン,ヒスタミン,プロスタグランジン,ポリペプチドホルモンなど)に起因し,その腫瘍は典型的には転移性の消化管カルチノイドである。診断は臨床的に,また尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の高値を示すことによる。腫瘍の局在... さらに読む よりも頻度が高い。
カルチノイド症候群の症状として以下のものがある:
紅潮
下痢
気管支攣縮
カルチノイド症候群の慢性の続発症には以下のものがある:
毛細血管拡張症
右心系の弁膜症
後腹膜線維症
気管支カルチノイドでは,セロトニンによる弁損傷に起因して,まれに左心系の心雑音(僧帽弁狭窄または僧帽弁逆流)が生じる(消化管カルチノイドでみられる右心系の弁膜病変とは対照的である)。
気管支カルチノイドの診断
気管支鏡下生検
気管支カルチノイドの診断は気管支鏡下生検に基づいて行うが,評価にはしばしば最初に胸部CTを用い,これにより最大3分の1の患者において腫瘍の石灰化像が明らかになる。
インジウム111標識オクトレオチドによるシンチグラフィーは,局所浸潤および転移の判定に有用である。
尿中のセロトニンおよび5-ヒドロキシインドール酢酸が高値であれば,診断の裏付けになるが,これらの値が上昇する頻度は高くない。
気管支カルチノイドの治療
手術
気管支カルチノイドの治療は外科切除 ± アジュバント化学療法および/または放射線療法である。
予後は腫瘍の種類によって異なる。5年生存率は,高分化型のカルチノイドでは > 90%であり,非定型の腫瘍では50~70%である。