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非アテローム性動脈硬化症

執筆者:

George Thanassoulis

, MD, MSc, McGill University;


Mehdi Afshar

, MD, University of Toronto

レビュー/改訂 2019年 7月
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非アテローム性動脈硬化症(nonatheromatous arteriosclerosis)は,大動脈およびその主要分枝に加齢に伴い線維化が生じるものである。

動脈硬化症(arteriosclerosis)とは,動脈壁の肥厚および弾性喪失を引き起こす複数の疾患の総称である。

そのうち最も頻度の高い形態である アテローム性動脈硬化(atherosclerosis) アテローム性動脈硬化 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む アテローム性動脈硬化 は, 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 脳血管疾患 脳卒中の概要 脳卒中とは,神経脱落症状を引き起こす突然の局所的な脳血流遮断が生じる多様な疾患群である。脳卒中には以下の種類がある: 虚血性(80%):典型的には血栓または塞栓によって生じる 出血性(20%):血管の破裂によって生じる(例, くも膜下出血, 脳内出血) 明らかな急性脳梗塞の所見(MRIの拡散強調画像に基づく)を伴わない一過性(典型的には1... さらに読む 脳卒中の概要 を引き起こすことから,最も重篤で臨床にも重要な病態である。アテローム性疾患の特徴であるアテローム性プラークは,脂質,炎症細胞,および平滑筋細胞のほか,器質化の様々な段階にある血栓やカルシウム沈着物を含有することのある結合組織基質で構成される血管病変である。

非アテローム性の動脈硬化症としては以下のものがある:

  • 細動脈硬化

  • メンケベルグ型動脈硬化症

非アテローム性動脈硬化症は,内膜肥厚を引き起こし,弾性板を脆弱化させて破綻させる。平滑筋(中膜)層が萎縮し,罹患動脈の内腔は拡大する(拡張性を示す)ことで, 動脈瘤 大動脈瘤の概要 動脈瘤とは,動脈壁の脆弱化により動脈が異常に拡張した状態である。一般的な原因としては,高血圧,動脈硬化,感染,外傷,遺伝性または後天性の結合組織疾患(例,マルファン症候群,エーラス-ダンロス症候群)などがある。動脈瘤は通常無症状であるが,疼痛を引き起こしたり,虚血,血栓塞栓症,自然解離,破裂を来して致死的となることもある。診断は画像検査(... さらに読む 大動脈瘤の概要 解離 大動脈解離 大動脈解離は,大動脈内膜の裂口を介して壁内に血液が急激に流入することで,内膜と中膜が分離して偽腔(チャネル)が生じる病態である。内膜裂口は原発性に生じることもあれば,中膜内の出血に続発することもある。大動脈解離は大動脈のあらゆる部位から始まる可能性があり,さらに中枢または末梢に進展して他の動脈に及ぶこともある。高血圧が重要な寄与因子の1つである。症状と徴候には,胸部または背部に突然生じる引き裂かれるような痛みがあるほか,解離により大動脈... さらに読む 大動脈解離 の素因となる。大動脈の動脈硬化および動脈瘤の発生では,高血圧が主要な因子である。内膜の損傷,拡張,潰瘍形成から血栓形成,塞栓症,または完全閉塞につながることがある。

非アテローム性動脈硬化症は通常,合併症(例,動脈瘤)が発生するまで無症状である。無関係な理由で行われた画像検査で偶発的に検出されることがある。

細動脈硬化

硝子様細動脈硬化は糖尿病患者の小径動脈と細動脈を侵す;典型的には,硝子様肥厚が生じ,細動脈壁が変性し,内腔が狭小化する結果,びまん性の虚血(特に腎臓)が生じる。

増殖性細動脈硬化(hyperplastic arteriolosclerosis)は,高血圧患者により多く発生し,典型的には層構造を示す求心性肥厚と血管内腔の狭小化を生じ,ときにフィブリノイドの沈着と血管壁の壊死(壊死性細動脈炎)を伴う。 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 はこれらの変化を促進する一方,細動脈硬化は細動脈の剛性を増大させ,末梢血管抵抗を高めることにより,高血圧の維持を助長することがある。

メンケベルグ型動脈硬化症

メンケベルグ型動脈硬化症(中膜石灰化硬化症)は,50歳以上の患者に発生する;加齢に伴う中膜変性が巣状の石灰化とともに生じ,さらに動脈壁内の骨形成を伴うこともある。動脈の一部が,内腔の狭小化を伴うことなく,石灰化した硬い管になることがある。診断は通常,単純X線撮影で明らかである。この疾患は,動脈の圧縮率を大幅に低下させるため,血圧の極端な偽高値がみられるという点でのみ,臨床的に重要である。

非アテローム性動脈硬化症の要点

  • 非アテローム性動脈硬化症は,明らかなアテローム性プラークがない状況で動脈壁の肥厚および弾性低下を引き起こす。

  • 非アテローム性動脈硬化症には,細動脈硬化とメンケベルグ型動脈硬化症という2つの亜型がある。

  • 糖尿病,高血圧,および年齢が非アテローム性動脈硬化症の発生につながる危険因子である。

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