心臓再同期療法(CRT)

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute of Alberta, University of Calgary
レビュー/改訂 2021年 1月
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    不整脈治療のニーズは,不整脈の症状および重篤度に依存する。治療は原因に対して行う。必要に応じて,抗不整脈薬カルディオバージョン/電気的除細動植込み型除細動器(ICD),ペースメーカー(および特殊なペーシング,心臓再同期療法),カテーテルアブレーション手術,またはこれらの併用などによる直接的な抗不整脈療法が用いられる。

    一部の患者では,心腔が収縮を繰り返す間の整然とした正常な順序関係が崩壊している(同期不全を呈している)。同期不全には以下の種類がある:

    • 房室:心房収縮と心室収縮の間

    • 心室間:左室収縮と右室収縮の間

    • 左室内:左室収縮の異なる区域の間

    同期不全のリスクがある患者の条件としては,以下のものが挙げられる:

    • 虚血性または非虚血性拡張型心筋症

    • QRS幅の延長(≥ 130msec,特に典型的な左脚ブロックの波形でみられる場合)

    • 左室拡張末期径55mm以上

    • 洞調律で左室駆出率35%以下

    心臓の同期不全は,心電図パラメータ(例,左脚ブロック)と高度な心エコー法(例,組織ドプラ法,ストレインレート)での所見から疑うことができる。

    心臓再同期療法(CRT)では,ペーシングシステムを使用して心収縮を再同期させる。このようなシステムは通常,右房リード,右室リード,左室リードが含まれる。リードは経静脈的処置または開胸下の外科的処置により留置することができる。

    New York Heart Association分類のクラスII,III,IVの症状がみられる心不全患者(NYHA分類の表を参照)では,CRTにより心不全による入院率と全死亡率を低下させることが可能である。しかしながら,永続性心房細動,右脚ブロック,非特異的心室内伝導遅延,またQRS時間の軽度延長のみ(150msec未満)の患者では,ほとんどまたは全く有益とならない。

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