閉塞性尿路疾患

(尿路閉塞)

執筆者:Glenn M. Preminger, MD, Duke Comprehensive Kidney Stone Center
レビュー/改訂 2020年 11月
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閉塞性尿路疾患は,構造的または機能的異常により正常な尿流が妨げられる病態であり,ときに腎機能障害(閉塞性腎症)につながることもある。症状としては,慢性閉塞では出現する可能性がより低いが,T11からT12までの皮膚分節に放散する疼痛や排尿異常(例,排尿困難,無尿,夜間頻尿,多尿)などが出現することがある。診断は閉塞のレベルに応じて,膀胱カテーテル挿入,膀胱尿道鏡検査,および画像検査(例,超音波検査,CT,腎盂造影)の結果に基づく。治療は原因によって異なり,迅速なドレナージ,器具操作,手術(例,内視鏡法,砕石術),ホルモン療法,またはこれらの併用が必要となる。

閉塞性尿路疾患の有病率は,その原因に応じて10,000人当たり5例から1000人当たり5例までの幅がある。この病態は二峰性の分布を示す。小児では,尿路の先天異常が主な原因となる。発生率はその後下降した後,60歳以降で再び上昇し,特に男性では前立腺肥大症前立腺癌が増加することで上昇する。全体として,末期腎臓病の約4%が閉塞性尿路疾患によるものである。剖検では2~4%の患者で水腎症が認められる。

病因

閉塞性尿路疾患は,多くの病態によって引き起こされる可能性があり,急性または慢性,部分的または完全,一側性または両側性の場合がある(閉塞性尿路疾患の原因の表を参照)。

最も頻度の高い原因は年齢によって異なる:

  • 小児:解剖学的異常(後部尿道弁または狭窄および尿管膀胱移行部または腎盂尿管移行部の狭窄を含む)

  • 若年成人:結石

  • 比較的高齢の成人:前立腺肥大症または前立腺癌,後腹膜または骨盤腫瘍(転移性の悪性腫瘍を含む),結石

閉塞は尿細管(円柱,結晶)から外尿道口のいずれのレベルでも起こりうる。閉塞の近位側に生じる影響としては,腔内圧上昇,尿停滞,尿路感染症(UTI),結石形成(これにより閉塞の増悪または発生につながる場合がある)などがある。閉塞は男性の方がはるかに頻度が高いが(通常は前立腺肥大症に起因する),後天性および先天性尿道狭窄ならびに外尿道口狭窄は男女いずれにも起こる。女性では,尿道閉塞は原発性もしくは転移性腫瘍に続発するか,放射線療法,手術,泌尿器の器具操作(通常,拡張の反復)後の狭窄形成の結果として起こることがある。

表&コラム

病態生理

病理所見は集合管および遠位尿細管の拡張と慢性尿細管萎縮から成り,糸球体損傷はほとんどみられない。拡張の発生には閉塞性尿路疾患の発生から3日間を要し,それまでは集合管は比較的伸展性を示さず,拡張する可能性は低い。拡張を伴わない閉塞性尿路疾患は,線維化または後腹膜腫瘍が集合管系を取り囲んでいる場合,閉塞性尿路疾患が軽症で腎機能が障害されていない場合,および腎内腎盂が存在する場合にも発生しうる。

閉塞性腎症

閉塞性腎症は尿路閉塞によってもたらされる腎機能障害(腎機能不全,腎不全,または尿細管間質性障害)である。発生機序には,管腔内圧の上昇,局所の虚血,しばしば尿路感染症(UTI)を始めとする多くの因子が関与する。閉塞が両側性の場合は,腎症から腎機能不全を来すことがある。閉塞が片側性の場合は,自律神経を介した血管攣縮または尿道攣縮が機能腎に影響を及ぼすことで,まれに腎機能不全を来すことがある。

閉塞後に同側腎(または両腎)に不可逆的な損傷が発生する時期および頻度については,あまりに多くの因子に依存するため,予測は困難である。不可逆的な損傷を予防するため,尿路閉塞は可能な限り迅速に診断および治療すべきである。

症状と徴候

症状と徴候は,閉塞性尿路疾患の発生部位,程度,および急性度によって異なる。

閉塞により膀胱,集合管(尿管,腎盂,および腎杯),または腎被膜が急速に拡張すると,疼痛がよくみられる。上部尿管または腎盂の病変は側腹部痛または圧痛を起こすが,下部尿管閉塞に起因する疼痛は同側の精巣または陰唇に放散することがある。腎および尿管の疼痛は,通常はT11からT12に沿って分布する。急性の完全尿管閉塞(例,尿管結石による閉塞)は,悪心と嘔吐を伴う重度の疼痛を引き起こすことがある。大量の水分負荷(例,アルコール飲料またはカフェイン飲料の摂取または静注造影剤による浸透圧利尿)により,尿産生量が閉塞領域を通過する流量を上回るレベルにまで増加した場合には,拡張および疼痛がもたらされる。

疼痛は,部分的または緩徐に発生する閉塞性尿路疾患(例,先天性腎盂尿管移行部閉塞,腎盂腫瘍)では,典型的には微細であるか,存在しない。水腎症では,ときに側腹部に触知可能な腫瘤が生じることがあり,特に乳児および小児の大きな水腎症でよくみられる。

一側性の閉塞は,唯一機能している腎(単腎)で発生する場合を除き,尿量に減少をもたらさない。完全な無尿は,膀胱または尿道レベルで完全な閉塞が生じることで発生する。このレベルでの部分的な閉塞では,排尿困難または尿勢異常が生じることがある。部分閉塞では,尿量は正常であることが多く,まれに増加することもある。多尿および夜間頻尿を伴う尿量の増加は,続発する腎症により腎濃縮能およびナトリウム再吸収が低下した場合に起こる。長期間持続する腎症は,高血圧につながる場合もある。

閉塞に合併する感染は,排尿困難,膿尿,尿意切迫,頻尿,腎臓および尿管の関連痛,肋骨脊柱角の圧痛,発熱のほか,ときに敗血症を引き起こすことがある。

診断

  • 尿検査,血清電解質,血中尿素窒素(BUN),およびクレアチニン

  • 膀胱カテーテル挿入またはベッドサイドでの超音波検査による排尿後膀胱容積の推定,ときにその後に尿道閉塞の疑いに対する膀胱尿道鏡検査および排尿時膀胱尿道造影

  • 尿道もしくはより近位の閉塞の疑い,または明らかな閉塞を伴わない水腎症に対する画像検査

以下のいずれかがみられる患者では閉塞性尿路疾患を考慮すべきである:

  • 尿量の減少または排尿の消失

  • 原因不明の腎機能不全

  • 尿路の拡張を示唆する疼痛

  • 乏尿または無尿と多尿が交互にみられるパターン

病歴から前立腺肥大症の症状,過去の悪性腫瘍(例,前立腺腎臓尿管膀胱婦人科大腸),または尿路結石症が示唆される場合がある。通常は閉塞を早期に軽快させることで最良の転帰が得られることから,診断は可及的速やかに行うべきである。

尿検査および血清生化学検査(血清電解質,BUN,クレアチニン)を行うべきである。その他の検査は症状と閉塞が疑われるレベルに応じて行う。尿路閉塞を伴う感染には,即時の評価および治療が必要である。

長期にわたり無症候性の閉塞性尿路疾患を呈している患者では,尿検査所見は正常であるか,少数の円柱,白血球,または赤血球を認めるのみの場合がある。急性腎不全を呈し,尿検査の結果が正常の患者では,両側性の閉塞性腎症を考慮すべきである。

血清生化学検査で腎機能不全が示唆される場合は,閉塞はおそらく両側性で,高度または完全閉塞である。腎症を伴う両側性閉塞のその他の所見としては,高カリウム血症がみられることがある。高カリウム血症は,ネフロンの遠位尿細管での水素イオンおよびカリウム分泌の低下に起因する1型尿細管性アシドーシスによっても引き起こされる可能性がある。

尿道閉塞が疑われる場合の評価

尿量が減少するか,膀胱拡張または恥骨上部痛が認められる場合は,膀胱カテーテル挿入を行うべきである。カテーテル法により尿流が正常化するか,またはカテーテルの挿入が困難である場合は尿道閉塞(例,前立腺腫大,尿道弁,尿道狭窄)が疑われる。触知可能な膀胱拡張および排尿能の消失が認められない場合,閉塞は排尿後の残尿量をベッドサイドでの超音波検査で測定して確定することが可能であり,残尿量50mL超(高齢者ではこれよりわずかに高い)は閉塞を示唆する。これらの所見を呈する患者には膀胱尿道鏡検査を施行すべきであり,小児に対しては通常は排尿時膀胱尿道造影を施行すべきである(泌尿生殖器画像検査を参照)。

排尿時膀胱尿道造影(VCUG)では,膀胱尿管逆流とほぼ全ての膀胱頸部および尿道閉塞を描出でき,解剖学的構造と排尿後に膀胱内に残存する尿量(排尿後の残尿量)を十分に評価することができる。小児の解剖学的または先天的異常を診断する目的で最もよく施行される。一方,成人で尿道狭窄が疑われた場合にも施行されることがある。

尿道閉塞の症状が認められないか,膀胱尿道鏡検査および排尿時膀胱尿道造影が閉塞を示さない場合は,閉塞部位は尿管または尿管より近位と推察される。

尿管およびより近位の閉塞の評価

画像検査を施行し,閉塞の存在および部位を検出する。検査の選択とその順序は臨床状況に依存する。

腹部超音波検査は造影剤のアレルギー性合併症および中毒性合併症の可能性を回避し,関連する腎実質萎縮を評価できるため,尿道の異常がない患者の大半で第1選択の画像検査である。超音波検査は水腎症の検出を目標とする。しかしながら,偽陽性率は最低基準(集合管系の可視化)のみが診断で考慮された場合には25%である。また,水腎症が認められないこと(および偽陰性の結果)は,閉塞が早期(最初の数日間)もしくは軽度の場合,または後腹膜線維化もしくは腫瘍が集合管を包み,尿管の拡張を防いでいる場合に起こる可能性がある。

CTは閉塞性腎症の診断感度が高く,超音波検査や排泄性尿路造影で閉塞を描出できない場合に用いられる。単純ヘリカルCTは,尿管結石に起因する閉塞に対する第1選択の検査法である。造影剤を用いたCT尿路撮影および用いないCT尿路撮影の施行は,血尿の評価に特に有用である。腎実質の菲薄化はより長期の閉塞を示唆する。

duplex法によるドプラ超音波検査では,患側腎の抵抗指数(腎血管抵抗の上昇を反映)を検出することによって,一側性の閉塞性尿路疾患を集合管系が拡張する前(通常は急性閉塞の発生後数日以内)に示すことが可能である。この診断法は肥満の患者および両側性閉塞においては内因性腎疾患との鑑別ができないため,有用性が低い。

排泄性尿路造影(尿路造影,静脈性腎盂造影[IVP],静脈性尿路造影[IVU])は,CTとMRI(造影または単純)にほぼ取って代わられている。しかしながら,CTで閉塞性尿路疾患のレベルを同定できない場合,および急性閉塞性尿路疾患の原因が結石,乳頭の脱落,または凝血塊と推定される場合は,IVUまたは逆行性腎盂造影の適応と考えられる。

高窒素血症を呈する患者では,造影剤の血管内投与が関与する検査より順行性または逆行性の腎盂造影が好ましい。逆行性検査は膀胱鏡下で施行されるのに対して,順行性検査は腎盂への経皮的なカテーテル挿入が必要である。間欠的閉塞の患者に対する検査は症状の出現時に行うべきであり,そうしないと閉塞を見逃すことがある。

核医学検査もまた,ある程度の腎機能がなければ施行できないが,造影剤を使用することなく閉塞を検出することが可能である。腎が機能していないと評価される場合,核医学検査で灌流を測定し,機能的腎実質を同定できる。この検査は閉塞領域を特異的には検出できないため,主に利尿レノグラムと併用され,明らかな閉塞を伴わない水腎症の評価に用いられる。

MRI(単純および造影)は,電離放射線の回避が重要である場合(例,幼児または妊婦)に選択することができる。しかしながら,精度では超音波検査やCTに劣る(特に結石の検出)。

明らかな閉塞を伴わない水腎症の評価

水腎症を呈するが,他の画像検査では明らかな閉塞が認められない患者では,背部痛または側腹部痛が閉塞に起因するかどうかを決定するため,検査が必要になることがある。検査は,水腎症が偶然発見された患者において,その他の点では認識されていない閉塞を検出するために施行されることもある。

利尿レノグラムでは,ループ利尿薬(例,フロセミド0.5mg/kg,静注)を投与してから腎シンチグラフィーを行う。患者は利尿薬に反応するために十分な腎機能を有していなければならない。閉塞が存在する場合,トレーサーが腎盂に現れた時点からの放射性核種(または造影剤)の洗い出し率は,半減期20分超に低下する(正常では15分未満)。まれな状況として,レノグラムが陰性または不確かであるが,患者に症状がみられる場合には,拡張した腎盂内まで経皮的にカテーテルを挿入した後,10mL/minの速度で腎盂に液体を灌流することによって灌流圧尿流検査を行う。

患者は腹臥位にする。閉塞性尿路疾患が存在する場合,尿流の著明な上昇にもかかわらず,腎シンチグラフィー中の放射性核種の洗い出し率は遅延し,集合管系のさらなる拡張が認められ,灌流中の腎盂圧は22mmHg超に上昇する。

レノグラムまたは灌流検査が患者の最初の訴えと類似した疼痛を起こす場合は,陽性として解釈される。灌流検査が陰性の場合,疼痛の原因はおそらく非腎性である。いずれの検査も偽陽性および偽陰性の結果がよくみられる。

予後

大半の閉塞は是正しうるが,治療の遅れは不可逆的な腎損傷につながる可能性がある。腎症が発生するまでに要する時間および腎症がどの程度可逆性であるかは,基礎病理,尿路感染症(UTI)の有無,閉塞の程度および期間によって異なる。一般に,尿管結石による急性腎不全は可逆的であり,腎機能の十分な回復を伴う。慢性進行性閉塞性尿路疾患では,腎機能障害は部分的または完全に不可逆的な場合がある。予後はUTIが未治療のままの場合は不良である。

治療

  • 閉塞の軽減

治療は手術,器具操作(例,内視鏡法,砕石術),または薬物療法(例,前立腺癌に対するホルモン療法)による閉塞の解除である。腎機能の損傷,尿路感染症(UTI)の持続,あるいは疼痛がコントロールできないか持続する場合は,水腎症の即時ドレナージが適応である。閉塞に感染症が伴う場合,即時のドレナージが適応である。下部閉塞性尿路疾患はカテーテルまたはより近位のドレナージが必要になる場合がある。一部の患者では,急性または長期のドレナージのために尿管カテーテルを留置することができる。

重症の閉塞性尿路疾患,UTI,結石に対しては,経皮的腎瘻造設手技を用いた一時的ドレナージが必要になる場合がある。

UTIおよび腎不全に対する集中治療が必須である。

明白な閉塞のない水腎症の症例では,患者が疼痛を訴え,利尿レノグラムが陽性の場合,手術を考慮すべきである。しかしながら,症状が認められず利尿レノグラムが陰性の患者または利尿レノグラムは陽性であるが腎機能が正常な患者に対しては治療の必要はない。

要点

  • 一般的にみられる原因は,小児では先天異常,若年成人では結石,高齢男性では前立腺肥大症などである。

  • 続発症として腎機能不全や感染などが生じうる。

  • 臓器の急性拡張が上部尿路(一般的に側腹部に感じられる)または膀胱(一般的に精巣,恥骨上領域,または陰唇に感じられる)で発生した場合には,疼痛がよく認められる。

  • 原因不明の腎機能不全,尿量の減少,閉塞を示唆する疼痛,または多尿と交互に生じる乏尿もしくは無尿がみられる場合は,閉塞性尿路疾患を疑う。

  • 下部尿路閉塞が疑われる場合は,膀胱カテーテルを挿入し,その後は膀胱尿道鏡検査を考慮するとともに,一部の症例では排尿時膀胱尿道造影を考慮する。

  • 上部尿路閉塞が疑われる場合は,画像検査(例,腹部超音波検査,CT,duplex法によるドプラ超音波検査,静脈性腎盂造影,MRI)を行う。

  • 速やかに閉塞を軽減する(特に尿路感染症を合併している場合)。

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