泌尿器科患者の評価

執筆者:Geetha Maddukuri, MD, Saint Louis University
レビュー/改訂 2020年 11月
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泌尿器科患者では,腎臓のほか,泌尿生殖器系の他の部位の異常を示唆する症状を呈することがある。(腎疾患患者の評価も参照のこと。)

泌尿器科患者の病歴

腎臓または尿管で生じる疼痛は,通常は側腹部または下背部に漠然と局在し,同側の腸骨窩,大腿上部,精巣,または陰唇へ放散することがある。典型的には,結石による疼痛は仙痛となり,立っていられなくなることもあり,また感染が原因の場合は,より持続的な痛みとなる。膀胱より遠位部の異常による急性尿閉では,苦悶するほどの恥骨上部痛が生じるが,慢性尿閉に起因する疼痛はより軽度で,無症状のこともある。排尿困難は,膀胱または尿道の刺激による症状である。前立腺痛は,会陰部,直腸部,または恥骨上部の漠然とした不快感または充満感として生じる。

男性における膀胱閉塞の症状としては,排尿遅延,腹圧排尿,尿勢または尿線の太さの低下,終末時滴下などがある。尿失禁には様々な病型がある。3~4歳以降の遺尿症は,女児の尿道狭窄,男児の後部尿道弁,心理的苦痛,または(新規発生の場合は)感染症の症状である場合がある。

気尿症(尿とともに気体が排出される)は膀胱腟瘻,膀胱腸瘻,または尿管腸瘻を示唆し,膀胱腸瘻と尿管腸瘻は憩室炎,クローン病,膿瘍,または結腸癌が原因である可能性がある。気尿症はまた,気腫性腎盂腎炎が原因である可能性もある。

泌尿器科患者の身体診察

身体診察では,肋骨脊柱角,腹部,直腸,鼠径部,および性器に焦点を置く。泌尿器症状のある女性には通常は内診を行う。

肋骨脊柱角

背部,側腹部,および肋骨脊柱角(第12肋骨と腰椎が交差する部分)を拳で軽く叩打することで生じる痛み(肋骨脊柱角の叩打痛)は,腎盂腎炎結石,または尿路閉塞を示唆している可能性がある。

腹部

上腹部の目視可能な膨満は,水腎症,腎腫瘤,または腹部腫瘤の極めてまれな非特異的所見である。下腹部の打診による濁音は膀胱拡張を示唆する;正常な膀胱は,たとえ尿が充満した状態でも,恥骨結合より上方で打診することはできない。膀胱の触診により,膀胱拡張および尿閉を確認することができる。

直腸

直腸指診では,圧痛を伴うブヨブヨした前立腺として前立腺炎を検出できることがある。限局性の結節および境界不明瞭な硬化領域は前立腺癌と鑑別しなければならない。前立腺肥大症では,前立腺が対称性に腫大して軟化し,圧痛を伴わないことがある。

鼠径部および性器

鼠径部および性器の診察は,立位で行うべきである。鼠径ヘルニアまたはリンパ節腫脹が陰嚢痛または鼠径部痛の原因である場合がある。精巣の肉眼的な非対称性,腫脹,発赤,または変色は,感染,捻転,腫瘍,その他の腫瘤を示唆している可能性がある。精巣の長軸が水平方向に向いている(bell-clapper deformity)場合は,精巣捻転のリスク増大が示唆される。片側精巣の挙上(正常では左側が低い)は精巣捻転の徴候である可能性がある。陰茎の診察は,包皮を反転させた状態と反転させない状態で行う。陰茎の視診では以下の異常を検出できる:

触診では鼠径ヘルニアが明らかなることがある。精巣捻転の患者では精巣挙筋反射が消失することがある。精巣腫瘤(例,精液瘤,精巣上体炎陰嚢水腫,腫瘍)の鑑別では,精巣と腫瘤の位置関係ならびに圧痛の程度および部位が有用な情報となりうる。腫脹を認めた場合は,嚢胞性か充実性かを判定する上での参考にするため,透光性の有無を確認すべきである。陰茎体に触れる線維性硬結はペロニー病の徴候である。

泌尿器科患者の検査

泌尿器疾患の評価では尿検査が極めて重要となる。画像検査(例,超音波検査,CT,MRI)もしばしば必要となる。精液検査については,精子異常を参照のこと。

尿路の移行上皮癌に対する膀胱腫瘍抗原検査は,低悪性度のがんを検出する上で尿細胞診より感度が高いが,内視鏡検査に代わるほどの十分な感度はない。高悪性度のがんの検出には尿細胞診が最善の検査である。

前立腺特異抗原(PSA)は,前立腺上皮細胞により産生される機能不明の糖タンパク質である。前立腺癌のほか,頻度の高い一部の良性疾患(例,前立腺肥大症,感染症,外傷)で高値となることがある。PSAはがん治療後の再発を検出する目的で測定されるが,がんスクリーニングを目的とした広範な使用については議論がある。

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