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C型肝炎,慢性

執筆者:

Sonal Kumar

, MD, MPH, Weill Cornell Medical College

レビュー/改訂 2020年 12月
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C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。

肝炎の原因 肝炎の原因 肝炎とは,びまん性または斑状の壊死を特徴とする肝臓の炎症である。 肝炎には急性の場合と慢性(通常は6カ月以上続く場合と定義される)の場合がある。 急性ウイルス性肝炎は,ほとんどの症例で自然に消失するが, 慢性肝炎に進行する場合もある。 肝炎の一般的な原因としては以下のものがある:... さらに読む 慢性肝炎の概要 慢性肝炎の概要 慢性肝炎は肝炎が6カ月以上続く場合をいう。一般的な原因としては,B型およびC型肝炎ウイルス,非アルコール性脂肪肝炎(NASH),アルコール性肝疾患,自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎)などがある。多くの患者では急性肝炎の病歴がなく,最初の徴候は無症候性のアミノトランスフェラーゼ高値である。受診時から肝硬変やその合併症(例,門脈圧亢進症)がみられる場合もある。確定診断とグレードおよび病期の判定のために,ときに生検が必要となる。治療は合併症と... さらに読む ,および C型急性肝炎 C型肝炎,急性 C型肝炎は,しばしば血液感染するRNAウイルスによって引き起こされる。ときに食欲不振や倦怠感,黄疸などのウイルス性肝炎の典型症状を引き起こすが,無症状のこともある。まれに劇症肝炎や死に至る。約75%で慢性肝炎となり,肝硬変やまれに肝細胞癌に至ることもある。診断は血清学的検査による。治療は抗ウイルス薬による。利用可能なワクチンはない。 ( 肝炎の原因, 急性肝炎の概要,および C型慢性肝炎も参照のこと。)... さらに読む も参照のこと。)

一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間は恣意的である。

C型肝炎ウイルスには6つの主なゲノタイプがあり,治療に対する反応がそれぞれ異なる。ゲノタイプ1型は2型,3型,4型,5型,6型よりも頻度が高く,米国ではC型慢性肝炎の70~80%を占めている。

C型急性肝炎 C型肝炎,急性 C型肝炎は,しばしば血液感染するRNAウイルスによって引き起こされる。ときに食欲不振や倦怠感,黄疸などのウイルス性肝炎の典型症状を引き起こすが,無症状のこともある。まれに劇症肝炎や死に至る。約75%で慢性肝炎となり,肝硬変やまれに肝細胞癌に至ることもある。診断は血清学的検査による。治療は抗ウイルス薬による。利用可能なワクチンはない。 ( 肝炎の原因, 急性肝炎の概要,および C型慢性肝炎も参照のこと。)... さらに読む は約75%の患者で慢性化する。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は,米国におけるC型慢性肝炎の患者数を約240万人と推定している(1 総論の参考文献 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む )。全世界におけるC型慢性肝炎の患者数は,7100万人と推定されている(2 総論の参考文献 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む )。

C型慢性肝炎は,20~30%の患者では 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む に進行するが,肝硬変の出現までにはしばしば数十年を要する。HCVによる肝硬変の結果として 肝細胞癌 肝細胞癌 肝細胞癌は通常,肝硬変患者に発生し,B型およびC型肝炎ウイルス感染症の有病率が高い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はα-フェトプロテイン(AFP)値と画像検査のほか,ときに肝生検に基づく。高リスク患者には,定期的なAFPの測定および超音波検査によるスクリーニングがときに推奨される。がんが進行した場合または肝合成能が低下した場合の予後は不良であるが,肝臓に限局した小さな腫瘍であれば,アブレーション治療で症状を緩... さらに読む が生じうるが,肝硬変のない慢性感染による肝細胞癌の発生はまれである(慢性HBV感染症 B型肝炎,慢性 B型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。患者は無症候性または疲労および倦怠感のように非特異的症状を呈することがある。診断は血清学的検査による。無治療の場合,しばしば肝硬変を起こし,肝細胞癌のリスクが高まる。抗ウイルス薬を使用すれば,治癒は得られないものの,ウイルスをコントロールすることができる。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および B型急性肝炎も参照のこと。) 一般に慢性肝炎は6カ月以上続く肝炎と定義されるが,この期間は恣... さらに読む とは異なる)。

アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8... さらに読む アルコール性肝疾患 患者の最大20%がHCVを保有している。アルコール使用と薬物使用の併存例は症例全体のごく一部であることから,この高い関連性の理由は不明である。これらの患者では,HCVとアルコールが肝臓の炎症および線維化を相乗的に悪化させる。

総論の参考文献

  • 1.CDC: Hepatitis C questions and answers for health professionals.Accessed 11/29/20.

  • 2.World Health Organization: Hepatitis C.Accessed 11/29/20.

C型慢性肝炎の症状と徴候

多くの患者は無症状に経過し,黄疸も生じないが,一部では倦怠感,食欲不振,疲労と非特異的な上腹部の不快感がみられる。しばしば, 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症, 腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む の徴候(例,脾腫,くも状血管腫,手掌紅斑)または肝硬変の合併症(例, 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む 腹水 腹水 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹腔穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり( 特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析および培養が必要である。感染は抗菌薬で治療する。... さらに読む 脳症 門脈大循環性脳症 門脈大循環性脳症は,肝疾患患者に発生することがある精神神経症状の症候群である。ほとんどの場合,門脈大循環シャントが形成された患者において,腸管内タンパク質の増加または急性の代謝ストレス(例,消化管出血,感染,電解質異常)の結果として発生する。主に精神神経症状がみられる(例,錯乱,羽ばたき振戦,昏睡)。診断は臨床所見に基づく。治療法は通常,原因となっている急性の病態の是正,ラクツロースの経口投与,ならびにリファキシミンなど非吸収性抗菌薬の... さらに読む )が最初の所見となる。

C型慢性肝炎は,ときに扁平苔癬,皮膚粘膜血管炎, 糸球体腎炎 膜性増殖性糸球体腎炎 膜性増殖性糸球体腎炎は,腎炎とネフローゼが混合した特徴と顕微鏡的所見を共有する非均一的な疾患群である。ほとんどが小児で発生する。原因は免疫複合体の沈着で,特発性または全身性疾患への続発性である。診断は腎生検による。予後は一般的に不良である。治療は,適応の場合はコルチコステロイドおよび抗血小板薬による。 ( ネフローゼ症候群の概要も参照のこと。) 膜性増殖性糸球体腎炎は,光学顕微鏡検査での糸球体基底膜(GBM)の肥厚および増殖性変化を組織... さらに読む 膜性増殖性糸球体腎炎 晩発性皮膚ポルフィリン症 晩発性皮膚ポルフィリン症 晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)は比較的頻度の高い肝性ポルフィリン症であり,主に皮膚が侵される。肝疾患も一般的である。PCTは,ヘム生合成経路の酵素である肝臓のウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の活性の後天性または遺伝性の低下に起因する( ヘム生合成経路の基質および酵素の表を参照)。ポルフィリンが蓄積するのは,特に,肝細胞に酸化ストレスの亢進が存在する場合であり,この亢進は通常,肝臓の鉄増加に起因するが,アルコール,喫煙,エストロゲン,... さらに読む 晩発性皮膚ポルフィリン症 混合型クリオグロブリン血症 クリオグロブリン血症 典型的には免疫グロブリンの形で血中に含まれるタンパク質が異常に増加する病態であり,それにより血管が脆弱化し,紫斑が形成されやすくなる。 ( 血管性の出血性疾患の概要も参照のこと。) 紫斑とは,出血によって紫調に変色した皮膚または粘膜病変のことである。小さな病変(2mm未満)は点状出血と呼ばれ,大きな病変は斑状出血または皮下出血と呼ばれる。 アミロイドーシスでは,皮膚および皮下組織の血管内にアミロイドが沈着し,それにより血管が脆弱化して紫... さらに読む クリオグロブリン血症 ,そしておそらくは B細胞性の非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫は,リンパ節,骨髄,脾臓,肝臓,および消化管を含むリンパ細網部位においてリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が生じる不均一な疾患群である。通常は,初発症状として末梢のリンパ節腫脹がみられる。ただし,リンパ節腫脹は認められないが,循環血中に異常なリンパ球が認められる患者もいる。ホジキンリンパ腫と比べ,診断時に播種性である可能性が高い。通常は,リンパ節生検,骨髄生検,またはその両方に基づいて診断を下す。管理の戦略としては,経... さらに読む 非ホジキンリンパ腫 を合併する。クリオグロブリン血症の症状としては,疲労,筋肉痛,関節痛,神経障害,糸球体腎炎,発疹(蕁麻疹,紫斑,白血球破砕性血管炎)などであるが,クリオグロブリン血症は無症状である場合の方が多い。

C型慢性肝炎のスクリーニング

18歳以上の全ての個人に,危険因子に関係なく,単回のルーチンスクリーニングが推奨される。

  • 違法薬物を現在使用しているか,注射で使用したことがある(1回のみでも,遠い過去でも)

  • 違法薬物を鼻腔内投与で使用したことがある

  • 男性と性交する男性である

  • 長期の血液透析による治療を現在受けているか,これまでに受けたことがある

  • 管理されていない状況で皮膚または血液を介して曝露したことがある

  • アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の異常値または原因不明の慢性肝疾患がある

  • 医療または公衆安全の職業に従事しており,針刺しや,鋭利な物体によるその他の外傷,または粘膜接触を介してHCV陽性の血液に曝露した

  • HIVに感染しているか,HIVに対する曝露前予防(PrEP)を開始している

  • 収監されたことがある

  • HCV感染者の女性から生まれた

C型肝炎は肝臓を広範に障害するまでは,最初の感染から何年経過しても症状が現れない場合があることから,このような検査は重要である。

スクリーニングに関する参考文献

C型慢性肝炎の診断

  • 血清学的検査

  • HCV RNA

(American Association for the Study of Liver DiseaseおよびInfectious Diseases Society of Americaの診療ガイドライン,Hepatitis C Guidance 2019 Update: AASLD-IDSA (Infectious Diseases Society of America) recommendations for testing, managing, and treating hepatitis C virus infectionおよびU.S.Preventive Services Task Forceの診療ガイドライン,Hepatitis C virus infection in adolescents and adults: Screeningも参照のこと。)

  • 本疾患を示唆する症状および徴候

  • 偶然指摘されたアミノトランスフェラーゼ値の上昇

  • 過去に診断された急性肝炎

HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する(C型肝炎の血清学的検査 C型肝炎の血清学的検査 C型肝炎の血清学的検査 の表を参照)。

肝生検は以下の1つまたは複数に対して有用である:

  • 炎症作用の分類

  • 線維化のステージ診断

  • 肝疾患を引き起こす他の原因の除外

しかしながら,C型肝炎における肝生検の役割は変化してきており,生検は非侵襲的な画像検査(例,超音波エラストグラフィー,磁気共鳴エラストグラフィー)と線維化の血清マーカー検査や,血清学的マーカーに基づく線維化のスコア分類に取って代わられている。

治療の経過,期間,成否に影響する因子であるため,HCVのゲノタイプを治療前に判定しておく。

HCV RNAの検出と定量が,C型肝炎の診断の参考とし,治療中および治療後の反応を評価するために用いられている。現在利用可能なHCV RNAの定量分析の大半は検出下限が50IU/mL以上となっている。定量分析でこの水準の感度がない場合には,定性分析を用いることが可能である。定性分析では,しばしば10IU/mL未満という極めて少量のHCV RNAも検出でき,陽性か陰性かの結果が得られる。定性検査は,C型肝炎の診断またはウイルス学的著効(sustained virologic response:SVR)(治療完了後12週時点でHCV-RNAが検出不能になる場合と定義される)を確認する目的で利用できる。

その他の検査

以前に施行されていなければ,肝機能検査が必要であり,検査項目には血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アルカリホスファターゼ,およびビリルビンを含める。

肝機能を評価するために,血清アルブミン,ビリルビン,血小板数,プロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)などの他の検査を行うべきである。

C型慢性肝炎患者においてクリオグロブリン血症の症状または徴候がみられた場合は,クリオグロブリン値とリウマトイド因子を測定すべきであり,リウマトイド因子が高値で補体が低値であれば,クリオグロブリン血症が示唆される。

合併症のスクリーニング

C型慢性肝炎の予後

予後はウイルス学的著効(sustained virologic response:SVR)(すなわち,治療完了後12週時点でHCV RNAが検出不能になること)が得られたか否かに依存する。

SVRが得られた患者では,HCV-RNA陰性の状態が持続する確率が99%を上回り,一般的に治癒とみなされる。SVRが得られた患者の95%近くは,線維化や組織学的活動性などの組織学的所見が改善し,さらに肝硬変への進行,肝不全,および肝臓関連死に至るリスクが低下する。インターフェロンベースのレジメンで治療を受けた肝硬変および門脈圧亢進症のある患者では,SVRによって門脈圧の低下のほか,肝臓の代償不全,肝臓関連死,全死亡,および肝細胞癌について有意なリスク低下が得られることが示されている(1 予後に関する参考文献 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む )。

直接作用型抗ウイルス薬のレジメンでSVRが得られる可能性は,主に以下の因子に依存するようである:

  • 肝線維化の程度

  • 前治療に対する反応

  • HCVゲノタイプ

予後に関する参考文献

  • 1.van der Meer AJ, Veldt BJ, Feld JJ, et al: Association between sustained virological response and all-cause mortality among patients with chronic hepatitis C and advanced hepatic fibrosis.JAMA 308 (24):2584–2593, 2012.

C型慢性肝炎の治療

  • 直接作用型抗ウイルス薬

HCV治療の概要

(American Association for the Study of Liver Disease[AASLD]の診療ガイドライン,Recommendations for testing, managing, and treating hepatitis CおよびAASLD/Infectious Disease Society of America[IDSA]のWhen and in whom to initiate HCV therapyも参照のこと。)

C型慢性肝炎では,全ての患者に治療が推奨されるが,HCVの治療,肝移植,または他の指示された治療法では治療できない併存症のために期待余命が短い患者は例外である。

治療の目標は永続的なHCV-RNAの排除(すなわちSVR)であり,これにはアミノトランスフェラーゼ値の永続的な正常化と組織学的進行の停止を伴う。治療結果は,線維化が軽い患者の方が肝硬変のある患者よりも良好となる。

2013年の後半までは,全ての遺伝子型の患者がペグインターフェロンαとリバビリンによる治療を受けていた。現在では,インターフェロンベースの治療レジメンはもはや用いられておらず,またリバビリンはもはや第1選択薬とみなされず,特定の代替レジメンでのみ用いられている。現在は全ての患者が,プロテアーゼやポリメラーゼなどHCVの特定の標的に作用する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療を受けている(HCVゲノタイプ1型 HCVゲノタイプ1型 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む および HCVゲノタイプ2型,3型,4型,5型,6型 HCVゲノタイプ2型,3型,4型,5型,6型 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む も参照)。

パール&ピットフォール

  • C型慢性肝炎の治療にはインターフェロンベースの治療レジメンはもはや用いられず,リバビリンは特定の代替レジメンでのみ用いられている。

HCVの治療に現在用いられるDAAとしては,以下のものがある:

  • シメプレビル:ゲノタイプ1型に特異的な第2世代プロテアーゼ阻害薬

  • ソホスブビル:HCVゲノタイプ1~6型に対して有効なポリメラーゼ阻害薬

  • パリタプレビル:プロテアーゼ阻害薬

  • レジパスビル:プロテアーゼ阻害薬

  • ダサブビル(dasabuvir):ポリメラーゼ阻害薬

  • オムビタスビル:ウイルス性非構造タンパク質5Aの阻害薬(NS5A阻害薬)

  • ダクラタスビル:NS5A阻害薬

  • エルバスビル:NS5A阻害薬

  • グラゾプレビル:プロテアーゼ阻害薬

  • ベルパタスビル:全てのHCVゲノタイプの治療に用いられるNS5A阻害薬

  • グレカプレビル:全てのHCVゲノタイプの治療に用いられるプロテアーゼ阻害薬

  • ピブレンタスビル:全てのHCVゲノタイプの治療に用いられるNS5A阻害薬

  • ボキシラプレビル(voxilaprevir):NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬

DAAは単剤では使用されず,効力を最大化するために特定の組合せで使用される。

ソホスブビルは他の薬剤と併用される。望ましい組合せとしては以下のものがある:

  • レジパスビルとの配合錠,ゲノタイプ1型,4型,5型,および6型のHCVに対する治療

  • ベルパタスビルとの配合錠,ゲノタイプ1~6型のHCVに対する治療

  • ベルパタスビルとボキシラプレビル(voxilaprevir)との配合錠,ゲノタイプ1~6型のHCVに対する治療

ソホスブビルは,全て経口レジメンでリバビリン(ゲノタイプ1~6型向け),シメプレビル(ゲノタイプ1型向け),ダクラタスビル(ゲノタイプ1~3型向け)とともに投与することもできるが,これらは望ましいレジメンではない。

ゲノタイプ1型,2型,3型,4型,5型,もしくは6型でNS5A阻害薬を含むレジメンによる治療歴を有する成人患者,またはゲノタイプ1a型もしくは3型でNS5A阻害薬を併用せずソホスブビルを含むレジメンによる治療歴を有する成人患者では,ソホスブビル400mg,ベルパタスビル100mg,ボキシラプレビル(voxilaprevir)100mgの配合錠1錠,経口,1日1回,12週間投与が慢性HCV感染症の再治療に使用されている(1 治療に関する参考文献 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む )。この配合錠(ソホスブビル,ベルパタスビル,ボキシラプレビル[voxilaprevir])は,中等度または重度の肝障害がある患者には推奨されず,重度の腎障害がある患者にも推奨できる用量がない。

エルバスビル/グラゾプレビルはゲノタイプ1型および4型のHCVに対する治療に配合錠として使用される。

グレカプレビルとピブレンタスビルは,ゲノタイプ1~6型のHCVに対する治療に配合錠として使用できる。

以下の5剤併用レジメンは,望ましいレジメンはないものの,ゲノタイプ1型および4型に有効である:

  • パリタプレビル/リトナビル/オムビタスビル(配合錠で),1日1回投与

  • ダサブビル(dasabuvir),1日2回投与

  • リバビリン,1日2回投与

パリタプレビル/リトナビル/オムビタスビル + ダサブビル(dasabuvir)は,望ましいレジメンではないものの,ゲノタイプ1型および4型に対して単一包で使用可能である。

リトナビルはパリタプレビルの濃度を高めるが,直接の抗ウイルス作用はない。

HCVの治療に関する最新の推奨は急速に進化している。American Association for the Study of Liver Disease(AASLD)とInfectious Diseases Society of America(IDSA)のHepatitis C Guidance 2019 Update: AASLD-IDSA (Infectious Diseases Society of America) recommendations for testing, managing, and treating hepatitis C virus infectionは,ウェブ上で入手可能であり,頻繁に更新されている。

米国では,C型肝炎による非代償性肝硬変が 肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む の適応として最も多い。HCVは,ほぼ例外なく移植片内で再発する。DAAの使用前は,他の適応での移植時と比較して,患者の生存率と移植片の生着率ともに不良であった。しかしながら,DAAを使用する場合,肝移植を受けた患者のSVR率は肝硬変の有無にかかわらず95%を超えている。SVR率が非常に高いため,C型肝炎陽性臓器の移植が行われることが増えてきており(特にレシピエントもC型肝炎陽性である場合),潜在的なドナープールが拡大している。レシピエントとドナーがC型肝炎陽性である場合は,移植後まで治療を延期できる。その結果として,移植前の不要な治療コースを回避できる。

エルバスビル/グラゾプレビルまたはグレカプレビル/ピブレンタスビルのレジメンは現在,透析患者を含む末期腎臓病患者に対して,安全性プロファイルが良好で,かつ効果的であると考えられている。

非代償性肝硬変を来した患者におけるC型肝炎の治療は,肝臓専門医にコンサルテーションした上で,理想的には肝移植センターで行うべきである。肝機能障害のある患者ではプロテアーゼ阻害薬の血中濃度が高まるため,プロテアーゼ阻害薬を含むHCVの治療レジメンは,非代償性肝硬変を来した患者に使用してはならない。

HCVに対するDAAによる治療の施行中または終了後にB型肝炎の再活性化が生じ,肝不全および死亡に至った症例が報告されている。そのため,DAAによる治療を受けているC型肝炎患者では,全例でB型慢性肝炎またはB型肝炎の既往を示す所見がないか確認すべきであり,検査には以下の全てを含めるべきである:

  • B型肝炎表面抗原(HBs抗原)

  • B型肝炎表面抗体(HBs抗体)

  • B型肝炎ウイルスコアに対するIgG抗体(IgG-HBc抗体)

HCVゲノタイプ1型

ゲノタイプ1型は,他のゲノタイプと比較して,従来のペグインターフェロンα + リバビリンの2剤併用療法に対する抵抗性が高い。しかし現在では,インターフェロンを含まない直接作用型抗ウイルス薬(DAA)のレジメンを用いることで,SVR率が50%未満から95%以上にまで上昇している。

HCVゲノタイプ1型に対する第1選択のレジメンとしては,以下のものがある:

  • レジパスビル/ソホスブビル

  • エルバスビル/グラゾプレビル

  • ベルパタスビル/ソホスブビル

  • グレカプレビル/ピブレンタスビル

レジパスビル90mg/ソホスブビル400mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を,前治療歴,治療前のウイルス量,および肝線維化の程度に応じて8~12週間投与する。

エルバスビル50mg/グラゾプレビル100mgの固定用量配合剤を経口,1日1回で,リバビリン500~600mg,経口,1日2回との併用または単独で,前治療歴および肝線維化の程度に応じて,あるいはゲノタイプ1a型の患者ではエルバスビルについてベースラインのNS5A抵抗性に伴う異型の有無に応じて12~16週間投与する。

ベルパタスビル100mg/ソホスブビル400mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を12週間投与する。

グレカプレビル300mg/ピブレンタスビル120mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を,前治療歴および肝線維化の程度に応じて8~16週間投与する。

HCVゲノタイプ1型に対する代替レジメンとしては,以下のものがある:

  • パリタプレビル150mg/リトナビル100mg/オムビタスビル25mgの固定用量配合剤,1日1回とダサブビル(dasabuvir)250mg,経口,1日2回およびリバビリン500~600mg,経口,1日2回を肝線維化の程度に応じて12~24週間投与する5剤併用レジメン

  • ソホスブビル400mg,経口,1日1回 + シメプレビル150mg,経口,1日1回を,リバビリン500~600mg,経口,1日2回との併用または単独で,肝線維化の程度に応じて12~24週間投与する

  • ソホスブビル400mg,経口,1日1回 + ダクラタスビル60mg,経口,1日1回を,リバビリン500~600mg,経口,1日2回との併用または単独で,肝線維化の程度および前治療歴に応じて12~24週間投与する

シメプレビルは貧血と光線過敏症を引き起こす可能性がある。プロテアーゼ阻害薬はいずれも薬物間相互作用がある。

リバビリンの忍容性は通常良好であるが,溶血による貧血をよく引き起こすため,ヘモグロビン値が10g/dL(100g/L)未満まで低下した場合は減量すべきである。リバビリンは男女問わず催奇形性を示すため,治療期間中および治療完了後6カ月間は避妊が必要になる。

HCVゲノタイプ2型,3型,4型,5型,6型

ゲノタイプ2型に対しては,以下の組合せのいずれかが推奨される:

ゲノタイプ2型に対する代替レジメンは以下の通りである:

  • ソホスブビル400mg,経口,1日1回 + ダクラタスビル60mg,経口,1日1回を,肝線維化の程度に応じて12~24週間投与する

ゲノタイプ3型に対する第1選択の治療法としては,以下のものがある:

  • ソホスブビル400mg/ベルパタスビル100mgの固定用量配合剤,1日1回を12週間投与する

  • グレカプレビル300mg/ピブレンタスビル120mgの固定用量配合剤,1日1回を,前治療歴および肝線維化の程度に応じて8~16週間投与する

ゲノタイプ3型に対する代替レジメンは以下の通りである:

  • ソホスブビル400mg,経口,1日1回 + ダクラタスビル60mg,経口,1日1回を,リバビリン500~600mg,経口,1日2回との併用または単独で,肝線維化の程度に応じて12~24週間投与する

ゲノタイプ4型に対する第1選択の治療法としては,以下のものがある:

  • レジパスビル90mg/ソホスブビル400mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を12週間投与する

  • エルバスビル50mg/グラゾプレビル100mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を12週間投与する

  • ベルパタスビル100mg/ソホスブビル400mgの固定用量配合剤,1日1回を12週間投与する

  • グレカプレビル300mg/ピブレンタスビル120mgの固定用量配合剤,1日1回を,肝線維化の程度に応じて8~12週間投与する

ゲノタイプ4型に対する代替レジメンは以下の通りである:

  • パリタプレビル150mg/リトナビル100mg/オムビタスビル25mgの固定用量配合剤,経口,1日1回 + リバビリン500~600mg,経口,1日2回を12~16週間投与する

ゲノタイプ5型および6型に対する第1選択の治療法としては,以下のものがある:

  • レジパスビル90mg/ソホスブビル400mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を12週間投与する

  • ベルパタスビル100mg/ソホスブビル400mgの固定用量配合剤,経口,1日1回を12週間投与する

  • グレカプレビル300mg/ピブレンタスビル120mgの固定用量配合剤,1日1回を,肝線維化の程度に応じて8~12週間投与する

治療に関する参考文献

  • 1.Bourlière M, Gordon SC, Flamm SL, et al: Sofosbuvir, velpatasvir, and voxilaprevir for previously treated HCV infection.N Engl J Med 376 (22):2134-2146, 2017.doi: 10.1056/NEJMoa1613512

  • 2.Asselah T, Kowdley KV, Zadeikis N, et al: Efficacy of glecaprevir/pibrentasvir for 8 or 12 weeks in patients with hepatitis C virus genotype 2, 4, 5, or 6 infection without cirrhosis.Clin Gastroenterol Hepatol 16 (3):417–426, 2018.doi: 10.1016/j.cgh.2017.09.027 Epub 2017 Sep 22

C型慢性肝炎の要点

  • C型急性肝炎患者の75%が慢性感染に移行し,20~30%が肝硬変に至る;一部の肝硬変患者は肝細胞癌を発症する。

  • HCV抗体陽性かつHCV-RNA陽性の所見により診断を確定する。

  • 治療はゲノタイプ毎に異なるが,1つまたは複数の直接作用型抗ウイルス薬を使用するほか,ときにリバビリンを使用する。

  • ペグインターフェロンはもはやC型慢性肝炎の治療には推奨されない。

  • 新しい治療法は,95%を超える患者においてHCV RNAを恒久的に排除できる。

  • 非代償性肝硬変を来した患者では,肝臓専門医が治療を行うべきであり,プロテアーゼ阻害薬を含むレジメンを用いてはならない。

C型慢性肝炎についてのより詳細な情報

  • AASLD-IDSA Hepatitis C Guidance Panel: Hepatitis C Guidance 2019 Update: American Association for the Study of Liver Diseases–Infectious Diseases Society of America (ISDA) Recommendations for Testing,Managing, and Treating Hepatitis C Virus Infection.This web site provides up-to-date, peer-reviewed, unbiased,evidence-based recommendations to help clinicians make decisions about the testing, management, and treatment of HCV infection.

  • American Association for the Study of Liver Disease and the Infectious Disease Society of America (IDSA): When and in whom to initiate HCV therapy: This web site discusses the clinical benefits of curing hepatitis C and of treating fibrosis early, the importance of pretreatment assessment, and considerations in specific populations. It also includes an overview of cost, reimbursement, and cost-effectiveness for hepatitis C treatment regimens.

  • U.S. Preventive Services Task Force: Hepatitis C virus infection in adolescents and adults:Screening: Hepatitis C virus infection in adolescents and adults: Screening: This web site discusses the importance of screening, assessment of risk, use of screening tests including intervals, and treatment and provides supporting evidence.

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