嚢胞性線維症とはどのような病気ですか?
嚢胞性線維症は生まれつきの病気です。体液が濃くなって粘り気が出ます。そのような粘り気のある液体が、肺や消化器系などのたくさんの臓器に詰まります。子どもには、呼吸困難、肺の感染症、発育不良など、たくさんの健康上の問題が起きます。嚢胞性線維症は、なりやすい体質が家族の中で受けつがれます。この病気は、白人でより多くみられます。
嚢胞性線維症は、異常な遺伝子が両親からその子どもへ受けつがれることで起こります。
この遺伝子の異常があると、肺、肝臓、膵臓、消化器系にある体液がふつうより濃くなって粘り気が出ます。
たいていは、赤ちゃんや子どものときに、嘔吐する、体重が増えない、せきが出るなどの症状が出始めます。
医師は血液と汗の検査や遺伝子の検査をして、あなたのお子さんに嚢胞性線維症があるかどうかを調べます。
医師は、呼吸や感染の予防、消化の助けとなる薬を出します。
嚢胞性線維症の患者さんのおよそ半数は、40才を超えて生きています。
嚢胞性線維症:肺だけの病気ではありません
嚢胞性線維症では、肺だけでなく、ほかのいくつかの臓器にも問題が起こります。 肺では、気管支の分泌物の粘り気が強いため、細い気道がふさがれて感染や炎症を起こします。病気が進むにつれて、気管支の壁が厚くなると、気道は感染した分泌物でいっぱいになり、肺のあちこちがしぼんで、リンパ節が腫れます。 肝臓では、粘り気の強い分泌物で胆管がふさがれます。胆嚢に結石ができることもあります。 膵臓では、粘り気の強い分泌物で分泌腺が完全に詰まって、消化酵素が腸に届かなくなることがあります。また、膵臓でつくられるインスリンの量が減り、糖尿病になる人もいます(ふつうは青年期か大人になってから発症します)。 小腸では、粘り気の強い分泌物によって胎便性イレウス(腸閉塞の一種)が起こることがあり、生まれた赤ちゃんに対して手術が必要になることがあります。 生殖器にも、いろいろなかたちでこの病気の影響があり、男の人では、不妊症になることがよくあります。 皮膚の汗腺からは、ふつうよりも塩分をたくさん含んだ液体が分泌されます。 |
嚢胞性線維症の原因は何ですか?
嚢胞性線維症は、特定の遺伝子において、赤ちゃんが両親のそれぞれから1つずつ受けつぐコピーの両方に異常があったときに起こります。両親はこの遺伝子の異常をもっていても知らないことがあります。遺伝子の片方のコピーに異常がある人はキャリアと呼ばれます。キャリアには嚢胞性線維症の症状はありません。
あなたが妊娠を希望している場合は、医師が血液を調べて、あなたとパートナーがキャリアかどうかを確かめることができます。もし、両方が嚢胞性線維症の遺伝子をもっていたら、あなたの赤ちゃんが嚢胞性線維症になる確率は4分の1です。
遺伝子に異常があると、体液がさらさらになって流れやすくなる代わりに、どろどろになって粘り気が出ます。どろどろした粘液が、肺、膵臓、腸の通り道を詰まらせます。通り道が詰まると、呼吸や食べものからのエネルギーの摂取、排便に問題が出てきます。
嚢胞性線維症にはどのような症状がありますか?
嚢胞性線維症の赤ちゃんは:
腸が詰まったり、ねじれた状態で生まれてきます。
嘔吐します。
おなかが張っています。
生後4~6週間までに体重が十分に増えません。
次のような呼吸の症状が現れます:
せき
喘鳴
呼吸困難
たびたび肺の感染症にかかる
何年も呼吸の問題が続くと、あなたのお子さんの肺は長い間ダメージを受けて、次のことが起こる可能性があります:
樽のようなかたちの胸になります。
爪の下が青くなります。
ふつうに動いていても息が切れるようになります。
嚢胞性線維症の子どもは、食べものやビタミンを消化して吸収できないため、消化器の症状が現れます。最初は次のことが起こります:
体重があまり増えない
ふつうより成長が遅い
おなかのけいれんと便秘がある
胸やけがする
何年かたつと、消化器系の症状がひどくなって、においがひどくあぶらっこい便が出て体重が減ることがあります。
嚢胞性線維症は、ほかにも次のような健康上の問題を引き起こすことがあります:
骨が弱くなる
出血の問題
心臓の問題
肝臓の問題
妊娠することや父親になることができない問題(不妊症 不妊症 不妊症とは、1年以上妊娠を試みても妊娠 さらに読む )
医師はどのようにして、私の子どもが嚢胞性線維症かどうかを判断しますか?
アメリカでは、赤ちゃんが生まれたら、嚢胞性線維症がないか血液検査をします。確かめるために、医師は赤ちゃんの汗を調べます。また、血液検査をして、赤ちゃんに嚢胞性線維症の遺伝子があるかどうかも調べます。
医師はほかにも検査をして、消化器系や肺などのほかの臓器に嚢胞性線維症による問題が起きていないか確かめることがあります。
医師は嚢胞性線維症をどのように治療しますか?
呼吸を助けるために、医師は以下のことをします:
あなたのお子さんの肺にある液体をさらさらにして気道を開く助けとなる薬を出す
肺の働きがよくなるのを助ける薬を出す
あなたのお子さんが、気道から液体を吐き出して、もっとよく呼吸ができる助けとなるような胸の運動をあなたに教える
肺の感染症に対する抗菌薬を出す
かなり重い肺の感染症がある子どもは、病院での治療が必要でしょう。人工呼吸器が必要になるかもしれません。人工呼吸器を使って、肺を休めることによって、肺の治りをよくすることができます。
あなたのお子さんの肺が大きなダメージを受けている場合は、肺移植が1つの選択肢になるかもしれません。
嚢胞性線維症の子どもには、食べものから栄養をとることに問題がある可能性があります。医師はあなたのお子さんが食べものから十分なエネルギーと栄養をとることができるように:
ふつうよりもたくさん食べさせるよう、あなたに指示します。
お子さんにビタミン剤を出します。
食べものの消化を助ける薬を出します。
呼吸と栄養の吸収を助けるために、医師は問題のある遺伝子の働きがよくなる助けとなる新しい薬を出すこともあります。
嚢胞性線維症の人では、便秘や腸閉塞がみられることがあります。便秘には薬が役立ちます。薬は、のませるものもあれば、浣腸として肛門から入れるものもあります。
糖尿病 小児と青年における糖尿病 糖尿病は、体が必要とするインスリンが十分に産生されない、または産生されたインスリンに体が正常に反応しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 糖尿病とは、インスリンの生産量低下、またはインスリンの効果低下、あるいはその両方が原因で、血糖値が上昇(高血糖)し、それに伴って生じる一連の病態のことをいいます。... さらに読む の子どもにはインスリンを与える必要があります。食事をするときに糖質の制限をすることも大切です。
場合によっては、医師は次のことを行うために手術をします:
肺の異常を治す
出血を止める
腸の中をふさいでいるものを取り除く
あなたのお子さんに、肝臓や肺の移植が必要な場合も、手術が行われるかもししれません。肝臓や肺がひどくダメージを受けていると、移植が必要になることがあります。移植では、うまく働かなくなった肝臓や肺を、ドナーから提供された健康なものに置きかえます。