コメンタリー:スタチンの服用中に重度の筋症状がみられたことがある人でスタチンが筋肉痛を引き起こさなかったことが研究で判明
コラム21年5月25日 Vishnu Priya Pulipati, MD, The University of Chicago Medicine; Michael H. Davidson, MD, FACC, FNLA, The University of Chicago Medicine

スタチン系薬剤(スタチン)は、動脈硬化(動脈が硬くなる病態)の主な危険因子であるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らすのにとても有効な種類の薬です。動脈硬化は心筋梗塞と脳梗塞の主な原因の一つで、スタチンはこれらの疾患のリスクを大幅に低下させます。しかし、スタチンはごくまれに、横紋筋融解症やミオパチーといった、重篤な筋疾患を引き起こす可能性があります。それらの疾患では筋肉痛が起きる可能性があるため、スタチンを服用している人に筋肉痛がみられると、医師や本人が不安を覚えることがよくあります。その筋肉痛は薬の副作用で、危険な筋肉の病気が発生する予兆なのではないか、という心配です。こうした心配がしばしば、スタチンの服用をやめる(あるいは最初から服用をしたがらない)ことにつながり、結果として心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めています。スタチンはとても有用な薬ですので、本当にスタチンが筋肉痛を引き起こすのかどうかを調べる研究が続けられてきました。

最近、BMJ誌(以前のBritish Medical Journal)に、筋肉痛がみられたためにスタチンの服用を中止した(または中止を考えていた)人を対象とする多施設共同ランダム化プラセボ対照臨床試験の結果が発表されました。研究グループは、被験者をスタチンを服用するグループとプラセボ(偽薬)を服用するグループに分け、2カ月にわたり服用を続けさせた後、2つの薬を入れ替えてから、さらに2カ月にわたり服用を続けさせました。被験者には服用している薬がスタチンかプラセボかを知らせずに、筋症状があったかどうかを記録してもらいました。この手法により、スタチンを服用している人が服用していない人より筋肉痛を経験する可能性が高いかどうかが調べられました。

解析の結果、スタチンとプラセボのどちらを服用した場合にも、約7~9%の人に筋肉痛が起きたことが判明しました。この結果は、筋肉痛が一般にまれな症状ではなく、必ずしも薬の副作用の徴候ではないことを意味していると解釈されました。そのため、この研究では、約3分の2の人がスタチンによる長期の治療を再開することができました。

それでも、スタチンを服用している人が訴える筋症状は無視できないということに注意が必要です。医師は包括的な評価を行い、横紋筋融解症やミオパチーなどのまれな副作用や薬剤と関係のない他の疾患を候補に含めて、筋症状の考えられる原因を特定する必要があります。しかし、この研究で得られた知見は、特徴のない軽度の筋症状であれば、スタチンの服用を中止する必要はないと、医師が患者を安心させる材料として役に立つかもしれません。