ハチに刺された直後に取るべき3つの対応-コメンタリー
コラム18年5月31日 Thomas Arnold, MD, Professor and Chairman, Department of Emergency Medicine, LSU Health Sciences Center Shreveport

ミツバチやスズメバチの刺し傷に対する最も良い対処法は? それぞれの家庭に独自の治療法があるようです。ミートハンマーやたばこの汁からお酢や重曹まで、「治療法」とそれを信頼する人々であふれています。

しかし実際のところ、このような民間療法には科学的・医学的根拠はありません。その多くは必ずしも危険ではありませんが、特に有効でもありません。しかし、ミツバチやスズメバチに刺された後、自身や親ができることは何もないわけではありません。正しく対応することで、刺された後に多くの人に現れる痛みや赤み、腫れ、かゆみを最小限に抑えることができます。重度のアレルギー反応のある人では、正しい対応で命が救われることもあります。

多くの人の場合、刺し傷が、その周辺の痛みや腫れ、赤み(局所反応といいます)以上のものを引き起こすことはありません。 

しかし、虫刺されに対するアレルギーがある一部の人では、全身反応という、ずっと重度で危険な反応が起こります。その場合、刺し傷によってアナフィラキシーが起こり、死に至ることもあります。実際、米国疾病対策センターの推計によると、米国では刺し傷のアレルギー反応によって毎年60~70人が死亡しています。さらに、死には至らないが非常に重篤な反応が数万人で生じています。

次にあなたや子供が不幸にも刺されたら、全身アレルギー反応の兆候を探してください。

全身アレルギー反応の兆候

通常、症状は非常に素早く発現し、以下を含みます。

  • 不安感、ピリピリ感、および浮動性めまい
  • 全身のかゆみおよびじんましん
  • 唇や舌の腫れ
  • 喘鳴および呼吸困難
  • 虚脱および意識消失

これらの症状のいずれかがある人は、直ちに救急科を受診してください。

過去に全身アレルギー反応を起こしたことのある人は、もう1度刺されると、また反応が起こる可能性が非常に高いです。ところが、過去に刺された時にアレルギー反応が全くなかった人でも、次に刺された時に全身アレルギー反応を示すことがあります。幸い、この最初の反応で死に至る可能性はあまり高くありません。

アレルギーがあることが分かっている人は、常にエピネフリン自己注射器が使えるようにしましょう。自己注射器は、皮膚に押し当てて自分に注射をする携帯型の機器で、「注射の仕方」を知っている必要はありません。エピネフリン(アドレナリン)はアレルギー反応を治療する薬であり、命を救うことがあります。アレルギー反応の最初の兆候が現れた時に自己注射器を使用してください。 

局所反応(強い痛みやより広範囲の腫れ)の重症度が高いことや刺された回数が多いことは、全身反応のリスク増加の指標とはならないことを知っておいてください。

全身アレルギー反応の兆候がない場合、次の3つの手順に従ってください。

毎年最大100万人が、ハチに刺されて救急科を受診しています。そのような受診の多くが、以下の手順に従うことにより、家庭で治療することができる局所反応によるものです。

1.鋭くないもので毒針を取り除きます。

ミツバチの刺し傷とスズメバチの刺し傷はよく似ていますが、大きなちがいが1つあります。ミツバチに刺された場合、かかり(逆とげ)の付いた針が残されています(そしてミツバチは死にます)。一方でスズメバチの針はなめらかで、身体から離れず、何度も刺すことができます。 

ミツバチに刺されたら、出来るだけ早く針を取り除く必要があります。多くの場合、ハチも毒袋を残していくため、取り除かない限りは毒を送り込み続けます。そのため、取り除くのが早ければ早いほど、毒の流入を早く止めることができます。

クレジットカードやバターナイフなど、切れにくいもので患部を優しくこすってそぎとることが、針を取り除く最善の方法です。ピンセットなどは毒袋に穴をあけたり押しつぶしたりして、症状を悪化させる可能性があるため避けた方がよいでしょう。

2.冷湿布をする

針が取り除けたら、冷湿布で痛みを和らげることができます(氷で全体を浸すことはしないでください)。経口投与の抗ヒスタミン薬やクリーム剤でかゆみと腫れを和らげることができます。

3. 患部を持ち上げる

刺し傷の部位によっては、部位の位置を高くすることで腫れを和らげることもできます。

多くの場合、刺し傷による腫れはびっくりするほど大きくなります。手を刺されると、普段の2倍にまで腫れることもあります。温かく柔らかく感じる部位を伴うこの腫れは、蜂巣炎という感染症と見分けが付かないこともあります。刺された後、特に最初の数日以内に感染が発現することはめったにないことを、覚えておいてください。局所反応による腫れは数時間で引くことがありますが、完全に回復するには数日かかることがあります。

ハチ刺されを防ぐカギ

ハチ刺されによる合併症を防ぐ最善の方法は、そもそも刺されないようにすることです。ミツバチやスズメバチの回りにいるときにあなたやあなたの子供が外出する場合、覚えておくべきことがいくつかあります。

  • 鮮やかな色の服、香水や香りのするヘアスプレーは避けること。
  • ミツバチやスズメバチは社会的な生物であることを覚えておくこと。ハチが人を刺すのは、自分たちの巣を守るために必要な場合だけです。昔からある経験則、つまり「相手の邪魔をしなければ、邪魔されない」は真実です。
  • ミツバチとスズメバチは非常にゆっくり飛ぶので、ほとんどの人は、素早く歩くだけで逃げることができます。