(潜水による障害の概要 潜水による障害の概要 深い海に潜るダイビングやスキューバダイビングには、いくつかの障害のリスクが伴い、そのほとんどは圧力の変化によって引き起こされます。同様の障害は、海底トンネルの工事や、ケーソン(防水の箱型の構造物で、建設現場などで使用します)内で作業する人にも起こります。水の浸入を防ぐために、海底トンネルやケーソンでは気圧を高くしているからです。... さらに読む も参照のこと。)
肺の圧外傷 肺の圧外傷 圧外傷は圧力の変化によって、体の様々な部位に存在する気体が圧縮されたり、膨張したりすることで起こる組織の障害です。 肺、消化管、潜水用フェイスマスクで覆われた顔の一部、眼、耳、副鼻腔が侵される可能性があります。 症状は様々で、呼吸に関連するもの、胸痛( 肺の圧外傷)、眼の充血( マスクの圧外傷)、回転性めまい、耳の痛み( 耳の圧外傷)、顔面痛や鼻血( 副鼻腔の圧外傷)などがあります。... さらに読む や 減圧症 減圧症 減圧症は、高圧環境下で血液や組織中に溶けていた窒素が、減圧に伴い気泡をつくる状態です。 症状には疲労感、筋肉や関節の痛みがあります。 重症の場合、症状は脳卒中の症状に似ており、しびれ、ピリピリ感、腕や脚の筋力低下、ふらつき、回転性めまい(目が回る)、呼吸困難、胸痛などがみられます。 酸素と 再圧(高気圧酸素)療法で治療します。 ダイビング深度、ダイビング時間、浮上速度を制限することが予防に役立ちます。 さらに読む が起こるとその後に、気泡が動脈血や静脈血に入り込む(空気塞栓症― 特殊なタイプの塞栓 特殊なタイプの塞栓 肺塞栓症は、血液のかたまり(血栓)や、まれに他の固形物が血液の流れに乗って肺の動脈(肺動脈)に運ばれ、そこをふさいでしまう(塞栓)病気です。 肺塞栓症は、一般に血栓によって発生しますが、別の物質が塞栓を形成して動脈をふさぐこともあります。 肺塞栓症の症状は様々ですが、一般に息切れなどがみられます。... さらに読む を参照)ことがあります。動脈内に気泡ができると、体内のあらゆる臓器に運ばれて細い血管をふさぐことがあります。これは脳に最も多くみられますが、ほかにも心臓、皮膚、腎臓の細い血管でも起こります。 非常に大きな空気塞栓の場合、心房や心室、または太い動脈内の血流を妨げる可能性があります。静脈内に気泡ができると、 卵円孔開存や心房中隔欠損 心房中隔欠損症と心室中隔欠損症 心房中隔欠損症と心室中隔欠損症とは、心臓の右側部分と左側部分を隔てる壁(中隔)に孔が開いた状態です。 その孔は、上側の2つの心腔を隔てる壁にみられることもあれば、下側の2つの心腔を隔てる壁にみられることもあります。 欠損孔の多くは小さいもので、症状を示さず、治療をしなくても閉鎖します。 診断は、典型的な心雑音(狭窄もしくは漏れのある心臓弁または異常な心臓の構造を通る血液の乱流によって生じる音)に基づいて疑われ、心エコー検査によって確定さ... さらに読む などの心臓の異常を介して動脈内に気泡が入り込むことがあります。
動脈ガス塞栓症(ダイビング関連の文献ではAGEと呼ばれることもあります)はダイバーの死亡の最も多い原因です。
症状
動脈ガス塞栓症の症状は通常、水面に着いてから数分以内に生じます。脳の動脈ガス塞栓症は脳卒中と似ていることが多く、錯乱や部分麻痺、感覚の消失などが起こります。突然意識を失ったり、けいれん発作を起こす場合もあります。重度の動脈ガス塞栓症では、 ショック ショック ショックとは、臓器に向かう血流が減少することで、酸素の供給量が低下し、それにより臓器不全やときに死にもつながる、生命を脅かす状態です。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む や死に至ることもあります。
その他の症状には、基礎にある肺の圧外傷や減圧症によるものや、以下の部位で発生した動脈ガス塞栓症によるものがあります。
心臓の動脈(心臓発作、不整脈、心停止)
皮膚(青紫色のあざ、舌の蒼白)
腎臓(血尿またはタンパク尿、急性腎障害)
診断
治療
動脈ガス塞栓症の患者は、直ちに横にさせて、酸素を与えます。可能な限り速やかに高圧の環境に戻し、血液中の気泡を圧縮して再び溶かすようにします。多くの医療機関に、この治療に用いる再圧チャンバー(高気圧酸素治療室ともいいます)があります。
飛行機で搬送すると、たとえ高度が低くても地上よりも気圧が低くなるため、さらに気泡が膨張しますが、急いで高圧治療室に搬送するためであれば妥当と判断されます。なるべく海面と同じ機内圧を保つか、できるだけ低い安全な高度で飛行します。酸素吸入も推奨されます。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
ダイバーズアラートネットワーク(Divers Alert Network):24時間緊急ホットライン、+1-919-684-9111
デューク潜水医学(Duke Dive Medicine):24時間救急医療相談、+1-919-684-8111