食道閉鎖と気管食道瘻

執筆者:William J. Cochran, MD, Geisinger Clinic
レビュー/改訂 2021年 4月
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やさしくわかる病気事典

食道閉鎖は、食道が狭くなったり、行き止まりになったりする先天異常です。食道閉鎖がある新生児の大半では、食道と気管の間に気管食道瘻(ろう)と呼ばれる異常な連絡路があります。

食道は、口と胃をつないでいる長いチューブのような臓器です。食道閉鎖では、食道が狭くなっているか、途中で閉じて2つの部分に分断されています(閉鎖)。この異常のために、食べたり飲んだりしたものを食道から胃に送るのが遅くなったり、送れなくなったります。

肺に続く気道の主要な部分を気管といいますが、正常な状態では、食道と気管は分離しています。しかし、気管食道瘻では、食道と気管の間に瘻孔(ろうこう)と呼ばれる通路ができます。この異常により、食べたり飲んだりしたものが気管や肺に入ってしまいます。

食道閉鎖と気管食道瘻はしばしば一緒に発生します。

食道閉鎖と気管食道瘻の原因は医師にも分かりませんが、これらの先天異常がある小児の多くでは、脊椎心臓腎臓性器四肢の異常や精神的・身体的な発達の遅れなど、他の異常もみられます。

消化管先天異常の概要も参照のこと。)

閉鎖へいさ瘻孔ろうこう食道しょくどう異常いじょう

食道閉鎖しょくどうへいさとは、食道しょくどうせまくなっていたりまりになっていたりする状態じょうたいです。この場合ばあい正常せいじょう食道しょくどうのようににつながっていません。気管食道瘻きかんしょくどうろうとは、食道しょくどう気管きかん気管きかんはいにつながっています)がつながっている異常いじょう状態じょうたいです。

症状

食道閉鎖の新生児では、哺乳中に飲み込もうとすると、せきが出て、むせび、よだれが出ます。

飲み込んだ食物と唾液が瘻孔(ろうこう)を経由して肺に入り、せきや窒息、呼吸困難を引き起こし、ときに誤嚥性肺炎(食物や唾液を肺に吸い込むことによる)も引き起こすことから、気管食道瘻は危険です。食物や液体が肺に入ると、血液の酸素の受け取りが阻害され、皮膚が青みがかった色になることがあります(チアノーゼ)。

診断

  • 出生前:出生前超音波検査

  • 出生後:食道へのチューブの挿入およびX線検査

食道閉鎖と気管食道瘻は、出生前では出生前超音波検査の結果から、出生後では症状から疑われます。

出生後にこれらの異常を疑った場合、医師は患児の食道にチューブを挿入することを試みます。チューブが途中までしか入らない場合には、診断を確定して、問題の部位を特定するために、X線検査を行います。

治療

  • 手術

異常を修復するための手術を行う前に、誤嚥性肺炎などの合併症を予防するために準備を整える必要があります。まず、口からの栄養摂取を中止した上で、唾液が肺に到達する前に絶えず吸い出すためのチューブを食道の上部に留置します。以降、栄養は静脈から与えます(静脈栄養)。

食道と胃の正常な接続を確立するとともに、食道と気管の連結部をふさぐための手術を、出生後すぐに行う必要があります。

手術の後に発生する合併症もあります。食道と胃の接続を修復した部位での漏れや瘢痕組織が最もよくある問題です。多くの患児が困難を感じます。授乳困難がある患児の約半数では胃食道逆流(食べたものと胃酸が胃から食道に逆流する現象)が発生するため、食道閉鎖のある新生児には胃酸を抑える薬が処方されることがあります。その薬で逆流を抑えられない場合は、噴門形成術と呼ばれる手術が行われます。噴門形成術では、胃の上部を胃に接する食道下部の周りに巻きつけて胃と食道の結合部を狭くすることで、逆流を減らします。

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