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性器出血

執筆者:

David H. Barad

, MD, MS, Center for Human Reproduction

レビュー/改訂 2022年 5月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

異常な性器出血(不正出血)には以下の時期におけるすべての性器出血が含まれます。

  • 思春期以前

  • 月経期以外の時期の出血

  • 妊娠中

  • 閉経後(最後の月経から12カ月以上経過している)

妊娠可能年齢の間は、月経に伴って腟からの出血がみられ、それらは正常とみなされます。しかし、以下のような月経は異常とみなされます。

  • 出血量が過剰になる(1時間に2個以上のタンポンが必要)

  • 持続期間が長い(7日間を超える)

  • 回数が多い(21日よりも短い間隔で生じる)

  • 回数が少ない(90日よりも長い間隔で生じる)

一般に、月経の期間は3~7日間で、21~35日毎に生じます。青年では月経と月経の間の期間のばらつきはさらに大きく、最長で45日周期になる場合もあります。

妊娠の前半 妊娠前半にみられる性器出血 妊娠の最初の20週間に、20~30%の女性に性器出血がみられます。このうち約半数が、 流産に至ります。流産がすぐに起こらなくても、妊娠週数が進んでから問題が起こる可能性があります。例えば、子どもの出生体重が低い、早く産まれる( 早産)、 死産、分娩中または分娩直後の死亡などの可能性があります。大量に出血すると、血圧が危険なレベルにまで下がり、 ショックに至る可能性があります。しかしながら、妊娠初期に軽度の出血があった女性の多くでは、健康... さらに読む または 妊娠の後半 妊娠後半にみられる性器出血 3~4%の妊婦に妊娠後半(妊娠20週以降)に性器出血がみられます。このような妊婦には、胎児の死亡や出血過多のリスクがあります。ときに血液が大量に失われて、血圧が危険なレベルにまで下がることや( ショック状態)、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできること( 播種性血管内凝固症候群)があります。 妊娠後半にみられる性器出血の最も一般的な原因は以下のものです。 陣痛の開始 通常、陣痛は粘液の混ざった少量の血液が腟から排出されることで開始しま... さらに読む に性器出血がみられる場合があり、これは妊娠に関連した問題(合併症)によって生じている可能性があります。

出血が長引いたり、出血量が多いと、その原因にかかわらず 鉄欠乏症 鉄欠乏症 鉄欠乏症は、 貧血、赤血球の数が少ない状態です。 鉄欠乏症は通常、成人では失血(月経による出血を含む)によって起こりますが、小児と妊婦では食事に含まれる鉄分の不足から起こることもあります。 貧血が生じ、肌が青白くなって筋力低下や疲労を感じるようになります。 診断は、症状と血液検査の結果に基づいて下されます。 医師は出血源を探し、見つけたら治療します。 さらに読む 貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む 、ときに危険なレベルの低血圧(ショック ショック ショックとは、臓器に向かう血流が減少することで、酸素の供給量が低下し、それにより臓器不全やときに死にもつながる、生命を脅かす状態です。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む )を起こすことがあります。

性器出血の原因

性器出血は以下により生じる可能性があります。

一般的な原因

性器出血における可能性の高い原因は、女性の年齢によって異なります。

生まれたばかりの女児では少量の性器出血がみられることがあります。出生前に女児は胎盤を通して母体からエストロゲンを吸収します。出生後には、高かったエストロゲンの濃度が急速に下降するため、ときに生後1~2週間に少量の出血が起こります。

小児期では、性器出血は異常であり、まれです。小児期に性器出血が起こったときは、多くの場合以下が原因です。

妊娠可能年齢の間の最も一般的な原因は以下のものです。

妊娠可能年齢の間の性器出血の他の一般的な原因としては以下のものがあります。

  • 加齢による腟粘膜の萎縮(かつての萎縮性腟炎)または子宮内膜の萎縮(閉経関連泌尿生殖器症候群の一部)

あまり一般的でない原因

子宮頸がん 子宮頸がん 子宮頸がんは子宮頸部(子宮の下部)に発生します。子宮頸がんの大半は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされます。 子宮頸がんは通常、性的接触の際に感染するヒトパピローマウイルス(HPV)による感染の結果として発生します。 最初の症状は通常、不規則な性器出血(不正出血)(通常は性行為後)ですが、がんが大きくなるか広がるまで何の症状もみられない場合もあります。... さらに読む 子宮頸がん 腟がん 腟がん 腟がんはまれながんで、典型的には60歳以上の女性において、通常は腟の内側を覆っている細胞から発生します。 腟がんでは、異常な性器出血(不正出血)が生じることがあります(特に性交後または閉経後の女性において)。 腟がんの疑いがある場合は、腟から組織サンプルを採取して検査します(生検)。 がんは手術により切除するか、放射線療法を行います。 ( 女性生殖器のがんの概要も参照のこと。) さらに読む 、または 子宮内膜がん 子宮体がん 最も一般的な種類の子宮体がんは、子宮の内側を覆っている子宮内膜という組織から発生し、子宮内膜がんと呼ばれています。 子宮内膜がんは通常は閉経後に発生します。 典型的には異常な性器出血(不正出血)を引き起こします。 診断には、子宮内膜から採取した組織サンプルを検査します(生検)。 治療には子宮、卵巣、卵管の摘出、およびときに近くのリンパ節の切除があり、その後に放射線療法を行うことが多いですが、化学療法またはホルモン療法を行うこともあります... さらに読む 子宮体がん (子宮の内側を覆っている組織のがん)は、出血を引き起こす可能性があります(通常は閉経後)。妊娠可能年齢の間は、がんは一般的な原因ではありません。

非常に重い月経が、 出血性疾患 血液凝固障害による出血 の最初の徴候であることがあります。

まれに、腫瘍または予想されていない小児虐待によるけがが原因で出血が起こることがあります。

性器出血の評価

妊娠可能年齢の女児および女性では、医師は必ず妊娠検査を行います。

警戒すべき徴候

性器出血がみられる女性では、以下の特徴に注意が必要です。

以下の場合には出血が過剰とみなされます。

  • 約1カップ(240mL)を超える出血がある。

  • 1時間にナプキン1枚またはタンポン1つを使用しなければならない出血が数時間続く。

  • 血に大きなかたまりが混ざっている。

受診のタイミング

警戒すべき徴候が多くみられる場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があり、大きな血のかたまりや組織のかたまりが排出された場合や、出血性疾患を示唆する症状がみられる場合も同様です。出血性疾患の症状には、あざができやすい、歯磨き中や軽い切り傷からの過剰な出血、小さな赤紫色の点状の発疹またはそれより大きなしみ(皮下出血を示唆)などがあります。しかし、警戒すべき徴候が思春期以前または閉経後の性器出血だけであれば、1週間程度の遅れは問題になりません。

警戒すべき徴候がない場合も、都合のよいときに受診すべきですが、数日の遅れが問題になることはあまりありません。

新生児の性器出血が数日以上続いたり、重度である場合や悪臭のある場合は、医師の診察を受ける必要があります。

医師が行うこと

医師は初めに、症状と病歴について患者(または養育者)に質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、出血の原因と必要になる検査を推測することができます(表「 異常な性器出血の主な原因と特徴 異常な性器出血の主な原因と特徴 異常な性器出血の主な原因と特徴 」を参照)。

医師は出血について以下のことを質問します。

  • 1日または1時間当たりどれくらいの数のタンポンやナプキンを使用するか。

  • 出血はどれくらい続くか。

  • 痛みはいつから始まったか。

  • 月経や性行為と関連して、どのようなときに痛みが起こるか。

医師は月経歴についても以下のような質問を行います。

  • 初めての月経は何歳だったか。

  • 月経期間はどれくらいか。

  • 月経はどれくらい重いか。

  • 月経と月経の間の期間はどれくらいか。

  • 月経は規則的にみられるか。

過去に異常出血があったか、出血を引き起こす病気になったことがあるか(最近の流産など)、経口避妊薬や他のホルモン剤、あるいは過剰な出血の原因となる他の薬剤(抗凝固薬や非ステロイド系抗炎症薬[NSAID])を使用しているかなどについて質問されます。

ふらつき、腹痛、歯磨き中や軽い切り傷からの過剰な出血などの他の症状についても質問されます。

身体診察には 内診 内診 婦人科の診療では、性生活、避妊、妊娠、更年期に関する問題などのデリケートな事柄を扱うため、こうした内容について気兼ねなく相談できる専門家を選んでおくべきです。米国では、医師、助産師、ナースプラクティショナー、医師助手などが受診先となっています。 婦人科の評価には 婦人科の病歴聴取および婦人科の診察が含まれます。 婦人科の診察とは具体的には女性の生殖器系の診察を指します。乳房の診察も含まれます。内診は女性の状況や希望に応じて行われます。た... さらに読む が含まれます。診察では、すべての年齢層の女性において子宮頸部、子宮、腟、外陰部、尿道の病気を特定できます。小児では、最初に全身状態の観察を行って 早発思春期 早発思春期 早発思春期とは、平均的な年齢より前に始まる性的成熟のことです。 早発思春期の原因はしばしば不明ですが、脳の器質的異常または腫瘍が原因である可能性があります。 症状としては、早期の成長スパート、ならびに陰毛および腋毛の早期発毛などがあります。 診断は、X線検査、血液検査、画像検査に基づきます。 治療は、早発思春期の種類によりますが、ホルモン療法が含まれることがあります。 さらに読む (陰毛および乳房の発達に基づく)がないか確認し、必要な場合にのみ内診を行います。

性器出血がみられなければ直腸診を行い、出血が消化管由来のものかどうかを確認します。

検査

女性が妊娠可能年齢であれば、医師は必ず以下を行います。

  • 尿妊娠検査または血液妊娠検査

尿妊娠検査が陰性でも医師が妊娠を疑う場合、血液妊娠検査を行います。これには胎盤から分泌されるホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン[hCG]と呼ばれます)の測定が含まれます。妊娠がごく初期(5週以下)のときは、血液検査の方が尿検査よりも正確です。

一般的に行われる検査には以下のものがあります。

  • 甲状腺ホルモンを測定する血液検査

  • 出血が多いか長く続く場合には貧血を調べる血算

しばしば超音波検査を使用して生殖器の異常を調べますが、女性に子宮内膜がんの危険因子がある場合、または医師が子宮筋腫やポリープ、腫瘍を疑う場合に行われます。超音波検査では、通常は手持ち式の超音波装置を腟内に挿入しますが、腹部にあてることもあります。

超音波検査で子宮内膜の肥厚(子宮内膜増殖症)が検出されたら、子宮鏡検査またはソノヒステログラフィーを行って、子宮内に小さな腫瘤がないか調べることがあります。 子宮鏡検査 子宮鏡検査 医師は、 スクリーニング検査を勧めることがあります。スクリーニング検査とは、症状がない人に対して病気の有無を調べるために行われる検査です。女性に生殖器系に関連する症状(婦人科疾患の症状)がある場合、症状を引き起こしている病気を特定するための検査( 診断目的の検査)が必要になることがあります。 婦人科領域では以下の2つのスクリーニング検査が重要です。 子宮頸がん(子宮の下部のがん)の有無を調べるためのパパニコロウ検査などの細胞診またはヒト... さらに読む 子宮鏡検査 では、内視鏡(観察用の管状の機器)を腟から子宮内に挿入します。 ソノヒステログラフィー ソノヒステログラフィー 医師は、 スクリーニング検査を勧めることがあります。スクリーニング検査とは、症状がない人に対して病気の有無を調べるために行われる検査です。女性に生殖器系に関連する症状(婦人科疾患の症状)がある場合、症状を引き起こしている病気を特定するための検査( 診断目的の検査)が必要になることがあります。 婦人科領域では以下の2つのスクリーニング検査が重要です。 子宮頸がん(子宮の下部のがん)の有無を調べるためのパパニコロウ検査などの細胞診またはヒト... さらに読む ソノヒステログラフィー では、超音波検査中に子宮内に液体を注入し、異常を見つけやすくします。

これらの検査結果に異常があるか、結果がはっきりしない場合、次のような状況であれば医師は分析のために子宮内膜組織のサンプルを採取することがあります。

疑われる病気により、他の検査が行われることがあります。例えば、子宮頸がんを調べるために子宮頸部の生検が行われることがあります。

異常出血が通常の原因のいずれによるものでもなければ、ホルモンによる月経周期のコントロールの変化に関連している可能性があります。

性器出血の治療

女性に大量の出血がみられ、血圧も非常に低い場合は、血圧を回復させるために速やかに輸液を行い、必要に応じて輸血を行います。緊急事態が発生した場合は、しばしば腹腔鏡検査または開腹手術が必要になります。腹腔鏡検査では、医師はへそのすぐ下に小さな切開を入れ、そこから観察用の管状の機器(腹腔鏡)を挿入します。開腹手術では腹部により大きな切開が必要になります。どちらの方法でも、医師は臓器を直接観察して異常を調べることができます。

性器出血が別の病気によって起きている場合は、可能であればその病気を治療します。出血により鉄欠乏症を起こしている場合は、鉄サプリメントを投与します。

ホルモンによる月経周期のコントロールの変化に関連する異常子宮出血の治療には、 経口避妊薬 薬剤 薬剤 または他のホルモン剤を使用することがあります。

ポリープ、子宮筋腫、がん、一部の良性腫瘍は手術で子宮から摘出する場合があります。

高齢女性での重要事項:性器出血

閉経後出血(最後の月経から12カ月以上経過してから起こる出血)は比較的一般的ですが、必ず異常とみなされます。このような出血は、前がん状態(子宮内膜の肥厚など)またはがんを示唆している可能性があります。そのため、高齢女性でこのような出血がみられた場合、がんの可能性を否定するため、またはすぐに治療を開始するために速やかに医師の診察を受ける必要があります。

高齢女性で以下がみられる場合には、速やかに医師の診察を受ける必要があります。

  • 性器出血

  • ピンク色または茶色のおりもの(少量の血が混じっている可能性)

しかし、閉経後出血には、

最も一般的な原因は以下のものです。

  • 子宮内膜または腟粘膜の萎縮(閉経関連泌尿生殖器症候群)

その他の原因としては以下のものがあります。

  • エストロゲンまたは他のホルモン療法(特に使用を止めたとき)

  • 子宮頸管ポリープまたは子宮ポリープ

  • 子宮筋腫

  • 感染症

腟の組織が薄くなり乾燥している場合には、腟の診察には不快感を伴うことがあります。医師は診察の不快感を少なくするためより小さな器具(腟鏡)の使用を試みることがあります。

要点

  • 妊娠可能年齢では、異常な性器出血(不正出血)の最も一般的な原因は妊娠です。

  • 妊娠していない女性では、ホルモンバランスの崩れ(排卵障害)が最も一般的な原因であり、異常子宮出血を引き起こす可能性があります。

  • 異常子宮出血はホルモンによる月経周期のコントロールの変化により卵巣からの排卵が抑制されることと関連しています。

  • 小児では通常、異物またはけがが原因ですが、ときに性的虐待が原因のこともあります。

  • 妊娠可能年齢の場合、患者自身は妊娠している可能性はないと考えていても、妊娠検査が行われます。

  • 閉経後に性器出血が生じた場合は必ず、がんの可能性を否定するための評価が必要です。

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