最も一般的な原因は多発性硬化症です。
視力障害が生じることがあり、眼を動かすと痛むこともあります。
MRI(磁気共鳴画像)検査が行われます。
多発性硬化症の可能性がある場合は、コルチコステロイドが投与されることがあります。
(視神経の病気の概要 視神経の病気の概要 眼球後部の内側を覆っている網膜にある小さな視細胞は、光を感じとり、それを電気信号として視神経に送っています。左右の眼からつながる視神経は脳へ電気信号を送り、そこで視覚情報が解釈されます。 視神経またはその脳への経路(視覚路)の損傷は、視力障害につながります。脳内部における視交叉と呼ばれる部位で、左右の視神経はそれぞれ2つの線維に分かれ、そ... さらに読む も参照のこと。)
原因
視神経炎は、20~40歳の成人に最もよくみられます。 視神経炎の最も一般的な原因は 多発性硬化症 多発性硬化症(MS) 多発性硬化症では、脳、視神経、脊髄の髄鞘(ずいしょう)(ほとんどの神経線維を覆っている組織)とその下の神経線維が、まだら状に損傷または破壊されます。 原因は解明されていませんが、免疫系が自分の体の組織を攻撃する現象(自己免疫反応)が関与していると考えられています。 多発性硬化症の患者のほとんどは、健康状態が比較的良好な期間と症状が悪化する期間を交互に繰り返しますが、時間の経過とともに、多発性硬化症は徐々に悪化していきます。... さらに読む です。しかし、視神経炎患者の中には、多発性硬化症であったことが後から分かる人もいます。視神経炎は、ほかにも次のようなものが原因で起こります。
ウイルス性脳炎 脳炎 脳炎とは、ウイルスが脳に直接感染して起こることもあれば、ウイルスやワクチン、その他の物質が炎症を誘発して起こることもあります。炎症が脊髄に波及することもあり、その場合は脳脊髄炎と呼ばれます。 発熱、頭痛、けいれん発作が起こることがあり、眠気、しびれ、錯乱をきたすこともあります。 通常は頭部のMRI検査と腰椎穿刺が行われます。 治療としては、症状を緩和する処置が行われ、ときに抗ウイルス薬が用いられることもあります。... さらに読む (特に小児)、 髄膜炎 髄膜炎に関する序 髄膜炎とは、髄膜(脳と脊髄を覆う組織層)とくも膜下腔(髄膜と髄膜の間の空間)の炎症のことです。 髄膜炎は細菌、ウイルス、または真菌、感染症以外の病気、薬剤などによって引き起こされます。 髄膜炎の症状には、発熱、頭痛、項部硬直(あごを胸につけるのが難しくなる症状)などがありますが、乳児では項部硬直がみられない場合もあり、非常に高齢の人や免疫... さらに読む 、 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ Treponema pallidumという細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵されることがあります。 医師は通常、患者に梅毒があることを確認するために2種類の血液検査を... さらに読む
、 副鼻腔炎 副鼻腔炎 副鼻腔炎は副鼻腔の炎症で、多くはウイルスや細菌の感染またはアレルギーが原因です。 最もよくみられる症状は痛み、圧痛、鼻づまり、頭痛などです。 診断は症状に基づいて下されますが、ときにCT検査などの画像検査が必要になることもあります。 原因となっている細菌感染症は抗菌薬で根治させることができます。 副鼻腔炎は最も多い病気の1つです。副鼻腔炎は、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつ... さらに読む 、 結核 結核 結核は、空気感染する細菌である結核菌 Mycobacterium tuberculosisによって引き起こされる、感染力の強い慢性感染症です。通常は肺が侵されます。 結核に感染するのは、主に活動性結核の患者によって汚染された空気を吸い込んだ場合です。 最もよくみられる症状はせきですが、発熱や寝汗、体重減少、体調不良を感じるこ... さらに読む
、 ヒト免疫不全ウイルス ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む
(HIV)などの感染症
視神経へ波及した悪性腫瘍
鉛、メタノール、キニーネ、ヒ素、一部の抗菌薬などの化学物質または薬
ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質自己抗体(MOG-IgG)疾患
まれな原因として、 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に産生しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 神経を損傷し、知覚に問題が生じます。 血管を損傷し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、視力障害のリスクが高まります。... さらに読む 、悪性貧血、一部の自己免疫疾患、眼窩(がんか)を侵すバセドウ病(甲状腺眼症)、ハチの刺傷、けがなどがあります。しかし多くの場合、視神経炎の原因は不明です。
症状
視神経炎は片眼のみに生じることもあれば両眼に生じることもあり、軽度から重度の視力障害を引き起こします。視力障害は1~2日間にわたって続くことがあります。視力への影響は様々で、ほぼ正常のこともあれば完全に失明する場合もあります。場合によっては特に色覚が影響を受けますが、本人は気づかないこともあります。ほとんどの場合、軽度の眼の痛みがみられ、眼を動かすと悪化するようにしばしば感じられます。視力は通常2~3月以内に回復しますが(原因によって変わります)、完全に回復するとは限りません。一部の人では視神経炎が繰り返し起こります。
診断
医師による評価
通常はMRI検査
診断の際には、瞳孔の反応を検査し、ライトの付いた拡大鏡(検眼鏡)で眼の奥を観察します。眼球の奥にある視神経の頭部(視神経乳頭)が腫れて見えることがあります。視野検査により、視野が一部欠損していることが分かる場合があります。MRI検査では、 多発性硬化症 多発性硬化症(MS) 多発性硬化症では、脳、視神経、脊髄の髄鞘(ずいしょう)(ほとんどの神経線維を覆っている組織)とその下の神経線維が、まだら状に損傷または破壊されます。 原因は解明されていませんが、免疫系が自分の体の組織を攻撃する現象(自己免疫反応)が関与していると考えられています。 多発性硬化症の患者のほとんどは、健康状態が比較的良好な期間と症状が悪化する期間を交互に繰り返しますが、時間の経過とともに、多発性硬化症は徐々に悪化していきます。... さらに読む 、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質自己抗体(MOG-IgG)疾患、まれに視神経を圧迫している腫瘍の徴候が見つかることがあります。神経症状のある人では、脊髄の画像検査が行われることがあります。
治療
ときにコルチコステロイド
腫瘍に対し、圧迫の緩和
多発性硬化症 多発性硬化症(MS) 多発性硬化症では、脳、視神経、脊髄の髄鞘(ずいしょう)(ほとんどの神経線維を覆っている組織)とその下の神経線維が、まだら状に損傷または破壊されます。 原因は解明されていませんが、免疫系が自分の体の組織を攻撃する現象(自己免疫反応)が関与していると考えられています。 多発性硬化症の患者のほとんどは、健康状態が比較的良好な期間と症状が悪化する期間を交互に繰り返しますが、時間の経過とともに、多発性硬化症は徐々に悪化していきます。... さらに読む の可能性がある場合などは、視神経炎の治療のためにコルチコステロイドを静脈内に投与することがあります。数日後、コルチコステロイドを経口で投与します。コルチコステロイドは回復を速め、再発の可能性を低下させます。視神経炎が多発性硬化症または感染症に関連している場合は、その病態も治療する必要があります。
視神経を圧迫している腫瘍がある場合は、通常、腫瘍による圧力を取り除くことで視力が回復します。
視力障害のある人が利用できる補助具(ロービジョンエイド)として、ルーペ、拡大読書器、音声付き腕時計などがあります。