涙道狭窄には出生時から存在する(先天性)ものと、出生後に生じる(後天性)ものがあります。 どちらのタイプも、流涙(りゅうるい)または涙嚢(るいのう)の感染症(涙嚢炎 涙嚢炎 涙嚢(るいのう)炎は、涙嚢の感染症で、通常は涙道(鼻涙管)の閉塞により生じます。 涙嚢は、眼から排出された涙が流れ込む小さな袋状の器官です。涙嚢炎は通常、涙嚢から鼻へと続く鼻涙管がふさがることで起こります。 涙嚢炎には、急性の場合(突然発症する)と、慢性の場合(長く持続する)があります。 たいていの場合、涙嚢炎は軽症です。ときに、感染が重症化すると発熱することがあります。ときに、膿のたまり(膿瘍[のうよう])ができて皮膚を貫通し、そこか... さらに読む )につながることがあります。
先天性涙道狭窄
先天性涙道狭窄は、鼻涙管の一部が十分に発達していないときに生じることがあります。最も多いのは、鼻涙管の鼻側の閉塞です。鼻涙管が閉塞することにより、涙があふれ頬を伝わり落ちたり(流涙症)、常に目やにのかたまりがみられたりします。片眼のみにみられることもあれば、両眼にみられることもあります。
多くは生後3~12週間頃に発見されます。このタイプの閉塞は、多くの場合、特に治療を行わなくても、鼻涙管が発達するに従って解消され、生後6~9カ月頃までには自然に完治します。閉塞を緩和するため、乳児の涙嚢を1日4~5回手でマッサージすることを1歳前後まで続けるよう、親に勧めることがよくあります。
閉塞が1歳前後までに解消しない場合は、耳、鼻、のどの専門医(耳鼻咽喉科医)または眼の専門医(眼科医)が細い管状の器具(ゾンデやブジーと呼ばれる)で鼻涙管を開通させる処置を行う必要があります。通常は、目がしらにある開口部(涙点)からこの器具が挿入されます。小児にこの処置を行う場合は、通常、全身麻酔をかけます。
涙はどこから来るのか
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後天性涙道狭窄
後天性涙道狭窄は、加齢による管の狭窄が原因であることが多いですが、 けがまたは手術後の瘢痕(はんこん)化によっても生じます。また、 サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスとは、体の多くの器官に炎症細胞の異常な集積(肉芽腫[にくげしゅ])がみられる病気です。 サルコイドーシスは、一般に20~40歳で発生し、スカンジナビア系の人やアフリカ系アメリカ人に最も多くみられます。 多くの器官が侵される可能性がありますが、肺に最もよくみられます。... さらに読む または 多発血管炎性肉芽腫症 多発血管炎性肉芽腫症 多発血管炎性肉芽腫症はしばしば、鼻、副鼻腔、のど、肺、または腎臓の、小型や中型の血管や組織の炎症から始まります。 原因は不明です。 通常、この病気は、鼻出血、かさぶたによる鼻づまり、副鼻腔炎、声がれ、耳の痛み、中耳にたまる体液、眼の充血と痛み、呼気性喘鳴、せきで始まります。 その他の臓器が侵されることもあり、ときには腎不全などの重篤な合併症が起こります。 症状やその他の所見からこの病気の可能性が疑われますが、診断を確定するには通常、生検... さらに読む
(以前のウェゲナー肉芽腫症)などの炎症を伴う病気が原因で起こることもあります。先天性涙道狭窄で行われるような単純なブジーの挿入は、一般的に無効です。涙道狭窄が持続し、煩わしい流涙が続く場合や感染を繰り返す場合には、涙嚢と鼻の間に通路を設けるための手術(涙嚢鼻腔吻合術[DCR])が必要になることがあります。