声帯の接触性潰瘍

執筆者:Clarence T. Sasaki, MD, Yale University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 1月
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声帯の接触性潰瘍は、声帯がつながっている軟骨を覆う粘膜にびらんが生じ、ヒリヒリと痛む状態です。

声帯の接触性潰瘍は、力をこめた話し方で(特に話し始めるとき)声を使いすぎることが一般的な原因です。この潰瘍は一般的に歌手、教師、牧師、営業担当者、弁護士など、人に話をすることが求められる職業や、他の形で声をよく使う職業の人にみられます。声帯の接触性潰瘍は肉芽腫(炎症によって生じる免疫細胞の集まり)の中にできることがあります。

胃酸の逆流(胃食道逆流症[GERD])も声帯の接触性潰瘍の原因になったり接触性潰瘍を悪化させたりします。

気管挿管(全身麻酔中などに合成樹脂製の呼吸用チューブを口や鼻から気管に挿入する手技)の際にチューブが太すぎる場合、声帯の接触性潰瘍が生じることがあります。

知っていますか?

  • 胃食道逆流症による胃酸の影響で、声帯に潰瘍が生じることがあります。

話したりものを飲み込んだりすると軽い痛みが生じる、声がかれる(軽いものからひどいものまで様々)といった症状がみられます。

声帯の接触性潰瘍の診断

  • 内視鏡による直接視診

  • ときに生検

医師は声帯を内視鏡(観察用の柔軟な細い管状の機器)で診察すること(喉頭鏡検査)で声帯の接触性潰瘍の診断を下します。

潰瘍ががん(悪性腫瘍)や結核によるものではないことを確かめるために、ときに小さな組織片を採取し、顕微鏡検査を行うこともあります(生検)。

声帯の接触性潰瘍の治療

  • 声を休める

  • 音声治療

  • 胃食道逆流症に対して、制酸薬の服用、就寝時間近くにものを食べない、就寝中は頭を高くする

  • ときに抗菌薬

声帯の接触性潰瘍の治療としては、最低6週間はできるだけ話をせずに、声を休めることで潰瘍の治癒を促します。ささやき声で話すとさらに声帯を痛めることがあるため、これも避ける必要があります。

再発を予防するために、接触性潰瘍の患者は、音声治療を受けて適切な発声法を学ぶ必要があります。そういった指導は言語療法士から受けることができます。

胃食道逆流症の治療は、声帯の接触性潰瘍を改善します。典型的な方法として、制酸薬を内服し、寝る前の2時間は何も食べず、頭を高くして寝るようにします。

潰瘍が治癒しつつある間に抗菌薬を使用すれば細菌感染症の予防に役立ちます。

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