のどの感染症

(咽頭炎、扁桃炎、扁桃咽頭炎)

執筆者:Alan G. Cheng, MD, Stanford University
レビュー/改訂 2022年 5月
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やさしくわかる病気事典

のどや扁桃の感染症はよくみられ、特に小児に多くみられます。

  • のどの感染症の原因は通常はウイルスですが、レンサ球菌などの細菌が原因になる場合もあります。

  • 症状としては、ものを飲み込むときの激しい痛み、扁桃の赤みと腫れなどがあります。

  • 診断は、のどの診察結果に基づいて下されます。

  • 治療しないでいると、細菌による扁桃・咽頭炎は扁桃周囲膿瘍になることがあります。

  • 痛みは鎮痛薬で緩和し、レンサ球菌感染症は抗菌薬で治療します。

  • ときに扁桃を手術で摘出しなければならないことがあります。

扁桃には体を守る免疫系に属するリンパ組織が含まれています。そのため、扁桃および咽頭の近くの組織には、鼻やのどに入ってきた微生物がしばしば感染します。

扁桃の摘出を受けた患者でも、咽頭の感染症にかかる可能性はあります。

のどの感染症の原因

のどの感染症の原因は、通常はウイルスです。ほとんどの場合は、かぜを引き起こすウイルスの一種で、例えばライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどです。まれにそれ以外のウイルス、例えばエプスタイン-バーウイルス(伝染性単核球症の原因)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)などが原因となることもあります。

患者の3分の1未満で、のどの感染症が細菌感染によって生じます。細菌性の原因で最も多いのはA群レンサ球菌(レンサ球菌咽頭炎)で、通常は5~15歳の小児でみられます。レンサ球菌咽頭炎は3歳未満の小児と高齢者ではあまりみられません。レンサ球菌咽頭炎を治療しなければ、ときに合併症が発生します。合併症には、扁桃周囲炎または扁桃周囲膿瘍リウマチ熱腎臓の炎症(糸球体腎炎)などがあります。まれに、淋菌感染症やジフテリアなどの細菌感染症がのどの感染症を引き起こすこともあります。

のどの感染症の症状

のどの感染症では、ものを飲み込むときと、通常は話すときにも、ひどい痛みがあります。ときに、耳に痛みが及ぶこともあります。一部の患者では発熱、頭痛、胃の不調がみられます。扁桃が赤く腫れ、ときに扁桃に白い斑点がみられることがあります。首のリンパ節が腫れて、触ると痛むこともあります。

扁桃の感染が頻繁に起こる患者では、扁桃にある正常な小さな穴が、小石のような白い分泌物の固まりで満たされることがあります。この石に、匂いのもとになる細菌がとどまることがあり、慢性的な悪臭を引き起こし、その後の扁桃炎が生じやすくなることがあります。

かぜを引き起こすウイルス感染症の患者では、鼻水、鼻づまり、せきがよくみられます。伝染性単核球症の患者は、しばしば極度の疲労を感じ、多くのリンパ節が腫れ、扁桃の腫れが悪化して呼吸の際に空気がせき止められるようになり、呼吸音が大きくなります。

のどの感染症の診断

  • 医師による評価

  • ときに、レンサ球菌咽頭炎がないか確認するための検査

医師はのどを観察することでのどの感染症を確認します。しかし、ウイルス感染症と細菌感染症では多くの場合のどの外見に違いはないため、のどを見るだけで原因がウイルス感染症か細菌感染症かを判断することは困難です。ただし、鼻水とせきがみられる患者はウイルス感染症である可能性が高まります。

レンサ球菌咽頭炎(一般的に抗菌薬で治療します)の特定はしばしば重要視されるため、医師は患者ののどを綿棒でこすり、レンサ球菌を特定するための検査を行うことがあります。一般的には、ほとんどの小児に対して検査を行いますが、成人の場合は、扁桃の白い斑点(扁桃の滲出液)、首のリンパ節の腫れと圧痛、発熱があり、せきがみられないなど、特定の基準を満たしている場合にだけ検査を行います。しかし、検査を行うべきタイミングや、抗菌薬を投与すべきタイミングについてさえ、すべての専門医の間で意見が一致しているわけではありません。

のどの感染症の治療

  • 痛み止め(鎮痛薬)

  • レンサ球菌咽頭炎に対して、抗菌薬

  • ときに、手術による扁桃の摘出

のどの感染症では、アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛薬の内服薬が、痛みの軽減にしばしば役立ちます。温かい塩水でのうがいがよく推奨されていますが、効果が証明されているわけではありません。医師によってはコルチコステロイドの一種であるデキサメタゾンの単回投与を追加することがあり(特に症状が重い場合)、デキサメタゾンによって症状の持続期間が短縮することがあります。この注射は伝染性単核球症による気道の閉塞を緩和するのに役立つこともあります。

レンサ球菌感染症の患者には、抗菌薬(通常はペニシリンかアモキシシリン)が投与されます。ペニシリンに対してアレルギーがある場合は、クリンダマイシンが投与されることがあります。

扁桃摘出術

扁桃に繰り返しレンサ球菌感染が起こる患者に対し、米国のガイドラインでは扁桃の除去(扁桃摘出術)が推奨されています。

典型的には、扁桃摘出術が必要なのは小児で、感染症が1年で7回以上ある場合、2年間毎年5回以上ある場合、または3年間毎年4回以上ある場合などに必要です。抗菌薬で治療しても重度の急性感染症が長引く小児、かなりの閉塞(閉塞性の睡眠障害など)もしくは繰り返し起こる扁桃周囲膿瘍がある小児、またはがんが疑われる小児では、扁桃摘出術が検討されます。

成人の場合、扁桃摘出術を行うタイミングについてこうした具体的な基準は設けられていません。しかし、扁桃の石によるひどい口臭がある成人に対し、扁桃摘出術が行われることがあります。

小児でも成人でも、医師は扁桃摘出術を勧めるどうかの判断に際し、個人差を考慮します。

扁桃摘出術には多くの効果的な方法があります。医師はメスや電気焼灼装置を使うこともあれば、高周波で扁桃を破壊することもあります。

2%未満の患者(小児より成人が多い)で、扁桃摘出術の合併症として出血が起こります。出血は一般的に、手術から24時間以内または約7日後に起こります。扁桃摘出術の後に出血がある患者は、病院に行くべきです。

扁桃の部分切除術は、扁桃炎がのどの閉塞を引き起こしている患者に行われることがあります。特殊なハサミのほか、レーザー、高周波、電気焼灼装置などの機器で扁桃を削り取ることにより、大きくなった扁桃の一部を取り除くことができます。いびきや睡眠の妨げの原因になっている気道閉塞を緩和する点で、完全な扁桃摘出術と同程度の効果があります。扁桃が増大して元に戻ることは通常ありません。

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