声帯ポリープは、急性の損傷(アメリカンフットボールの試合で叫ぶことなどで起こる)によって生じることが多く、一般的には片側の声帯にのみ生じます。ほかにもいくつかの原因があり、具体的には胃食道逆流症や慢性的な刺激物の吸入(例えば工場からの煙霧やタバコの煙)などがあります。これらの原因によるポリープは、両側の声帯に発生する傾向があります。ポリープは結節よりも大きくなり突出する傾向があります。ポリープは成人でよくみられます。
声帯結節は両側の声帯に生じ、主に慢性的な声の使いすぎ(よく叫ぶ、歌唱、大声を出す、不自然に低い声を使うなど)が原因で起こります。結節は小児にも起こります。
声帯肉芽腫(炎症によって生じる免疫細胞の集まり)は多くの場合、コントロールできない 胃食道逆流症 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。 診断は症状のほか、ときに食道pH検査の結果に基づいて下されます。 引き金になる物質(アルコールや脂肪分の多い食物など)を避け、胃酸を減ら... さらに読む (GERD)または気管挿管(合成樹脂製の呼吸用チューブを口から気管に挿入する手技)の際の損傷によって声帯が傷ついた結果生じます。肉芽腫は成人でよくみられます。
声帯乳頭腫(再発性呼吸器乳頭腫症 再発性呼吸器乳頭腫症 再発性呼吸器乳頭腫症は呼吸器系のまれな良性の(がんではない)腫瘍で、一般的には喉頭(こうとう)にできます。 再発性呼吸器乳頭腫症は ヒトパピローマウイルス(HPV)(皮膚のいぼや尖圭コンジローマを引き起こすウイルス)が原因で起こります。母親の性器周辺にHPV感染症がある場合、乳児は産道を通過する際にこのウイルスに感染する可能性があります。 気道のHPV感染は、 喉頭の周囲や気管内に複数のいぼのような増殖病変を引き起こすことがあります。こ... さらに読む も参照)は、特定の ヒトパピローマウイルス ヒトパピローマウイルス感染症(HPV感染症) ヒトパピローマウイルス(HPV)は、いぼの原因になります。HPVの中には皮膚にいぼを作り出すものもあれば、性器のいぼ(腟、陰茎、または直腸の内部や周囲に生じるできもので、尖圭コンジローマと呼ばれます)の原因になるものもあります。一部の種類のHPVに感染すると、がんになることもあります。HPVは性感染症です。 ヒトパピローマウイルス(HPV)の種類が違えば、引き起こされる感染症も異なります。例えば、性器にできる、目で見て確認しやすいいぼも... さらに読む (HPV)により引き起こされる、がんではないいぼ状の増殖性病変です。このウイルスが出産時に感染することがあり、増殖性病変は1~4歳で発生することが最も多いですが、いつでも発生する可能性があります。初期の徴候は声がれや弱々しい泣き声ですが、ときに増殖性病変が気道をふさぎ、呼吸を妨げることがあります。
声帯の異常
リラックスした状態では、正常な声帯はV字型に開いていて、空気が気管へと自由に通ることができます。声帯は空気が肺に吸い込まれる(吸気)ときに開き、ものを飲み込んだり、話したりしているときに閉じます。 専門的な訓練を受けた医師はたいてい、患者の口の奥に鏡を入れ、声帯を見ることで問題(接触性潰瘍、肉芽腫、ポリープ、結節、麻痺、がんなど)がないか調べることができます。これらの問題はすべて声に影響を与えます。麻痺は片側に生じる場合と両側(図には示されていません)に生じる場合があります。 |
症状
声帯結節、声帯ポリープ、声帯肉芽腫の症状としては、慢性的な声がれや息が漏れるようなかすれ声などがあり、これらは数日から数週間かけて現れる傾向があります。
診断
鏡または内視鏡による視診
ときに生検
医師は声帯を鏡または内視鏡(観察用の柔軟な細い管状の機器)で診察すること(喉頭鏡検査)で声帯結節、声帯ポリープ、声帯肉芽腫、声帯乳頭腫の診断を下します。
ときに、乳頭腫を診断し、病変ががん(悪性)ではないことを確かめるために、小さな組織片を採取して顕微鏡で調べることもあります(生検)。
治療
声を休める
ときに音声治療
ときに手術
声帯結節、声帯ポリープ、声帯肉芽腫の治療は、喉頭を刺激するものをすべて避け、声を休めることです。声の使いすぎが原因の場合には、言語療法士による音声治療を受け、声帯にあまり負担をかけずに話したり歌ったりする方法を学ばなければならないことがあります【訳注:日本では言語聴覚士が言語と聴覚の専門資格に相当します】。言語療法士は、コンピュータベースの訓練プログラムを使用して、過度の大声や声の緊張を避ける訓練を行うことがあります。職業上声を使う人にはさらに、十分な水分補給と食習慣の変更を指導することもあります。
大半の結節と肉芽腫は、治療を行わなくても自然に治ります。自然に治らない肉芽腫は手術で切除できますが、再発する傾向があります。
ほとんどのポリープは、本来の声を取り戻すために手術で切除する必要があります。
喉頭乳頭腫には手術またはレーザー治療が行われます。重症の場合は抗ウイルス薬が投与されることがあります。 HPVワクチン ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、 HPVの中でも以下の病態を引き起こす可能性が非常に高い株による感染の予防に役立ちます。 女性の 子宮頸がん、 腟がん、 外陰がん 男性の 陰茎がん 肛門がん 尖圭コンジローマ さらに読む の接種で発症を予防することができます。