しばしば首にしこりができ、患者は耳に詰まったような感覚や痛みを感じたり、難聴になったりすることがあります。
診断には生検が必要で、がんの広がりを調べるために画像検査が行われます。
治療では放射線療法と化学療法、ときに手術が行われます。
(口、鼻、のどのがんの概要 口、鼻、のどのがんの概要 口、鼻、のどのがんは、米国では毎年ほぼ6万5000人に発生しています。これらのがんは、女性喫煙者より男性喫煙者の数が多い状況が続いており、男性の方が口内の ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の頻度が高いため、男性で多くみられます。患者の大部分は50~70歳です。しかし、HPVを原因とするがん(主に... さらに読む も参照のこと。)
上咽頭は、鼻腔の奥にある領域で、軟口蓋の上からのどの上部までが含まれます。上咽頭がんのほとんどは扁平上皮がんで、これは上咽頭を覆っている扁平上皮細胞から発生するがんです。
上咽頭がんは、あらゆる年齢層にみられます。北米ではまれですが、上咽頭がんは中国人(特に中国南部の人)と東南アジア系の人で最も一般的ながんの1つです。また、北米に移住した中国人には、他の米国人より多くみられます。米国生まれの中国人では、移民でやってきた親や祖父母たちに比べると少なくなっています。
伝染性単核球症の原因となる エプスタイン-バーウイルス 伝染性単核球症 エプスタイン-バーウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。 この ウイルスはキスを介して広がります。 症状は様々ですが、最も多いのは極度の疲労感、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れです。 血液検査を行って診断を確定します。 アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は発熱と痛みを和らげます。 さらに読む が、上咽頭がんの発生に関与しています。遺伝的な素因もあります。さらに、塩漬けの魚や亜硝酸化合物で保存する食品を多く食べている小児や若い成人も上咽頭がんを発症しやすくなっています。
上咽頭の位置
![]() |
症状
ほとんどの場合、上咽頭がんはまず首の リンパ節 リンパ器官 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守るために、免疫系が備わっています。侵入物には以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕[ぜん]虫など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む に転移し、他の症状の前に首のしこりが現れます。ときに、最初に鼻や耳管の持続的な閉塞によって、耳(特に片耳)に詰まったような感じや痛み、難聴が起こることがあります。耳管が閉塞すると中耳に液体がたまります。また、耳の痛み、顔の腫れ、鼻からの膿性または血性の分泌物、 リンパ節の腫れ リンパ節の腫れ リンパ節は、小さな豆型の器官で、 リンパ液をろ過します。リンパ節は体中に分布していますが、特に首、わきの下、鼠径部の皮膚の下に集まっています。リンパ節は、感染やがんの拡大を阻止する身体の防御機構の1つである リンパ系の一部です。( リンパ系の概要も参照のこと。) リンパ液は、血管から細胞の間隙に滲出した水分、 白血球、タンパク質、脂肪で構成される透明な液体です。この液体の一部は血管に再吸収され、残りはリンパ管に入ります。リンパ液は、損傷... さらに読む 、鼻出血が起こることもあります。顔の一部や片目が麻痺する場合もあります。
診断
内視鏡検査
生検
画像検査
上咽頭がんの診断を下すには、まず上咽頭を特殊な鏡や内視鏡(観察用の柔軟な細い管状の機器)で診察します。腫瘍が見つかった場合、医師は腫瘍の生検により、組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べます。頭蓋骨の底部の CT検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む と頭、上咽頭、頭蓋骨の底部の MRI検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるよう... さらに読む
により、がんがどこまで広がっているかを調べます。 PET(陽電子放出断層撮影)検査 PET(陽電子放出断層撮影)検査 PET(陽電子放出断層撮影)検査は 核医学検査の一種です。放射性核種とは放射線を出す元素のことで、エネルギーを放射線の形で放出することで、安定した状態になろうとする原子です。放射性核種の多くは高いエネルギーの光子をガンマ線の形で放出しますが、PET検査では陽電子と呼ばれる粒子を放出する放射性核種を使用します。 PET検査では、体内で使用(代謝)されるグルコース(ブドウ糖)や酸素などの物質を... さらに読む
もがんの広がりと首のリンパ節を評価するためによく行われます。
予後(経過の見通し)
早期に治療を行えば上咽頭がんの予後(経過の見通し)は大きく改善します。早期の場合、約60~75%は予後が良好で診断後5年以上生存します。IV期のがん患者が診断後5年以上生存する確率は40%未満です。
治療
放射線療法
化学療法
ときに手術
上咽頭がんでは、上咽頭の腫瘍を手術で切除するのが非常に難しいため、治療は 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む と 化学療法 化学療法 化学療法では、薬を使ってがん細胞を破壊します。正常な細胞は傷つけずに、がん細胞だけを破壊する薬が理想的ですが、大半の薬はそれほど選択的ではありません。その代わりに、一般的には細胞の増殖能力に影響を与える薬を用いることで、正常な細胞よりがん細胞に多くの損傷を与えるよう設計された薬が使用されます。無秩序で急速な増殖ががん細胞の特徴です。しかし正常な細胞も増殖する必要があり、なかには非常に速く増殖するもの(骨髄の細胞や口または腸の粘膜の細胞な... さらに読む により行います。腫瘍が再発した場合、放射線療法を再度行うか、非常に特殊な状況では手術を試みることがあります。しかし、この手術は複雑なもので、一般的には頭蓋骨の底部を部分的に切除しなければなりません。この手術はときに、内視鏡を使って鼻から行われることがあります。一部の症例では、この方法で体により負担のかかる手術と同等の効果が得られ、合併症が起こることも少なくなります。
さらなる情報
米国がん協会(American Cancer Society):上咽頭がん