(皮膚の良性腫瘍の概要 皮膚の良性腫瘍の概要 皮膚やその下の組織(皮下組織)の細胞が増殖して、腫瘍ができることがあります。腫瘍は隆起したものもあれば、平らなものもあり、暗褐色、黒色、肌色、赤色など、色は様々 です。生まれつきみられる場合もあれば、生まれた後に発生する場合もあります。 腫瘍の成長が抑えられていて、腫瘍細胞が体の他の部分に広がっていかない場合は、その皮膚の増殖物(腫瘍)は... さらに読む と 脈管の増殖と奇形の概要 脈管の増殖と奇形の概要 脈管の増殖や奇形とは、血管やリンパ管(脈管)が皮膚の内部や皮膚の下で異常に密集した状態で、そのために皮膚が赤色や紫色に変色します。 脈管の増殖や奇形の多くは、出生時または出生後すぐに生じます。 通常、このような増殖や奇形の診断は、その典型的な外観から下されます。 治療法は増殖や奇形の種類によって異なります。 ( 皮膚の良性腫瘍の概要も参照のこと。) さらに読む も参照のこと。)
乳児期の血管腫は非常によくみられます。中年以降にも、特に体幹に生じることがあります。
乳児期の血管腫(イチゴ状血管腫とも呼ばれる)
この種の血管腫は乳児期の腫瘍として最も多いものであり、生後1年までの乳児の10~12%にみられます。乳児の血管腫は、生後すぐにできて1年の間に急速に大きくなり、12~18カ月後に縮んでいきます。血管腫の約70%は7歳になるまでに消えますが、しばしば皮膚にはわずかな変色または瘢痕が残ります。
乳児の血管腫は皮膚の中またはその下に生じます。これができると皮膚は隆起し、鮮紅色に変色します。できた部分がかなり深いと、青味がかって見えることもあります。深部血管腫の多くは直径5ミリメートルから5センチメートル程度の大きさになりますが、これよりはるかに大きくなる場合もあります。半数以上は頭頸部にできます。肝臓などの内臓にできることもあります(肝臓の血管腫 肝臓の血管腫 肝血管腫は、異常な血管が集まってできる肝臓の良性腫瘍です。 ( 肝腫瘍の概要も参照のこと。) 米国では、成人の約1~5%に無症状の小さな肝血管腫がみられます。この種の腫瘍は、別の理由で超音波検査、CT検査、またはMRI検査が行われた際に発見されるのが通常です( 肝臓と胆嚢の画像検査を参照)。治療の必要はありません。 肝血管腫では、ごくまれにしか症状は起こりません。血管腫が約4センチメートルより大きくなると、症状が現れる可能性が高くなりま... さらに読む を参照)。
乳児の血管腫では痛みはありませんが、ときに破れて(潰瘍化)出血することがあります。眼の周囲にできた血管腫が大きくなって視界をふさぐことがあり、治療をしないと永続的な視力障害につながります。血管腫が鼻やのどをふさぐこともあり、その場合は呼吸が妨げられます。
血管腫が鼻やのど、または他の重要な構造をふさいでいると考えられる場合は、 MRI検査 MRI検査 MRI検査は、強い磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強い磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置の中で発生するような強い磁場の中に... さらに読む を行うことがあります。
典型的には、乳児の血管腫は次第に小さくなって10歳になるまでに消失します。乳児の血管腫は自然に消えることが多いため、現れても、急成長したり、視界や呼吸を妨げたり、潰瘍化したり、美容的に問題になったりする場合以外は治療しないこともあります。
乳児の血管腫に治療が必要な場合は、コルチコステロイドを処方して、皮膚に塗ったり、注射したり、内服させたりします。 レーザー治療 皮膚の異常に対するレーザー治療 やプロプラノロールの外用または内服も行われます。潰瘍化した場合は、湿布、傷に塗る外用薬、およびドレッシングによって治療します。血管腫の大部分は自然に消え、放置しておいた方が瘢痕が残りにくいため、外科的切除は通常推奨されません。年長の小児で、血管腫が小さくなりそれ以上縮まらなくなった場合は、手術により皮膚の外観を改善できることがあります。
サクランボ色血管腫
サクランボ色血管腫は成人に非常によくみられます。通常は、赤く盛り上がった血管の増殖が体幹に生じ、数個から数十個に及ぶことがあります。
サクランボ色血管腫は無害です。もし気になる場合は電気針やメスで切除できます。