菌血症は、日常的な行為(激しい歯磨きなど)、歯科的または医学的処置、もしくは感染症(肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む や 尿路感染症 尿路感染症(UTI)の概要 健康な人では、膀胱の中にある尿は無菌(細菌などの感染性の微生物が存在しない状態)です。尿が膀胱から体外へと排出されるまでの通路(尿道)にも、感染症を引き起こす細菌はほとんど存在していません。しかし、尿路のどの部分にも感染が起こる可能性はあり、尿路で発生した感染症は尿路感染症(UTI)と呼ばれています。... さらに読む )が原因で起きることがあります。
人工関節や人工心臓弁を使用している人や心臓弁に異常がある人では、菌血症が長引くリスクや菌血症で症状が生じるリスクが高まります。
菌血症では通常、症状はみられませんが、ときに特定の組織や臓器の中で細菌が増殖して、重篤な感染症を引き起こすことがあります。
菌血症による合併症のリスクが高い場合には、歯科的または医学的処置を受ける前に抗菌薬を使用します。
(菌血症、敗血症、敗血症性ショックに関する序 菌血症、敗血症、敗血症性ショックに関する序 菌血症、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックは、互いに関連しています。 菌血症:血流中に細菌が存在している状態です。 菌血症は、重篤な感染症の結果として起こることもあれば、激しい歯磨きのように無害そうな行為が原因で起こることもあります。たいていは少数の細菌が存在するのみで、それらも体内から自然に除去されます。そのような場合、大半の人では症... さらに読む および 潜在性菌血症 潜在性菌血症 潜在性(隠れた)菌血症とは、小児に発熱がみられるものの具合が悪そうに見えず、明らかな感染源がないのに、血液中に細菌が存在している状態をいいます。 ほとんどの場合、潜在性菌血症の原因菌は肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)です。 典型的には、小児では発熱以外の症状はありません。 診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 肺炎球菌(Streptococcus... さらに読む も参照のこと。)
通常、特に日常的な行為が原因の場合には、細菌が少量しか存在せず、免疫系の働きによって血液中から速やかに排除されるため、菌血症が感染症を引き起こすことはありません。しかし、特に免疫機能が低下している状況では、細菌が長期にわたって存在し、数も多くなることがあり、このような場合には、菌血症が引き金となって、ほかの感染症や 敗血症 敗血症と敗血症性ショック 敗血症は、 菌血症やほかの感染症に対する重篤な全身性の反応に加えて、体の重要な臓器に機能不全が起きている状態です。敗血症性ショックは、敗血症のために生命を脅かすほどの血圧の低下( ショック)と臓器不全が起きている病態です。 通常、敗血症は特定の細菌に感染することで起こり、病院内での感染が多くみられます。 免疫系の機能低下、特定の慢性疾患、人工関節や人工心臓弁の使用、特定の心臓弁の異常といった特定の条件に当てはまると、リスクが高くなります... さらに読む と呼ばれる全身性の重篤な反応が起こる可能性があります。
免疫系によって排除されなかった細菌は、全身の様々な部位に蓄積し、そこで感染症を引き起こします。具体的な部位は次の通りです。
菌血症になると、細菌が体内の特定の構造物(異常が起きた心臓弁など)に引っかかり、そこに蓄積することがあります。特に細菌が蓄積しやすいのは、静脈内のカテーテル、人工関節、人工心臓弁など、体内に設置された人工物です。このような細菌の集まり(コロニー)はその部位に付着し続け、連続的または周期的に血流へ細菌を放出します。
菌血症の原因
菌血症は以下のような場合に発生します。
特定の日常的な行為
歯科的または医学的な処置
特定の細菌感染症
レクリエーショナルドラッグの注射
日常的な行為によって、健康な人で菌血症が起きる場合があります。例えば、激しく歯磨きを行うと、歯ぐきに存在する細菌が血流に入ってしまい、これが菌血症の原因となることがあります。食べものの消化の際に、腸から血流に細菌が入ることもあります。日常的な行為が原因の場合、菌血症から感染症になることはまれです。
歯科的または医学的処置が菌血症につながることもあります。歯科処置(歯科衛生士による歯の清掃など)の際に、歯ぐきで生息していた細菌が剥がれて、血流に入ることがあります。カテーテルを膀胱に挿入した場合や、チューブを消化管や尿路に挿入した場合にも、菌血症が起こる可能性があります。細菌はカテーテルやチューブが挿入された部位(膀胱や腸)にも存在している可能性があるため、たとえ無菌的な手法が用いられても、これらの処置で細菌が血流の中に入ってしまうことがあります。感染を起こした傷口、膿瘍(膿がたまった空洞)、床ずれなどに対する外科的処置によっても、感染部位から細菌が剥がれて、菌血症が発生する場合があります。
一部の細菌感染症(肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む や 皮膚膿瘍 毛包炎と皮膚膿瘍 毛包炎と皮膚膿瘍は、細菌感染の結果として皮膚の中の空洞に膿がたまった状態です。浅いものもあれば、深いものがあり、毛包だけに生じることもあれば、皮膚のさらに深い部分まで及ぶこともあります。 ( 皮膚細菌感染症の概要も参照のこと。) 毛包炎は毛包に生じる小さな皮膚膿瘍の一種です。膿瘍は、皮膚の表層とより深い部分のいずれにも生じ、必ずしも毛包炎を伴いません。 皮膚膿瘍の大半は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus... さらに読む など)では、細菌が周期的に血流に入って、菌血症を引き起こすことがあります。一般的にみられる小児期の細菌感染症の多くは、菌血症を引き起こします。
レクリエーショナルドラッグ(娯楽目的で使用される薬物)の注射も、通常は針が細菌に汚染されていて、使用者が皮膚を適切に消毒せずに注射することがあるため、菌血症の原因になります。
菌血症の症状
歯科処置などの普通の出来事が原因の菌血症は、通常は一時的なもので、症状は起こりません。ほかの原因による菌血症では発熱することがあります。菌血症の人に発熱や心拍数の上昇、悪寒戦慄(寒気とふるえ)、低血圧、消化管症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など)、呼吸数の増加、または錯乱がみられる場合は、おそらく 敗血症または敗血症性ショック 敗血症と敗血症性ショック 敗血症は、 菌血症やほかの感染症に対する重篤な全身性の反応に加えて、体の重要な臓器に機能不全が起きている状態です。敗血症性ショックは、敗血症のために生命を脅かすほどの血圧の低下( ショック)と臓器不全が起きている病態です。 通常、敗血症は特定の細菌に感染することで起こり、病院内での感染が多くみられます。 免疫系の機能低下、特定の慢性疾患、人工関節や人工心臓弁の使用、特定の心臓弁の異常といった特定の条件に当てはまると、リスクが高くなります... さらに読む を起こしています。
菌血症の診断
血液サンプルの培養
菌血症、敗血症、または敗血症性ショックが疑われる場合、医師は通常は血液サンプルを採取し、検査室で細菌を増殖させる検査(培養検査 微生物の培養検査 感染症は、 細菌、 ウイルス、 真菌、 寄生虫などの微生物によって引き起こされます。 医師は、患者の症状や身体診察の結果、危険因子に基づいて感染症を疑います。まず、患者がかかっている病気が感染症であり、他の種類の病気ではないことを確認します。例えば、せきが出て、呼吸が苦しいと訴える人は、肺炎(肺の感染症)の可能性があります。また、喘息や心... さらに読む )を行って、特定を試みます。必要な場合は、ほかのサンプル(尿やたんなど)から細菌を培養する場合もあります。
菌血症の予防
菌血症による合併症のリスクが高い人(人工心臓弁や人工関節を使用している人、心臓弁に特定の異常がある人など)には、菌血症の原因になりうる以下の処置を行う前に、しばしば抗菌薬が投与されます。
歯科処置
感染が起きている傷口の外科的処置
抗菌薬は、菌血症とそれに伴う感染症や敗血症の予防に役立ちます。
菌血症の治療
抗菌薬
感染症や敗血症が起きたら、抗菌薬による治療が行われます。
医師が細菌の感染源(カテーテルなど)を除去します。