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細菌の概要

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

最終査読/改訂年月 2018年 4月
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細菌は、顕微鏡でようやく見える程度の単細胞生物です。この地球上で最も初期の段階から存在する生命体の1つです。数千種類の細菌が存在し、世界中のあらゆる環境に生息しています。土壌、海水、地中深くはもちろん、放射性廃棄物の中で生きている細菌すら報告されています。多くの細菌が、宿主に害を与えずに、人間や動物の皮膚、気道、口の中、消化管、尿路や生殖器に生息しています。そうした細菌は常在菌叢 常在菌叢 健康な人は、体内や体表面に生息している(コロニーを作っている)微生物の大半とうまく共存しています。常に体内の決まった部位に集団で存在している微生物を「常在菌叢(じょうざいきんそう)」と呼びます。常在菌叢にいる細菌の数は、人の体を構成するすべての細胞の数の10倍に上ります。人体には数時間から数週間しかとどまらず、持続的に定着はしない微生物も... さらに読む (きんそう)やマイクロバイオームと呼ばれています。常在菌叢中の細菌は、体内の細胞の数と少なくとも同じだけの数が存在します。多くの常在菌叢は、食べものの消化を助けたり、もっと危険な細菌が増殖するのを防いだりしながら、実際に人の役に立っています。

病気を起こす細菌はほんの一部にすぎず、それらは病原菌と呼ばれます。通常は体に害を与えない細菌でも、ときに病気を引き起こします。細菌は有毒な物質(毒素)を作ったり、組織を侵食したりすることによって、病気を引き起こします。一部の細菌は、心臓や神経系、腎臓、消化管などに炎症を引き起こす原因となる可能性があります。また、細菌の中にはがんのリスクを上昇させるものもあります(ヘリコバクター・ピロリ ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染 ヘリコバクター・ピロリ Helicobacter pylori (ピロリ菌 H. pylori)感染は、胃の炎症(胃炎)、消化性潰瘍(かいよう)、ある種の胃がんを引き起こす細菌感染です。 この感染はヘリコバクター・ピロリ Helicobacter pylori(ピロリ菌 H. pylori)と呼ばれる種類の細菌により引き起こされます。... さらに読む など)。

生物兵器 生物兵器 生物戦とは、病原微生物を兵器として使用することです。そのような使用は国際法に反しており、20世紀に生物剤の大規模な製造および備蓄が行われたにもかかわらず、近代史において正式な戦争中に使用された例はほとんどありません。 (集団殺傷兵器による災害の概要も参照のこと。) 生物兵器はテロリストにとっては理想的な兵器であるという見方もされています。... さらに読む として使用される可能性がある細菌もあります。このような細菌には、炭疽 炭疽 炭疽(たんそ)は、炭疽菌 Bacillus anthracisという棒状のグラム陽性細菌による感染症で、死に至る場合があります。炭疽は皮膚や肺のほか、まれに消化管(胃腸)に感染します。 人間が感染する通常の原因は皮膚接触ですが、炭疽菌の芽胞を吸い込んだり、汚染された肉を食べたりしても感染します。... さらに読む 炭疽 (たんそ)やボツリヌス症 ボツリヌス症 ボツリヌス症は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)という細菌が作り出す毒素による中毒で、まれな病気ですが発生すると生命を脅かします。 ボツリヌス毒素は通常、食べものと一緒に体内に侵入し、筋力の低下や麻痺を引き起こします。 最初に、口腔乾燥、複視、眼の焦点が合わないなどの症状が現れます。あるいは、下痢、嘔吐、腹部けい... さらに読む ペスト ペストとその他のエルシニア Yersinia感染症 ペストは、ペスト菌 Yersinia pestisというグラム陰性細菌によって引き起こされる重症感染症で、しばしばリンパ節や肺が侵されます。 この細菌は主にネズミノミを介して感染が拡大します。 ペストでは病原菌の種類により、発熱、悪寒、リンパ節の腫れ、頭痛、心拍数の増加、せき、呼吸困難、嘔吐、下痢などの症状が起こります。... さらに読む ペストとその他のエルシニア <i>Yersinia</i>感染症 野兎病 野兎病 野兎病は、野兎病菌 Francisella tularensisというグラム陰性細菌による感染症で、感染している野生動物(通常はウサギ)を直接触ったり、感染したダニ、メクラアブ、ノミに咬まれたりすることでかかります。 動物の死体に触ったり、ダニに咬まれたり、この菌を含む飛沫を飲み込んだり、汚染されたものを飲食したりした場合に感染が起こりま... さらに読む 野兎病 の原因となるものも含まれています。

細菌の分類

細菌については以下の通り数種類の分類法があります。

主な細菌の形

主な細菌の形

体内の細菌

体内には数百種類の細菌が存在していますが、その総数は数兆に及びます。

これらの細菌のほとんどは以下の場所で生息しています。

  • 皮膚や歯の表面

  • 歯と歯ぐきの間

  • のど、腸、腟の内側を覆う粘膜

それぞれの多様な環境に応じて、部位毎に異なる種が存在します。

ほとんどの細菌は嫌気性細菌で、酸素を必要としません。

通常、そのような嫌気性細菌は病気を引き起こしません。腸で食べものの消化を助けるなどの、有用な働きをする菌も数多くいます。

しかし、粘膜が損傷を受けた場合には、嫌気性細菌が病気の原因となることがあります。その場合、通常は細菌が存在せず防御機構が備わっていない組織へと細菌が侵入します。細菌は付近の組織(副鼻腔、中耳、肺、脳、腹部、骨盤、皮膚など)に感染したり、血流に入って拡散します。

細菌感染症

細菌感染症は、細菌の分類を行うための様々な方法に基づいて分類されます。例えば、グラム陰性細菌による感染やグラム陽性細菌による感染などに分類されますが、この区別を行うことは重要です。なぜなら、この2種類の感染症を治療するためには異なるタイプの抗菌薬が必要になる可能性があるためです。

グラム陰性細菌による感染症には以下のものがあります。

グラム陽性細菌による感染症には以下のものがあります。

感染症の中には、細菌の形状によって分類されているものもあります。例えば、スピロヘータ(らせん状の細菌)によって引き起こされる感染症は、スピロヘータ感染症に分類されます。

スピロヘータ感染症には以下のものがあります。

また、感染症の原因となる細菌が酸素を必要とするものか、酸素がなくても生息できるかによって感染症が分類される場合もあります。生息し増殖するために酸素を必要とする細菌は好気性細菌と呼ばれます。生息し増殖するために酸素を必要としない細菌は嫌気性細菌と呼ばれます。

嫌気性細菌による感染症には以下のものがあります。

細菌の防御

細菌は様々な方法で自身を防御します。

バイオフィルム

他の細菌、細胞、それ以外の物に付着するための物質を分泌する細菌が存在します。この物質は細菌と一緒になってバイオフィルムと呼ばれる粘着性の層を形成します。例えば、歯の表面でこのバイオフィルム(歯垢)を形成する細菌があります。バイオフィルムに取り込まれた食物片を細菌が処理したり、使用したりする過程でう蝕(虫歯)になる場合があります。バイオフィルムには抗菌薬から細菌を守る働きもあります。

莢膜

莢膜(きょうまく)と呼ばれるカプセルをまとって身を守る細菌も存在します。莢膜は、感染に抵抗して細菌を捕食する白血球の働きを阻害します。このような細菌は莢膜を有すると表現されます。

外膜

グラム陰性細菌は莢膜の下に外膜をもち、それにより特定の抗菌薬から身を守ることができます。この外膜は、破壊されると内毒素(エンドトキシン)と呼ばれる有害物質を放出します。グラム陰性細菌の感染では、内毒素が症状が重症化する一因になります。

芽胞

不活性状態(休眠型)である芽胞(がほう)を形成する細菌もあります。芽胞になることで、細菌は厳しい環境でも生き延びることができます。環境がよくなれば、芽胞は活性型の細菌として発芽します。

鞭毛

鞭毛(べんもう)は細胞表面から生えている細長いフィラメント(繊維)で、細菌はこれを使って移動します。鞭毛のない細菌は自力で移動できません。

抗菌薬に対する耐性

一部の細菌は、特定の抗菌薬に対してもともと耐性があります。

耐性のある別の細菌から遺伝子を取り込んだり、自身の遺伝子を変異させたりすることで、薬への耐性を獲得する細菌もあります。例えば、1940年代中盤にペニシリンの使用が開始された直後に、ペニシリンを無効にできる遺伝子を少数の黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureusが獲得しました。この特別な遺伝子を有する菌株は、感染の治療にペニシリンが広く使用されていた状況下で高い生存率を示しました。この新しい遺伝子をもたない黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusはペニシリンの作用で死滅し、残ったペニシリン耐性菌が増殖し続けて、次第にそれらの菌が優勢になっていきました。

化学者はペニシリン耐性菌を死滅させるために、ペニシリン分子を改変してペニシリン類似薬「メチシリン」を新たに開発しました。メチシリンが導入されて間もなく、メチシリンや類似の薬に対する耐性遺伝子を獲得した黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureusが現れました。そのような菌株はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus(MRSA)と呼ばれます。

薬剤耐性遺伝子は次世代の細菌に受け継がれ、ときには他の種の細菌に伝わることもあります。

抗菌薬を使用すればするほど、耐性菌が生み出される可能性は高まります。それゆえ専門家は、医師が抗菌薬の使用を必要最低限とするよう推奨しています。特に、かぜやインフルエンザなどのウイルス性のものではなく、細菌によって引き起こされる感染症に限って、医師は抗菌薬を使用すべきです。せきやかぜの症状など、細菌感染がないと思われる患者に抗菌薬を使用しても、患者の状態はよくならず、それどころか細菌の耐性獲得を助けてしまいます。抗菌薬が(誤った使用も含めて)非常に広く使用されてきたために、多くの細菌が特定の抗菌薬に対する耐性をもつようになっています。

耐性菌は人から人に広がる可能性があります。外国旅行が一般的になった現在、耐性菌は短期間で世界のいろいろな場所へ広がる可能性があります。特に、病院内でのこうした細菌の伝播が懸念されています。病院では抗菌薬が頻繁に使用されるため、耐細菌が多くみられます。適切な公衆衛生処置が厳密に行われていない場合には、病院スタッフと外来者がこの細菌を広める可能性があります。さらに、入院中の患者には免疫機能が低下している人が多く、より感染を起こしやすい状態にあります。

耐性菌は動物から人へも伝播します。成長を阻害したり病気の原因となる感染症を予防したりする目的で、健康な家畜に対して日常的に抗菌薬が与えられているため、家畜には耐性菌がよくみられます。以下のリスクを低下させるため、多くの国では動物に対する抗菌薬の使用を禁止しています。

  • 家畜の肉や加工品に含まれる耐性菌を摂取するリスク

  • 動物と接触することによって耐性菌に感染するリスク

  • 家畜の肉や加工品に含まれる抗生物質にさらされるリスク

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