様々な病気や薬などの治療によって、体に 本来備わっている防御機構 感染に対する防御機構 人体は自然障壁と免疫システム( 免疫系)によって 感染症の原因となる微生物から守られています。( 様々な防御線も参照。) 自然障壁には、皮膚、粘膜、涙、耳あか(耳垢)、粘液、胃酸などがあります。また、尿も正常に流れることによって、尿路に侵入した微生物を洗い流します。 免疫系は 白血球と 抗体を使って、身体の自然障壁をかいくぐって侵入してきた微生物を見つけて排除します。 ( 感染症の概要も参照のこと。)... さらに読む が破たんしてしまうことがあります。防御機構が破たんすると感染につながり、普段なら特に害を及ぼさずに体の表面や内部で共存している微生物(常在菌叢 常在菌叢 健康な人は、皮膚、鼻、口、のど、大腸、腟など、体の非無菌状態の部位に生息している(コロニーを作っている)微生物の大半とうまく共存しています。常に体内の決まった部位に集団で存在している微生物を「常在菌叢(じょうざいきんそう)」と呼びます。常在菌叢にいる細菌の数は、人の体を構成するすべての細胞の数の10倍に上ります。人体には数時間から数週間しかとどまらず、持続的に定着はしない微生物もいて、それらは一過性の細菌と呼ばれます。... さらに読む )までもが病気を引き起こしてしまうことがあります。防御機構の破たんは以下のような原因で生じることがあります。
重度の熱傷:皮膚が損傷すると、有害な微生物の侵入を防げなくなるため、感染のリスクが高まります。
医学的処置:処置の際には、体内に異物を入れることで、感染のリスクが高まる場合があります。そのような異物としては、尿路や血管に挿入されたカテーテルや、気管に挿入されたチューブ、皮膚の縫合に使われた糸などがあります。
免疫系を抑制する薬:抗がん剤(化学療法薬)、臓器移植後の拒絶反応を抑える薬(アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリンなど)、コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)、生物製剤(例えば、アダリムマブや、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、その他の自己免疫疾患などの病気に使用される薬)など。
放射線療法:放射線治療は免疫系を抑制することがありますが、特に骨髄に放射線が照射された場合に可能性が高くなります。
エイズ: ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む
エイズ患者、特に末期の患者では、ある種の感染症に対する防御力が劇的に低下してしまいます。エイズの人では、特に日和見感染(免疫系が正常な人では通常病気を引き起こさない微生物による感染症)のリスクが高くなります。またエイズ患者では、ありふれた多くの感染症が通常より重症になります。
(感染症の概要 感染症の概要 微生物とは、細菌やウイルスなど、ごく小さな生物のことです。微生物はどこにでも存在しています。その数は驚くほど多いものの、人間の体内に侵入して増殖し、病気を引き起こすのは、数千種類ある微生物のうちの比較的少数に限られています。 微生物の多くは皮膚の表面や口、上気道、腸、性器(特に腟[ちつ])内に、病気を起こすこともなく定着しています(... さらに読む も参照のこと。)