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コロナウイルスと急性呼吸器症候群(COVID-19、MERS、SARS)

執筆者:

Brenda L. Tesini

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2021年 3月
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本ページのリソース

コロナウイルスは、かぜから致死的な肺炎まで様々な重症度の呼吸器疾患を引き起こす一群のウイルスです。

コロナウイルスには様々な種類があります。その多くが動物に病気を引き起こしますが、7種類のコロナウイルスは人間に病気を引き起こすことが知られています。

しかし、7つのヒトコロナウイルス感染症のうち3つは、より重症になる可能性があり、最近では、死に至ることもある肺炎の大規模な集団発生を引き起こしています。

重度の呼吸器感染症を引き起こすこれらのコロナウイルスは、動物から人間に感染します(人畜共通感染症病原体)。

COVID-19

COVID-19(コビッド・ナインティーン)は、正式にはSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された新型コロナウイルスによって引き起こされ、重症化する可能性がある急性呼吸器疾患です。

COVID-19は、2019年末に中国の武漢で初めて報告され、その後世界中に広く拡大しました。現在の症例数と死者数については、米国疾病予防管理センター:新型コロナウイルス( Centers for Disease Control and Prevention: 2019 Novel Coronavirus)と世界保健機関の新型コロナウイルス感染症(COVID-2019)状況報告書( World Health Organization's Novel Coronavirus (COVID-2019) situation reports)を参照してください。

COVID-19の伝播

COVID-19の初期の症例には、中国の武漢にある生きた動物を売買する生鮮市場との関連が認められ、このウイルスが最初は動物からヒトに感染したことが示唆されています。

COVID-19は主に、感染者がせきやくしゃみをしたり、歌ったり、運動したり、話をしたりするときに分泌される飛沫を介して、人から人へと広がります。一般的には、感染力がある人との濃厚接触(周囲約2メートルの範囲に24時間で合計15分以上いた場合と定義されています)によって広がりますが、特定の条件下では、より離れた相手に広がったり、空気中により長い時間とどまったりすることがあります。一般に、感染者とのやり取りがより近距離であるほど、また時間が長くなるほど、感染のリスクが高くなります。COVID-19は、ウイルスが付着した物を触った手で自分の口、鼻、眼を触れることでも感染する可能性があります。このウイルスは通常、この感染症の症状がみられる人によって感染が広がりますが、症状が現れる前の(未発症の)感染者や、発症することのない(無症状の)感染者によっても感染が広がる可能性があります。

症状

COVID-19のウイルスに感染した人のほとんどは、まったく症状がみられないか、軽い症状が出るだけで済みますが、なかには重症化して死亡する人もいます。以下のような症状がみられます。

  • 発熱

  • せき

  • 息切れまたは呼吸困難

  • 悪寒または繰り返す悪寒戦慄

  • 疲労

  • 筋肉痛

  • 頭痛

  • のどの痛み

  • 臭いや味を感じなくなる

  • 鼻づまりや鼻水

  • 吐き気または嘔吐

  • 下痢

通常、症状が現れる時期は感染してからおよそ2~14日後ですが、最も一般的には4~5日以内です。

COVID-19の感染者における重篤化および死亡のリスクは、年齢とともに高まるほか、喫煙している人や、がん、心臓、肺、腎臓、肝臓の病気や鎌状赤血球症、糖尿病、肥満、免疫不全症などの重篤な病気をもっている人でも高くなります。

重症化して死に至る可能性もある呼吸器疾患に加えて、以下の合併が発生する可能性があります。

MIS-C(multisystem inflammatory syndrome in children)と呼ばれている、まれな合併症が小児で報告され、COVID-19との関連が指摘されています。その症状は、まれな病気である川崎病 川崎病 川崎病は全身の血管に炎症(血管炎)が起こる病気です。 川崎病の原因は不明ですが、感染症と関連があると考えられています。 典型的な症状は、発熱、発疹、イチゴ舌のほか、ときに心臓の合併症がみられることもあり、これによりまれに死に至ることがあります。 診断は診断基準に基づいて下されます。 迅速な治療を行えば、ほぼすべての患児が回復します。 さらに読む 川崎病 と似ていて、具体的には発熱、腹痛、発疹などがみられます。若年成人や中年者でも同様の合併症が報告されています(MIS-A[multisystem inflammatory syndrome in adults])。

ほとんどの場合、症状は約1週間で治まります。しかし、少数の人では症状がより長期間続き、症状として最も多いのは息切れ、せき、極度の疲労感で、ときに数週間から数カ月間にわたり持続することもあります。このような人は、ウイルス検査を行っても通常は活動的なウイルスが検出されないことから、一般に感染力がないと考えられています。

他のコロナウイルスに感染したときにみられる免疫は、一時的なものであることが知られています。COVID-19はパンデミックが始まってからそれほど時間が経過していないため、COVID-19の発症後にどれくらい免疫が維持されるかは明確になっていません。しかし、最近になって、COVID-19から回復した人が遺伝子配列の異なる株のSARS-CoV-2に感染して再び発症したという症例が、ごく少数ながら報告されています。こうした再感染は、すでに何千万人もの人がCOVID-19を発症しているという事実を考慮すれば、今のところ極めてまれな現象と考えられますが、今後どうなるかは研究者にも分かりません。

診断

  • ウイルスを特定する検査

該当する症状がみられる場合、医師はCOVID-19を疑います。COVID-19に感染した人と最近、濃厚接触があった場合、感染している可能性が高くなります。COVID-19の感染が疑われる人は、適切な予防策を講じられるように、検査を受ける前や医療機関に向かう前に主治医に連絡するべきです。

上気道や下気道の分泌物(鼻腔または口腔ぬぐい液検体または唾液検体)を採取して、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査などのウイルス検査を行うことで、ウイルスを特定することができます。特定のSARS-CoV-2抗原を検出する検査も可能ですが、この種の検査は一般にPCR検査ほど正確ではありません。(CDC:SARS-CoV-2[COVID-19]の検査の概要[ CDC: Overview of Testing for SARS-CoV-2 [COVID-19]]も参照のこと。)

以下に該当する人はCOVID-19の検査を受けるべきです。

  • COVID-19の症状がみられる

  • COVID-19と確認された人と濃厚接触(周囲約2メートルの範囲に24時間で合計15分以上いた場合と定義されています)があった

  • 医療提供者や地域または州の保健局から検査を受けるように指示または紹介された

注:抗体検査(血清学的検査とも呼ばれる)は、検査を受けた人が過去に感染したことがあるかどうかを判断するのに役立ち、この情報は感染者の追跡やウイルスの研究に重要です。その時点で感染しているかどうかの診断には、抗体検査は用いられません。

予防

感染を予防する最善の方法は、ウイルスにさらされないようにすることですが、自分が感染していることを知らない感染者もいるため、こうした対策は困難である可能性があります。「ソーシャルディスタンシング」を実践する(同居していない人とは2メートル以上の距離を保つ)ことや、同居していない人の周りでは、口と鼻を覆う布製のフェイスカバーを着用することが重要です。CDCは以下の対策を推奨しています。

  • 公共の場所や同居していない人の周りでは、自分が健康なら(つまり症状がなければ)布製のフェイスカバーを着用する(特にソーシャルディスタンシングの対策を維持することが困難な場合)(布製のフェイスカバーはソーシャルディスタンシングの代わりにはならない)

  • 具合が悪く、かつ周りに人がいる場合は、マスクまたは布製のフェイスカバーを着用する(布製のフェイスカバーは、家庭内にある物を流用するか、どこにでもある材料で自作することができる:CDCのCOVID-19感染拡大を鈍化させるための布製フェイスカバーの使用[ CDC's Use of Cloth Face Coverings to Help Slow the Spread of COVID-19]を参照)

  • 病気の人の世話をするときにはマスクを着用する

ソーシャルディスタンシングと布製フェイスカバーの着用に加えて、CDCは、呼吸器系ウイルスの感染拡大を防ぐための対策として、日常的に以下の行動をとることを推奨しています(CDC:自分自身と他の人の身を守る方法[ CDC: How to Protect Yourself and Others]を参照)。

  • 頻繁に石けんと水で20秒以上かけて手を洗う(特にトイレに行った後、食事の前、鼻をかんだ後、せきやくしゃみをした後)

  • 石けんと水が手元にない場合は、アルコール濃度が60%以上の手指消毒液を使用する

  • 洗っていない手で眼、鼻、口を触らないようにする

  • 体調が悪い人との接触を避ける

  • 体調が悪いときは外出を控える

  • せきやくしゃみをするときは口をティッシュで覆い、そのティッシュはゴミ箱に捨てる

  • 一般的な家庭用の消毒スプレーやウエットティッシュを使用して、頻繁に触れる物や表面を清掃および消毒する

  • 症状がないか健康状態を継続的にチェックし、症状が現れた場合は体温を測定する

隔離

感染拡大を防止する手段として、米国疾病予防管理センター(CDC)は、隔離措置の実施を推奨しています。

隔離は、ウイルスにさらされた人やその可能性がある人に対して行われる場合があります。これは、そのような人が14日間の潜伏期間中に発症するかどうかを確認するために、他の人々から引き離し、「濃厚接触者」の移動を制限することを意図したものです。過去3カ月以内にCOVID-19に感染したか、COVID-19に対するワクチン接種を完了した人を除き、以下に該当する人は、最後にウイルスにさらされてから14日間にわたって隔離されるべきです。

  • 検査で陰性と判定された無症状の濃厚接触者

  • まだ検査を受けていない無症状の濃厚接触者

濃厚接触者が検査で陽性と判定された場合、その人はその後少なくとも10日間にわたり隔離されます。一部の地域では、これらの対策を厳格に遵守することで、感染拡大を抑えることに成功しています。

濃厚接触者とは、以下のような人です。

  • 感染者に症状が現れた時点または感染者が検査を受けた時点(もし症状がみられなかった場合)の48時間前以降の任意の24時間の間に合計15分以上にわたって、その感染者の周囲約2メートル以内にいた人(マスク着用の有無は問わない)

以下のような人も濃厚接触者に該当します。

  • COVID-19の発症者を自宅で看病した人

  • 発症者と直接的な身体的接触(抱き合う、キスをする)があった人

  • 食器類を共有した人

  • 発症者の飛沫(例えば、くしゃみやせき)が届く範囲にいた人

隔離は、感染者を感染しやすい人から引き離す目的でも行われます。以下に該当する人は隔離されるべきです。

  • COVID-19の症状がみられ、具合いが悪く、まだ検査を受けていない人

  • 検査でSARS-CoV-2陽性と判定された人(症状の有無は問わない)

隔離は一般に、解熱薬を使用していない状態で24時間以上にわたり発熱がなく、かつ症状が改善していれば、発症の10日後に終了することができます。症状がまったくない人では、最初に検査で陽性となった日から10日後に隔離をやめることができます。

ワクチン接種

現在、COVID-19に対する複数のワクチンが世界中で使用されています。米国では、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けたワクチンはありませんが、2021年3月1日現在、以下の3つに緊急使用許可(EUA)が出されています。

  • ファイザー社・ビオンテック社のワクチンは、2020年12月11日に16歳以上の人への使用を対象としてEUAを受け、3週間の間隔を空けた2回の注射により接種されます(ファイザー社・ビオンテック社のワクチンに関するFDAファクトシート[ FDA Fact Sheet on the Pfizer-BioNTech vaccine]も参照)。

  • モデルナ社のワクチンは、2020年12月18日に18歳以上の人への使用を対象としてEUAを受け、このワクチンも4週間の間隔を空けた2回の注射が必要です(モデルナ社のワクチンに関するFDAファクトシート[ FDA Fact Sheet on the Moderna vaccine]も参照)。

  • ヤンセン社(ジョンソン・アンド・ジョンソン社とも呼ばれます)のワクチンは、2021年2月27日に18歳以上の人への使用を対象としてEUAを受け、1回の注射だけで接種を完了できます(ワクチン接種を受ける人とケアを行う人のためのFDAファクトシート:ヤンセン[ FDA Fact Sheet for Recipients and Caregivers: Janssen]も参照)。

ファイザー社・ビオンテック社とモデルナ社のCOVID-19ワクチンには互換性がないため、2回とも同じメーカーのワクチンを接種する必要があります。

3つのワクチンはいずれも、それぞれの臨床試験において、入院や死亡を含むCOVID-19の重篤な合併症を完全に予防しました。臨床試験では、ファイザー社・ビオンテック社のワクチンにより、3週間の間隔を空けて2回の接種を受けた人の95%でCOVID-19の発症が予防されました。別の臨床試験では、モデルナ社のワクチンによって94.1%の人でCOVID-19の発症が予防されました。ヤンセン社のワクチンは、1回の接種で全体の約67%の人でCOVID-19の発症を予防し、85%の人で重症/最重症のCOVID-19を予防しました。これらの臨床試験は、パンデミック中の様々な時点で実施され、対象とされた集団もそれぞれ異なっていたことから、結果を直接比較することはできません。これらのワクチンで得られる予防効果の持続期間は、現在のところ不明です。免疫 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守るために、免疫系が備わっています。侵入物には以下のものがあります。 微生物(細菌、ウイルス、真菌など) 寄生虫(蠕[ぜん]虫など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む 機能が低下している人(免疫抑制薬 続発性免疫不全症 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む を使用している人も含みます)では、ワクチンに対する反応が弱くなる可能性があります。ワクチンでCOVID-19の感染拡大をどれだけ予防できるかはまだ分かっていないため、ワクチン接種を受けた人も依然として、マスクの着用、ソーシャルディスタンシング、頻繁な手洗いなど、一般的な予防対策を続けていく必要があります。

ファイザー社・ビオンテック社またはモデルナ社のワクチンやその成分(ポリエチレングリコール[PEG]を含む)に対して重度のアレルギー反応を起こしたことがある人は、これらのワクチンの接種を受けるべきではありません。ヤンセン社のワクチンのいずれかの成分に対して重度のアレルギー反応を起こしたことがある人は、このワクチンの接種を受けるべきではありません。

3つのワクチンの副反応は類似していますが、具体的には以下のものがあります。

  • 注射部位の痛み、腫れ、発赤

  • だるさ

  • 頭痛

  • 筋肉痛

  • 悪寒

  • 関節痛

  • 発熱

  • 吐き気

  • けん怠感

  • リンパ節の腫れ

副反応は一般的には数日にわたって続きます。ファイザー社・ビオンテック社およびモデルナ社のワクチンでは、1回目の接種後よりも2回目の接種後の方が、より多くの人に副反応がみられます。

重度のアレルギー反応が起こる可能性は、ほんのわずかです。起こる場合、通常はワクチン接種後数分から1時間以内にみられ、緊急の治療が必要です(救急サービス[米国では911番、日本では119番]に電話をして救急車を呼ぶか、最寄りの病院に行きます)。他のワクチンや注射剤に対して重度のアレルギー反応を起こしたことがある人は、アレルギー反応のリスクについて医師と話し合い、ワクチン接種後に経過観察を受けるべきです。重度のアレルギー反応の徴候としては、以下のものがあります。

  • 呼吸困難

  • 顔とのどの腫れ

  • 心拍数の増加

  • 全身のひどい発疹

  • めまいや筋力低下

治療

  • 発熱と筋肉痛を緩和する薬

  • ときに、レムデシビルやデキサメタゾン

COVID-19の患者の大半は治療を必要としません。

米国国立衛生研究所(NIH)のガイドラインでは、一部の重症患者に対して、レムデシビル(抗ウイルス薬)とデキサメタゾン(抗炎症薬)が推奨されています。レムデシビルは、米国食品医薬品局(FDA)が承認したCOVID-19に対する唯一の治療薬ですが、COVID-19で入院した患者への使用のみが承認されています。多くの薬が臨床試験での評価段階にありますが、いずれも効果の大きさについて十分な情報が得られていないため、臨床試験以外での使用が推奨されるには至っていません。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する薬であるロピナビル/リトナビルと、抗マラリア薬であるクロロキンおよびヒドロキシクロロキンについては、これらの薬には効果がないことが複数の臨床試験によって示されています。抗寄生虫薬のイベルメクチンについても、COVID-19の予防や治療に対する有用性を示したランダム化臨床試験はありません。

COVID-19から回復した人の血液中には、SARS-CoV-2に対する抗体が存在します。最近の研究により、回復者の血漿を輸血することが一部の軽症患者の回復促進に役立つ可能性があることが示されました。SARS-CoV-2ウイルスに対する人工的な抗体(モノクローナル抗体)が、一部の患者における軽症から中等症のCOVID-19に対する治療法として、FDAから緊急使用許可を受けています。これらの新しい治療はどちらも静脈内投与でのみ行われますが、これらの治療を推奨するにも否定するにも臨床試験データが不十分であるため、これらの治療を標準の治療法とみなすべきではありません。

発熱と筋肉痛を軽減するために、アセトアミノフェンか、イブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用することがあります。NSAIDがCOVID-19を悪化させるという懸念が初期の症例報告で指摘されましたが、この説を裏付ける科学的根拠はありません。同様に、COVID-19の患者はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と呼ばれる血圧の薬の服用を中止すべきとする科学的根拠はありません。

さらなる情報

英語で書かれた以下の資料が役立つ可能性があります。ただし、本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことにご留意ください。

中東呼吸器症候群(MERS)

中東呼吸器症候群は、重度のインフルエンザに似た症状を引き起こすコロナウイルス感染症です。

MERSウイルスは、2012年にヨルダンとサウジアラビアで初めて検出されました。2018年初頭の時点で、MERSと確定された症例数は2220例で、そのうち790人が死亡しました。大半がサウジアラビアで発生したもので、同国では現在も新たな症例の発生が続いています。フランス、ドイツ、イタリア、チュニジア、英国などの中東以外の国でも、旅行や仕事で中東に滞在していた人々の間で症例が発生しています。

韓国では、中東から1人の韓国人男性が帰国した後、2015年5月から7月にかけてMERSコロナウイルスの集団発生が起きました。この集団発生では、180例以上の症例と36人の死亡が確認されました。人から人への感染拡大は大半が医療施設で発生しました。

2014年5月には、米国で2例の症例が確認されました。どちらも、ペルシャ湾岸地域から帰国して間のない医療従事者でした。2014年5月以降、米国ではMERSの症例は発生していません。

いくつかの国(エジプト、オマーン、カタール、サウジアラビアなど)では、ヒトコブラクダが人間への主な感染源であると疑われていますが、ウイルスがどのようにしてラクダから人間に感染するのかは分かっていません。

この感染症は男性に多くみられ、高齢の人や糖尿病、心臓病、腎臓病などの慢性疾患を抱えている人では、症状が重くなります。約3分の1の感染者が死亡しています。

MERSウイルスは、MERS患者との濃厚接触によって、もしくは感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して広がります。症状が現れる前の人からは感染は起きないと考えられています。人から人への感染の大半は、感染者のケアを担当する医療従事者で発生しています。

通常は感染からおよそ5日後に(ただし2~14日後の期間中であれば常に可能性があります)症状が現れます。ほとんどの場合、発熱、悪寒、筋肉痛、せきがみられます。およそ3分の1の人では、下痢、嘔吐、腹痛がみられます。

診断

  • 気道から採取した体液の検査

  • 血液検査

下気道感染症がみられ、このウイルスにさらされる可能性がある地域に旅行したか居住している人、また、MERSであった可能性がある人と最近濃厚接触があった人では、MERSが疑われます。

MERSと診断するには、医師が気道の数カ所から複数の時点で体液のサンプルを採取して、MERSウイルスの検査を行います。また、ウイルスやそれに対する抗体を検出する血液検査も行います。MERSの可能性がある人と濃厚接触があった人には、必ず血液検査が行われます。

治療

  • 発熱と筋肉痛を緩和する薬

  • 隔離

MERSに対する特別な治療法はありません。発熱と筋肉痛を和らげるためにアセトアミノフェン、またはイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与します。

ウイルスの感染拡大を予防するための対策を講じます。例えば、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋で感染者を隔離します。その部屋に入る人は全員が特殊なマスク、眼の防護具、ガウン、帽子、手袋を身に付けます。部屋につながる扉は人が出入りする場合を除き閉じたままにしておき、人の出入りの回数をできるだけ少なくするべきです。

中東に旅行する人は世界保健機関(WHO)のウェブサイトで旅行者向けのアドバイスを確認してください (WHOのMERS-CoVに関する巡礼者向け世界旅行アドバイス[ WHO World-travel advice on MERS-CoV for pilgrimages]を参照) 。

重症急性呼吸器症候群(SARS)

重症急性呼吸器症候群(SARS)は、インフルエンザに似た症状を引き起こすコロナウイルス感染症です。

  • 2004年以降、症例は報告されていません。

  • SARSの症状は、呼吸器に起こる他の一般的なウイルス感染症と似ていますが(発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛など)、より重度です。

  • 医師は患者に感染者との接触の可能性がある場合に限り、SARSを疑います。

  • SARSが疑われる患者は、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋に隔離されます。

重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2002年後半に中国で初めて発見されました。世界的な流行が起こり、2003年半ばまでに、カナダや米国を含む世界の国々で8000例以上の症例と800人を超える死者が出ました。2004年以降は症例の報告がなく、SARSは(ウイルスとしてではなく、病気として)根絶されたとみなされています。

直接の感染源は、生きた動物を売買する市場で珍味として販売されていた、ネコに似た哺乳類であるジャコウネコだったと推定されています。ジャコウネコがどのように感染するのかは分かっていませんが、自然界でSARSウイルスを常時保有している生物はコウモリであると考えられています。

SARSは、感染者との濃厚接触によって、もしくは感染者のせきやくしゃみで飛散した空気中の飛沫を介して人から人へと広がります。

症状

SARSの症状は、呼吸器に起こる他の一般的なウイルス感染症と似ていますが、より重度です。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛の後に乾いたせきが生じ、呼吸困難に陥ることがあります。

大半の患者は1~2週間以内に回復しました。しかし、約10%の患者で重度の呼吸困難が生じます。

診断

  • 医師による評価

  • ウイルスを特定する検査

SARSが疑われるのは、感染者と接触した可能性があり、その上で発熱に加えてせきや呼吸困難がみられる場合のみです。

このウイルスを特定する検査を行うことがあります。

治療

  • 隔離

  • 必要な場合は、酸素の投与

  • ときに、呼吸を補助する人工呼吸器の使用

SARSが疑われる患者は、空気中での微生物の拡散を抑制する換気システムが整備された部屋に隔離されます。最初にして唯一のSARSの流行時には、そうした隔離がウイルスの感染拡大を防ぎ、最終的にウイルスを排除することができました。

症状が軽い患者には特別な治療は必要ありません。中等度の呼吸困難が生じた患者には、酸素投与が必要になる場合があります。重度の呼吸困難が生じている患者では、人工呼吸器による呼吸補助が必要なことがあります。

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