分類不能型免疫不全症の患者では、慢性のせき、喀血(かっけつ)、呼吸困難(頻繁な副鼻腔または肺の感染症のため)、下痢がみられることがあります。
診断を下すために、免疫グロブリンの量を測定するとともに、体がワクチンに反応して免疫グロブリンを生産する能力を調べます。
不足した免疫グロブリンを補うために免疫グロブリン製剤を生涯にわたって投与し、頻繁に発生する感染症を治療するために抗菌薬を投与します。
(免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む も参照のこと。)
分類不能型免疫不全症は 原発性免疫不全症 原発性免疫不全症 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む の一種です。通常は20~40歳で診断されますが、もっと若い時期や高齢で発症することもあります。通常、 B細胞 B細胞 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む (リンパ球の一種)の数は正常ですが、成熟していないため、免疫グロブリン(抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む )を生産することができません。患者によっては、 T細胞 T細胞 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む の機能不全もみられることがあります。
最大25%の患者が 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む を発症します。自己免疫疾患では、免疫系が自分の組織を攻撃してしまいます。例えば、自己免疫性血液疾患(免疫性血小板減少症 免疫性血小板減少症(ITP) 免疫性血小板減少症(ITP)は、血小板に影響を及ぼす別の病気がない状況で、血小板の数が減少することで発生する出血性疾患です。免疫性血小板減少症では、免疫系によって患者本人の血小板に対する抗体が作られ、血小板が破壊されます。 皮膚に小さな紫色の斑点(点状出血)ができ、出血しやすくなることがあります。 診断には、血液検査を行って、血小板の数を測定します。 血小板の破壊を防ぐために、コルチコステロイドなどの薬が投与されます。... さらに読む 、 自己免疫性溶血性貧血 自己免疫性溶血性貧血 自己免疫性溶血性貧血は免疫系機能の異常を特徴とする疾患群で、赤血球をまるで異物であるかのように攻撃する自己抗体が生産されます。 症状がまったくない人もいますし、疲労感や息切れを覚えたり、顔が青白くなったりする人もいます。 重症の場合は、黄疸がみられたり、脾腫(脾臓の腫大)のために腹部に不快感や膨満感を覚えたりすることがあります。 血液検査を行って、貧血であることを確認し、自己免疫反応の原因を特定します。... さらに読む 、 悪性貧血 ビタミン欠乏性貧血 ビタミン欠乏性貧血は、ビタミンB12や葉酸の不足または欠乏が原因です。 脱力感や息切れを覚えたり、顔色が青白くなったりすることがあります。 神経が機能不全を起こすことがあります。 血液検査でビタミン欠乏性貧血を示す異常細胞が認められることがあります。 不足しているビタミンを補給します。 さらに読む など)、 アジソン病 副腎皮質機能低下症 副腎皮質機能低下症では、副腎で副腎ホルモンが十分につくられなくなります。 副腎皮質機能低下症は、副腎や下垂体の病気が原因である場合や、特定の薬により引き起こされることがあります。 副腎皮質機能低下症の原因には、自己免疫反応、がん、感染症、その他の病気などがあります。 副腎皮質機能低下症の人は、脱力感や疲労感が生じ、座ったり横になったりした姿勢から立ち上がるとめまいを起こすほか、皮膚の黒ずみがみられる場合もあります。... さらに読む 、 甲状腺炎 橋本甲状腺炎 橋本甲状腺炎は、甲状腺に慢性的な自己免疫性の炎症が生じる病気です。 橋本甲状腺炎は、体内の抗体が自身の甲状腺の細胞を攻撃すること(自己免疫反応)で発生します。 最初、甲状腺は正常に機能していることもあれば、活動が不十分なこともあり(甲状腺機能低下症)、まれですが活動が過剰になっていること(甲状腺機能亢進症)もあります。 ほとんどの人が最終的に甲状腺機能低下症になります。 甲状腺機能低下症では通常、疲労を感じ、寒さに耐えられなくなります。 さらに読む 、 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチは炎症性関節炎の1つで、関節(普通は手足の関節を含む)が炎症を起こし、その結果、関節に腫れと痛みが生じ、しばしば関節が破壊されます。 免疫の働きによって、関節と結合組織に損傷が生じます。 関節(典型的には腕や脚の小さな関節)が痛くなり、起床時やしばらく動かずにいた後に、60分以上持続するこわばりがみられます。 発熱、筋力低下、他の臓器の損傷が起こることもあります。... さらに読む があります。
10%の患者が 胃がん 胃がん ヘリコバクター・ピロリの感染は胃がんの危険因子です。 漠然とした腹部の不快感、体重減少、筋力低下が典型的な症状の一部です。 診断としては内視鏡検査や生検などを行います。 胃がんは早期に他の部位に転移する傾向があるため、生存率は低くなっています。 がんを摘出したり、症状を緩和するために手術が行われます。 さらに読む や リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫とは、リンパ系および造血器官に存在するリンパ球のがんです。 リンパ腫は、 リンパ球と呼ばれる特定の白血球から発生するがんです。この種の細胞は感染を防ぐ役割を担っています。リンパ腫は、主要な白血球であるBリンパ球およびTリンパ球のいずれの細胞からも発生する可能性があります。Tリンパ球は免疫系の調節やウイルス感染に対する防御に重要です... さらに読む を発症します。
分類不能型免疫不全症を引き起こす遺伝子変異が遺伝することがありますが、ほとんどの場合は自然に発生します。
分類不能型免疫不全症の症状
一般に、副鼻腔や肺の感染症(特に 肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む )を繰り返します。慢性のせきが出たり、血の混じったたんを吐いたり、呼吸困難が起きたりすることがあります。頻繁な肺の感染症がある分類不能型免疫不全症は、 気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症は、気道の壁が損傷を受けて、呼吸の管や気道の一部(気管支)が広がったまま元に戻らない状態(拡張症)です。 最も一般的な原因は、重度の呼吸器感染症や繰り返す呼吸器感染症で、これは肺または免疫系にすでに異常がある人によくみられます。 ほとんどの患者に慢性的なせきがみられ、せきとともに血が出たり、胸痛が現れたり、肺炎を繰り返したりす... さらに読む を発症することがあり、気道が広くなり(拡張)、粘液の除去や肺からの空気の出入りが困難になります。
下痢が起こることもあり、消化管から食物を十分に吸収できなくなる場合があります。脾臓が大きく腫れることもあります。
ほとんどの患者が正常な寿命を全うしますが、リンパ腫や自己免疫疾患などの別の疾患を発症し治療が困難な場合は、寿命が短くなることがあります。
分類不能型免疫不全症の診断
血液検査
典型的な症状があれば、分類不能型免疫不全症が疑われます。
免疫グロブリンの量を測定するとともに、体がワクチンに反応して免疫グロブリンを生産する能力を調べるために血液検査を行います。
分類不能型免疫不全症の診断が下された場合、医師はこの病気の患者によく発生する病気(自己免疫疾患、がん、肺の病気など)の有無を確認する検査を年1回行います。検査としては、血液検査、 スパイロメトリー 呼気流量(吐く息の速さ)の測定 (空気を吸入する量と吐き出す量、および1回の呼吸にかかる時間を測定する肺の検査)、画像検査(例えばCT検査)などがあります。
分類不能型免疫不全症の治療
免疫グロブリン製剤
感染を治療するための抗菌薬
不足している免疫グロブリンを補うために、生涯にわたって免疫グロブリン製剤(免疫系が正常な人の血液から採取した抗体)が投与されます。静脈内に月1回、もしくは皮膚の下に週1回または1カ月に1回注射します。
感染に対する治療として速やかに抗菌薬が投与されます。ときに感染症を予防するための抗菌薬を定期的に服用します。
自己免疫疾患は、必要に応じて免疫系の機能を抑制するか調節する薬剤(リツキシマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、コルチコステロイドなど)により治療します。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:分類不能型免疫不全症(CVID)コミュニティーセンター(Immune Deficiency Foundation: CVID Community Center):分類不能型免疫不全症の診断、治療、患者へのアドバイスなどの情報を含む一般的な情報