カリウム濃度の低下には多くの原因がありますが、通常は嘔吐、下痢、副腎の病気、利尿薬の使用が原因で起こります。
カリウム濃度が低下すると、筋力低下、筋肉のけいれんやひきつり、さらには麻痺が生じるほか、不整脈を起こすことがあります。
診断は、カリウム濃度を測定する血液検査に基づいて下されます。
通常は、カリウムを豊富に含む食べものを食べるか、カリウムのサプリメントを飲むだけで、治療としては十分です。
(電解質の概要 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む 、 体内でのカリウムの役割の概要 体内でのカリウムの役割の概要 カリウムは体内に存在する電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルです。( 電解質の概要も参照のこと。) 体内のカリウムのほとんどは細胞内に存在しています。 カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質です。 血液中のカリウム濃度は、狭い範囲内に維持する必要があります。血液中のカリウム濃度が高すぎたり( 高カリウム血症)、低すぎたり( 低カリウム血症)すると、不整脈や心停止などの重大な結果を招くこ... さらに読む も参照のこと。)
カリウム 体内でのカリウムの役割の概要 カリウムは体内に存在する電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルです。( 電解質の概要も参照のこと。) 体内のカリウムのほとんどは細胞内に存在しています。 カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質です。 血液中のカリウム濃度は、狭い範囲内に維持する必要があります。血液中のカリウム濃度が高すぎたり( 高カリウム血症)、低すぎたり( 低カリウム血症)すると、不整脈や心停止などの重大な結果を招くこ... さらに読む は体内に存在する電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラル ミネラルの概要 体の細胞が正常に機能するには、ミネラルが必要です。体は、以下のものを比較的大量に必要とします。 カルシウム 塩化物 マグネシウム リン さらに読む です。カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質です。
低カリウム血症の原因
典型的には、嘔吐や下痢、過剰な下剤の使用により消化管から大量のカリウムが失われることが原因で低カリウム血症が起こります。
ときに、過量のカリウムが尿中に排出される場合がありますが、これは通常、利尿薬(腎臓に働きかけて過剰なナトリウム、水、カリウムを排出させる薬)によるものです。
クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は、コルチコステロイドが過剰な状態であり、通常はコルチコステロイドの使用または副腎による過剰生産によるものです。 通常、クッシング症候群の原因は、ある病気の治療のためのコルチコステロイドの使用、または副腎でのコルチコステロイドの過剰生産を引き起こす下垂体や副腎の腫瘍です。 クッシング症候群はまた、その他の部位(肺など)に腫瘍がある場合に起こることもあります。 クッシング症候群の人は、体幹の周りに過剰な脂肪がつき、顔が丸く... さらに読む など多くの副腎疾患では、アルドステロンというホルモンが副腎で過剰につくられ、これが腎臓に働きかけて大量のカリウムを排出させます。
特定の薬剤(インスリン、サルブタモール、テルブタリンなど)は、血液中から細胞にカリウムを移動させるため、低カリウム血症を引き起こす可能性があります。しかし、カリウムを喪失させる要因がほかにもあるのでない限り、こうした薬剤による低カリウム血症は一時的なものに過ぎません。
低カリウム血症はときに低マグネシウム血症(血液中のマグネシウム濃度が低くなった状態 低マグネシウム血症(血液中のマグネシウム濃度が低いこと) 低マグネシウム血症とは、血液中のマグネシウム濃度が非常に低い状態をいいます。 ( 電解質の概要、 体内でのマグネシウムの役割の概要も参照のこと。) マグネシウムは体内に存在する 電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルですが、体内の大半のマグネシウムは電荷を帯びておらず、タンパク質と結合しているか、骨に蓄えられています。血液中に含まれる マグネシウムはごく微量であるものの、骨や歯の形成および、神経や筋肉の正常... さらに読む )とともに発生するか、または低マグネシウム血症により引き起こされます。
カリウムは多くの食物(豆類、濃い緑の葉野菜、ジャガイモ、魚、バナナなど)に含まれているため、摂取量が少なすぎて低カリウム血症になることはめったにありません。
低カリウム血症の症状
血液中のカリウム濃度がわずかに低下した程度では、普通は症状は生じません。
より大きく低下すると、筋力低下、筋肉のけいれんやひきつり、場合によっては麻痺が生じます。
不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む がみられることもあります。心疾患を患っている人や、ジゴキシンという心臓の薬を使用している人では、カリウム濃度がわずかに低下しただけで不整脈が起こるかもしれません。
低カリウム血症が長期にわたって続くと、腎臓に問題が生じることがあり、結果として頻尿や大量の水分摂取につながります。
低カリウム血症の診断
血液中のカリウム濃度の測定
心電図検査
ときに尿中のカリウム量の測定
診断は、測定の結果、血液中のカリウム濃度が低い場合に下されます。医師はその後、カリウム濃度が低下した原因を調べます。
症状(嘔吐など)や使用している薬剤その他の物質から、原因が明らかになることがあります。原因がはっきりしない場合、尿中へのカリウム排泄量を測定し、過剰な排出が原因であるかどうかを判断します。
低カリウム血症の治療
カリウムのサプリメント
特定の病気が低カリウム血症を引き起こしている場合は、その病気を治療します。
通常は、カリウムを豊富に含む食物を食べるか、サプリメントを服用することでカリウムを補うことができます。カリウムは消化管を刺激することがあるため、サプリメントは1回に多量に摂取するよりも、1日数回に分けて食べものと一緒に少量ずつ摂取するようにします。ワックスマトリックス型またはマイクロカプセルに入れたものなど、特殊なタイプの塩化カリウムのサプリメントを使用すれば、消化管への刺激は大幅に減少します。
以下の状況では、低カリウム血症をより迅速に治療するために、カリウムを静脈から投与します。
カリウム濃度が危険なほど低い。
カリウム濃度の低下により不整脈が起きている。
口から服用するサプリメントの効果がない。
サプリメントの摂取で補う量よりも多くのカリウムを失い続けている。
利尿薬を服用している人でも、大半はカリウムのサプリメントを摂取する必要はありません。ただし、医師は定期的に血液中のカリウム濃度を測定して、必要に応じてサプリメントを処方します。アミロライド(amiloride)、エプレレノン、スピロノラクトン、トリアムテレンなど、腎臓にカリウムを保持させる利尿薬(カリウム保持性利尿薬)を用いる治療法もありますが、これらの薬の使用は腎臓が正常に機能している場合に限られます。
低マグネシウム血症 低マグネシウム血症(血液中のマグネシウム濃度が低いこと) 低マグネシウム血症とは、血液中のマグネシウム濃度が非常に低い状態をいいます。 ( 電解質の概要、 体内でのマグネシウムの役割の概要も参照のこと。) マグネシウムは体内に存在する 電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルですが、体内の大半のマグネシウムは電荷を帯びておらず、タンパク質と結合しているか、骨に蓄えられています。血液中に含まれる マグネシウムはごく微量であるものの、骨や歯の形成および、神経や筋肉の正常... さらに読む が低カリウム血症とともに発生している場合は、それも治療します。