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抜毛症(抜毛癖)

執筆者:

Katharine Anne Phillips

, MD, Weill Cornell Medical College;


Dan J. Stein

, MD, PhD, University of Cape Town

レビュー/改訂 2021年 6月
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本ページのリソース

抜毛症では、繰り返し毛髪を引き抜き、結果として脱毛が生じます。

  • 抜毛症の人は、毛を抜く直前に緊張感や不安を抱いていて、毛を抜くことで、そうした感情が和らぐことがあります。

  • 一般的に症状の重症度は変動しますが、症状が生涯続く場合もあります。

  • 毛髪が少なくなるほど毛を抜いていて、毛を抜く行為をやめようとしてもやめられず、そのために強い苦痛を感じているか、日常生活に支障をきたしている場合に、この病気の診断が下されます。

  • 抜毛症に焦点を合わせた認知行動療法と、特定の抗うつ薬などの薬剤の使用が、症状のコントロールに役立つことがあります。

この病気の人は、美容以外の理由で毛髪を強迫的に引っ張ったり、引き抜いたりします。つまり、自分の外見をよくするために毛を抜いているわけではありません。通常は頭皮、まゆ、まぶたの毛が抜かれますが、あらゆる部位の体毛が対象になりえます。

抜毛症は思春期の直前または直後に始まるのが典型的です。抜毛症は人口の約1~2%にみられます。抜毛症の成人患者の約90%は女性です。

症状

どこの毛がどれだけ抜かれるかは、人によって異なります。抜毛症の人では、数カ所の毛が完全になくなることもあります。まつ毛やまゆ毛がなくなることもあります。毛が薄くなるだけの人もいます。時間が経つにつれて、毛髪を抜く部位が変わる場合もあります。

いくらか無意識に、それについて考えることなく毛を抜いてしまう人もいます。一方で、この行為をより意識的に行う人もいます。

抜毛症の人は(醜形恐怖症 醜形恐怖症 醜形恐怖症(身体醜形障害とも呼ばれます)では、実際には存在しない外見上の欠点やささいな外見上の欠点にとらわれることで、多大な苦痛が生じたり、日常生活に支障をきたしたりします。 典型的な例では、自分の体には外見上大きな欠点があると思い込み、毎日何時間も思い悩みますが、そのような「欠点」は体の様々な部分にみられます。... さらに読む の人がそうであるように)自分の外見に不満があって、それを直すために毛髪を抜くわけではありません。しかし、毛を抜く直前に緊張感や不安を抱いていて、毛を抜くことで、そうした感情が和らぐことがあります。そうすることで、満足感が得られることもあります。

毛を抜く行為には多くの行為(儀式)が伴うことがあります。抜くべき特定の種類の毛を苦労して探すこともあります。毛を抜いた後に、指にはさんで転がしたり、毛の房を歯にはさんで引っ張ったり、毛をかんだりすることがあります。多くの患者が抜いた毛を飲み込みます。飲み込まれた毛がかたまりになって、胃や消化管のその他の部分で動かなくなることがあります。このようなかたまりは 毛髪胃石 胃石 胃石は、部分的に消化された物質や消化されなかった物質が集まって密に固まったものであり、胃や腸の中で動かなくなることがあります。 消化できない物質のかたまりが胃の中で動かなくなることがあります。 ほとんどの胃石は症状を引き起こしません。 診断はX線検査などの画像検査や内視鏡による消化管の観察結果に基づいて下されます。... さらに読む 胃石 と呼ばれ、これにより、食事中すぐに満腹感を覚えるようになったり、吐き気、嘔吐、痛みなどの消化器症状が起きたりすることがあります。

抜毛症の人の多くは、繰り返し 皮膚をむしったり 皮膚むしり症 皮膚むしり症では、繰り返し皮膚をむしることで、皮膚が傷つきます。 皮膚むしり症の人は、皮膚をむしる直前に緊張感や不安を抱いていて、皮膚をむしることで、そうした感情が和らぐことがあります。 傷ができるほど皮膚をむしり、皮膚をむしる行為をやめようとしてやめられず、また自分の行動のために大きな苦痛を感じているか、日常生活に支障をきたしている場合に、この病気の診断が下されます。 皮膚むしり症に焦点を合わせた認知行動療法と、特定の抗うつ薬または さらに読む 、爪や頬の内側をかんだりするなど、 体に関連する反復行為 身体集中反復行動症 身体集中反復行動症では、爪をかむ、唇をかむ、頬の内側をかむなどの自分の体に影響を及ぼす行為を繰り返し行いますが、その行為を何度もやめようとします。 身体集中反復行動症の人は、爪や唇をかむ直前に緊張感や不安を抱いていて、そのような行動をすることで、その感情が和らぐことがあります。 損傷が起きるほど体の一部をむしったりかんだりし、その行為をやめようとしてやめられず、また自分の行動のために大きな苦痛を感じているか、行動のために日常生活に支障を... さらに読む も行います。また、 抑うつ うつ病 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む がみられることもあります。

自分の外見や自分の行為を自制できないことに困惑したり、恥じたりすることがあります。かつらやスカーフを着けて脱毛を隠そうとすることもあります。脱毛を隠すために、より広い部分から毛を引き抜く人もいます。他者に脱毛を見られる状況を避けることもあります。典型的には、家族以外の人前で毛を抜くことはありません。自制心を失うことで苦痛を覚え、毛を引き抜く行為を何度もやめようとしたり、減らそうとしたりすることもありますが、できません。

ほかの人やペットの毛を引き抜いたり、衣服や毛布などの織物から糸を引き抜いたりする患者もいます。

一般的に症状の重症度は変動しますが、症状が生涯続く場合もあります。

診断

  • 具体的な診断基準に基づく医師による評価

抜毛症の診断は以下の症状に基づいて下されます。

  • 脱毛が生じるほど毛を抜いている

  • 毛を抜く行為を何度も減らそうとしたり、やめようとしたりしている

  • その行動のために大きな苦痛が生じているか、日常生活に支障をきたしている

治療

  • 薬剤

  • 認知行動療法

ときに、症状をコントロールするために薬が処方されます。選択的セロトニン再取り込み阻害薬やクロミプラミン(どちらも 抗うつ薬 うつ病に対する薬物治療 アゴメラチン(agomelatine)は、新しいタイプの抗うつ薬で、うつ病エピソードの治療法になる可能性があります。 うつ病の治療には数種類の薬剤が使用できます。 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 新規抗うつ薬 複素環系抗うつ薬 さらに読む の一種)が役立つことがあり、 抑うつ うつ病 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む 不安 不安症の概要 不安は誰もが普通に経験する神経質、心配、困惑の感情です。不安は幅広い精神障害、例えば全般不安症、パニック症、恐怖症などでもみられます。このような障害はそれぞれ別のものですが、いずれも特に不安と恐怖に関連した苦痛と日常生活への支障を特徴としています。 不安に加え、患者が息切れ、めまい、発汗、心拍数の上昇、ふるえなどの身体症状を経験することも... さらに読む の症状もみられる場合には特に有用となります。N-アセチルシステインも役に立つことがあります。

抜毛症に焦点を合わせた認知行動療法を行うことで、症状が軽減することもあります。最もよく用いられる認知行動療法は習慣逆転法です。この治療法では、対象者は次のことを教わります。

  • 自分がしている行為に対する自覚を高める

  • 問題の行為の引き金になる状況を特定する

  • 毛を抜く行為を別の行為(こぶしを握りしめる、編み物をする、手の上に座るなど)に置き換えるなど、抜毛をやめるのに役立つ対処法を実践する

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