(睡眠の概要 睡眠の概要 睡眠は生存と健康に欠かせませんが、睡眠がなぜ必要で、正確にはどのような効果があるのか、まだ完全には解明されていません。睡眠による効果の1つは、日中の作業効率を回復させることです。 必要な睡眠時間は人によって大きく異なりますが、通常は1日6~10時間です。ほとんどの人は夜に眠ります。しかし、勤務形態に合わせるため昼間に睡眠をとらなければなら... さらに読む も参照のこと。)
成人でも小児でも、睡眠中に、ほとんど記憶に残らない様々な行動を無意識のうちに起こすことがあります。
入眠の直前に腕や体全体がビクッと動くことはほぼすべての人が経験します。ときには脚にも同様の現象がみられます。入眠直後や覚醒時に、睡眠麻痺(体を動かそうとしても動かせない状態)が起こったり、浮かんでは消える短時間の映像や思考が生じたりすることもあります。歯を食い縛ったり、歯ぎしりをしたり、悪夢を見たりする人もいます。
小児では、睡眠時遊行症、頭を大きく振る動作、夜驚症などがよくみられ、親を非常に心配させることがあります。通常、本人はこれらの現象を覚えていません。その他の睡眠時随伴症には、悪夢、レム睡眠行動障害、睡眠に関連する脚の筋肉のけいれんなどがあります。
夜驚症
夜驚症(やきょうしょう)は、睡眠中に恐怖で起き上がったり、悲鳴を上げたり、腕を振り回したりする発作です。眼が見開き、心臓の鼓動が速くなります。本人は非常に怯えた様子を呈します。発作は通常、部分的に覚醒しているときや、ノンレム睡眠の最も深い段階から目覚めたときに起こり、典型的には夜の最初の数時間にみられます。
夜驚症は悪夢とは異なり、睡眠時遊行症に至ることがあります。
夜驚症は小児に多くみられます。眼を覚まさせると、より強い恐怖が生じるため、起こしてはいけません。非常に苦しそうに見えますが、起床後に発作の事実や夢に見た映像を覚えていることはなく、こうした睡眠中の行動によって精神的な問題が生じることもありません。そのため、親も過剰に悩む必要はありません。通常は、成長するにつれて発作が起こらなくなります。
成人の発作には、しばしば精神的な問題またはアルコール使用障害が関連しています。
小児であれば、親が安心させるだけで十分な場合があります。学業などの活動に支障をきたす場合、比較的年長の小児であれば、 ベンゾジアゼピン 抗不安薬と鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬は、不安を和らげたり睡眠を補助したりするために使用される処方薬ですが、その使用は依存や物質使用障害を引き起こすことがあります。 不安を和らげるまたは睡眠を補助するための処方薬の使用は、依存を引き起こす可能性があります。 過剰摂取により、眠気、錯乱、呼吸抑制が生じる可能性があります。 長期間使用後にやめると、不安、易刺激性、睡眠障害を引き起こします。 薬に依存するようになっても、用量を減らすことにより徐々にやめることができ... さらに読む 系薬剤(ジアゼパム、クロナゼパム、アルプラゾラムなど)による治療が役立つことがあります。不安の治療(抗不安薬 治療 )や睡眠の誘導(鎮静薬)に用いられるこれらの薬剤を、就寝の90分前に服用します。これらの薬剤により、小児はよく眠れるようになり、夜驚症が起こりにくくなる可能性があります。しかし、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期的な使用は、 薬物依存 抗不安薬と鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬は、不安を和らげたり睡眠を補助したりするために使用される処方薬ですが、その使用は依存や物質使用障害を引き起こすことがあります。 不安を和らげるまたは睡眠を補助するための処方薬の使用は、依存を引き起こす可能性があります。 過剰摂取により、眠気、錯乱、呼吸抑制が生じる可能性があります。 長期間使用後にやめると、不安、易刺激性、睡眠障害を引き起こします。 薬に依存するようになっても、用量を減らすことにより徐々にやめることができ... さらに読む をもたらすことがあります。そのため、通常これらの薬剤の使用は、比較的短期間(約3~6週間)に留められます。
成人では精神療法または薬物療法が有益な場合があります。
悪夢
悪夢は鮮明かつ恐ろしい夢で、突然目が覚めます。小児は、成人と比べて悪夢をよく見る傾向があります。悪夢はレム睡眠中に起こります。
ストレスを抱えているとき、熱があるとき、極度に疲れているとき、飲酒したときなどは悪夢を見やすくなります。
悪夢の治療が必要な場合は、その原因になっている問題に着目します。
睡眠時遊行症(夢遊病)
睡眠時遊行症は、睡眠中の人が自覚のないまま半ば無意識の状態で歩き回る現象で、小児期の後期と青年期に最も多くみられます。睡眠時遊行症はノンレム睡眠の最も深い段階で起こります。
睡眠時遊行症の人は、歩きながら繰り返し何かをつぶやいたり、障害物にぶつかってけがをすることがあります。ほとんどの人は睡眠中に歩き回ったことを覚えていません。
睡眠不足であったり、目がさえるような行動をすると(表「 睡眠を改善するための行動修正 睡眠を改善するための行動修正 」を参照)、睡眠時遊行症が起こりやすくなります。例えば、就寝前にカフェインを摂取したり、運動したり、興奮するようなテレビ番組を見たりすると、睡眠時遊行症が起こりやすくなります。
通常、睡眠時遊行症によってけがをするのでない限り、特別な治療は不要です。
次に挙げる一般的な対策を講じることで、睡眠時の遊行の頻度を低下させる助けになります。
睡眠を改善する対策を講じる(例えば、就寝前は、運動やカフェインの摂取など、心身を刺激する行動を避ける)
患者がベッドを離れるとアラームが鳴るようにする
ドアにアラームを設置する
遊行中のけがを予防するには、次のような対策が役立ちます。
無理に目を覚まさせると患者が興奮することがあるため、ベッドに戻るよう優しく誘導する
遊行中の歩行の邪魔になりそうな障害物を排除しておく
窓は閉めて鍵をかけておく
睡眠時遊行症のある人は、ベッドから出るときにけがをしないよう、低めのベッドや床に布団を敷いて寝るようにする
一般的な対策で効果がなければ、 ベンゾジアゼピン 抗不安薬と鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬は、不安を和らげたり睡眠を補助したりするために使用される処方薬ですが、その使用は依存や物質使用障害を引き起こすことがあります。 不安を和らげるまたは睡眠を補助するための処方薬の使用は、依存を引き起こす可能性があります。 過剰摂取により、眠気、錯乱、呼吸抑制が生じる可能性があります。 長期間使用後にやめると、不安、易刺激性、睡眠障害を引き起こします。 薬に依存するようになっても、用量を減らすことにより徐々にやめることができ... さらに読む 系薬剤(特にクロナゼパム)が有用となる場合があります。ただし、この種の薬剤には日中の眠気などの重大な副作用があります。ベンゾジアゼピン系薬剤の長期的な使用は、 薬物依存 抗不安薬と鎮静薬 抗不安薬と鎮静薬は、不安を和らげたり睡眠を補助したりするために使用される処方薬ですが、その使用は依存や物質使用障害を引き起こすことがあります。 不安を和らげるまたは睡眠を補助するための処方薬の使用は、依存を引き起こす可能性があります。 過剰摂取により、眠気、錯乱、呼吸抑制が生じる可能性があります。 長期間使用後にやめると、不安、易刺激性、睡眠障害を引き起こします。 薬に依存するようになっても、用量を減らすことにより徐々にやめることができ... さらに読む をもたらすことがあります。
レム睡眠行動障害
この病気は、レム睡眠中に(下品に)話したり、ときに攻撃的な動きをしたりするもので、これらの行動は通常、夢に反応して起こります。
レム睡眠行動障害は高齢者に多くみられます。この病気の人のほとんどに、 パーキンソン病 パーキンソン病 脳は、何百万もの神経細胞を含む灰白質と白質から構成されています。これらの細胞(ニューロン)は、神経伝達物質という化学信号を放出することによって情報のやりとりをしています。ニューロンが刺激されると、ニューロンから神経伝達物質が放出され、それがシナプスと呼ばれる隙間を渡って、別のニューロン上の受容体に結合することで信号が送られます。 パーキンソン病では、筋肉の動きに関与する脳の領域、特に中脳の黒質にある色素性ニューロンが変性しています。この... さらに読む 、 多系統萎縮症 多系統萎縮症(MSA) 多系統萎縮症は死に至る進行性の病気で、筋肉が硬くなり(筋強剛)、運動障害、協調運動障害、体内プロセス(血圧や膀胱の制御など)の機能不全などが起こります。 運動や多くの体内プロセスを制御している脳領域に変性が起こります。 症状には、パーキンソン病に似た症状、立ち上がったときの低血圧(起立性低血圧)、排尿の問題、便秘などがあります。 医師は、レボドパ(パーキンソン病の治療に用いられる薬剤)を使用したときの反応と、MRI検査および自律神経機能... さらに読む 、または レビー小体型認知症 レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症とは、精神機能が進行性に失われていく病気で、神経細胞の中にレビー小体が認められることを特徴とします。パーキンソン病認知症は、パーキンソン病患者において精神機能が失われていく病気で、神経細胞の中にレビー小体が認められることを特徴とします。 レビー小体型認知症の患者は目覚めた状態とうとうとした状態との間で変動するほか、幻覚が起こったり、絵を描くのが困難になったり、パーキンソン病と同様の動作困難が生じたりします。... さらに読む などの脳組織の変性を引き起こす病気があります。 アルツハイマー病 アルツハイマー病 アルツハイマー病は、精神機能が次第に失われていく病気であり、神経細胞の消失、ベータアミロイドと呼ばれる異常タンパク質の蓄積、神経原線維変化といった、脳組織の変性を特徴とします。 最近の出来事を忘れるのが初期の徴候で、続いて錯乱が強くなっていき、記憶以外の精神機能も障害され、言語の使用と理解や日常生活行為にも問題が生じるようになります。 症状が進行すると普段の生活が送れなくなり、他者に完全に依存するようになります。... さらに読む の発症リスクがやや高い可能性があります。一部の人は、レム睡眠行動障害の診断から何年も経過してからパーキンソン病を発症します。
夜驚症の人と異なり、レム睡眠行動障害の人は、翌日目を覚ましたときに、発作中に鮮明な夢を見たことを覚えている場合があります。
攻撃的な動きとしては、腕を振り回す、殴る、蹴るなどがあります。攻撃的な行動は意図的なものではなく、誰かに向けられたものでもありません。知らないうちに、けがをしたり、一緒に寝ている人にけがをさせたりすることがあります。また、この行動により眠りが妨げられて、日中に疲労や眠気が生じます。
多くの場合、レム睡眠行動障害は、本人またはベッドパートナーによる症状の説明に基づいて診断できます。しかし、診断できないときは通常、 筋電図検査 筋電図検査と神経伝導検査 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む を含む 睡眠ポリグラフ 検査 検査が行われます。
脳の変性を引き起こす病気がないかを調べるため、医師は 神経学的診察 神経学的診察 神経の病気が疑われる場合、医師は身体診察を行って、すべての器官系の評価を行いますが、特に神経系に重点が置かれます。神経系の診察(神経学的診察)では、以下の要素が評価されます。 精神状態 脳神経 運動神経 感覚神経 さらに読む を行い、精神状態や脳と神経の機能を評価します。異常が見つかったら、CTまたはMRI検査を行う場合もあります。
レム睡眠行動障害に対する根治的な治療法はありません。しかし大多数の人は、ベンゾジアゼピン系薬剤(鎮静薬の一種)の1つであるクロナゼパムで症状が軽減します。低用量で効果があり、通常は無期限に服用を続けます。メラトニンもレム睡眠行動障害の症状の緩和に役立ちます。
ベッドパートナーは、危害を被る可能性があることを知っておくべきで、薬剤の効果が出始めるまで別のベッドで寝た方がよいこともあります。レム睡眠行動障害がある人は、とがった物や家具をベッドから遠ざけておくべきです。
睡眠に関連する脚の筋肉のけいれん
健康な中高年の人で、睡眠中にふくらはぎや足の 筋肉のけいれん 筋肉のけいれん 筋肉のけいれんとは、突然起きて短時間だけ持続する、意図しない(不随意の)筋肉または筋肉群の収縮で、通常は痛みを伴います。筋肉のけいれんは、 神経系の機能不全の症状である可能性があります。 筋肉のけいれんの最も一般的な原因は以下のものです。 明らかな理由なく起こる脚の筋肉の良性のけいれん(典型的には夜間に発生する) 運動に伴う筋肉のけいれん(運動中または運動後に発生する) 筋肉のけいれん(「筋肉がつる」とも表現されます)は、健康な人にもし... さらに読む がみられることがよくあります。
医師は通常、他の身体疾患や身体障害の可能性を否定した後、症状に基づいてこの診断を下します。さらなる検査は不要です。
このけいれんを予防するためには、ベッドに入る前に数分間、患部の筋肉をストレッチするとよいでしょう。通常、けいれんが起こると同時にストレッチを行えば、症状は速やかに消失するため、薬物療法より好まれます。カフェインなどの刺激物を避けることも役立つ可能性があります。
多くの薬剤(キニーネ、カルシウムとマグネシウムのサプリメント、ジフェンヒドラミン、ベンゾジアゼピン系、メキシレチンなど)が試されていますが、いずれも効果はないようです。また、副作用が問題となることもあり、特にキニーネやメキシレチンの副作用は厄介です。