感染症、毒性物質、薬剤、がん、栄養欠乏症、糖尿病、自己免疫疾患、その他の病気などが原因となって、多数の末梢神経に機能不全が起こります。
感覚、筋力、またはその両方が障害されます。多くの場合は、まず足や手に、続いて腕、脚、または体幹に症状が現れます。
診断は、筋電図検査、神経伝導検査、血液検査、および尿検査の結果に基づいて下されます。
基礎疾患を治療しても症状が軽減されない場合は、理学療法や薬剤などの治療が有用になることがあります。
(末梢神経系の概要 末梢神経系の概要 末梢神経系とは、中枢神経系以外の神経系、すなわち脳と脊髄以外の神経のことを指します。 末梢神経系には以下のものが含まれます。 脳と頭部、顔面、眼、鼻、筋肉、耳をつなぐ神経( 脳神経) 脊髄と体の他の部位をつなぐ神経(31対の脊髄神経を含む) 体中に分布している1000億個以上の神経細胞 さらに読む も参照のこと。)
多発神経障害には次の2種類があります。
急性(突然始まる)
慢性(数カ月から数年かけて徐々に発生する)
多発神経障害の原因
急性の多発神経障害には、以下のように様々な原因があります。
体が自分の組織を攻撃する 自己免疫反応 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む (ギラン-バレー症候群 ギラン-バレー症候群(GBS) ギラン-バレー症候群は、筋力低下を引き起こす多発神経障害の一種で、筋力低下は通常は数日から数週間かけて悪化し、その後は自然にゆっくりと改善するか正常に戻ります。治療を行えば、もっと早く回復します。 ギラン-バレー症候群は、自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。 通常、筋力低下は両脚で最初に起こり、それから体の上の方に広がります。 筋電図検査と神経伝導検査が診断の確定に役立ちます。... さらに読む など)
特定の毒性物質(リン酸トリオルソクレシル[TOCP]、タリウムなど)
慢性の多発神経障害は、しばしば原因不明です。分かっている原因としては以下のものがあります。
感染症(C型肝炎 C型肝炎(急性) C型急性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が数週間から最大で6カ月の肝臓の炎症です。 C型肝炎は、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用した場合にみられるように、感染した人の血液などの体液と接触することで感染します。 C型急性肝炎では多くの場合、症状が起こりません。 C型急性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。 利用可能なワクチンはありません。 さらに読む 、 HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む 、 ライム病 ライム病 ライム病は、ボレリア属(Borrelia)の細菌によって引き起こされ、マダニが媒介する感染症(ダニ媒介性感染症)で、米国でみられるボレリア属細菌は主にライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ときにボレリア・マヨニイ(Borrelia mayonii)です。これらのらせん形の細菌はスピロヘータと呼ばれています(図「」を参照)。... さらに読む 、 帯状疱疹 帯状疱疹 帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、 ウイルス感染症による痛みのある皮疹で、水痘を引き起こす水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することで生じます。 ウイルスが再活性化する原因は分からないことが多いのですが、病気や薬によって免疫機能が低下したときに起こる場合があります。 帯状疱疹では痛みを伴う水疱の発疹が現れ、患部に慢性痛が生じることもあります。 典型的な水疱が皮膚に帯状に現れると、帯状疱疹の診断が下されます。... さらに読む など)
自己免疫疾患(慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP) 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーは多発神経障害の一種で、ギラン-バレー症候群と同様に筋力が次第に低下していきますが、筋力低下は8週間以上かけて進行します。 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーは、自己免疫反応によって神経の周りにある髄鞘が損傷することで引き起こされると考えられています。 この病気では、筋力低下が8週間以上にわたり持続的に悪化していきます。 筋電図検査、神経伝導検査、髄液の分析が診断の確定に役立ちます。... さらに読む 、血管炎、 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは、関節、腎臓、皮膚、粘膜、血管の壁に起こる慢性かつ 炎症性の自己免疫結合組織疾患です。 関節、神経系、血液、皮膚、腎臓、消化管、肺、その他の組織や臓器に問題が発生します。 診断を下すため、血液検査のほか、ときにその他の検査を行います。 全身性エリテマトーデスの全患者でヒドロキシクロロキンが必要であり、損傷を引き起こし続けている全身性エリテマトーデス(活動性の全身性エリテマトーデス)の患者には、コルチコステロイドな... さらに読む など)
ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症は、サプリメントを摂取しない完全な菜食主義者に発生したり、吸収障害の結果として発生することがあります。 貧血が起こり、蒼白、筋力低下、疲労が生じ、重度の場合には息切れやめまいも起こります。 重度のビタミンB12欠乏症によって神経の損傷が起きることがあり、手足のピリピリ感や感覚消失、筋力低下、反射消失、歩行困難、錯乱、認知症が起こります。 ビタミンB12欠乏症の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む (亜急性連合性脊髄変性症 亜急性連合性脊髄変性症 亜急性連合性脊髄変性症は、ビタミンB12欠乏により脊髄が変性する進行性の病気です。 動きや感覚をコントロールする神経線維が損傷を受けます。 全身の筋力低下、手や足のしびれやピリピリ感、脚のこわばりが現れ、いらだちやすさ、眠気、錯乱がみられることもあります。 ビタミンB12欠乏症は、血液検査により確定できます。 ビタミンB12をすぐに注射や経口で投与すれば、通常は完全に回復します。 さらに読む やしばしば 悪性貧血 ビタミンB12欠乏症 ビタミンB12欠乏症は、サプリメントを摂取しない完全な菜食主義者に発生したり、吸収障害の結果として発生することがあります。 貧血が起こり、蒼白、筋力低下、疲労が生じ、重度の場合には息切れやめまいも起こります。 重度のビタミンB12欠乏症によって神経の損傷が起きることがあり、手足のピリピリ感や感覚消失、筋力低下、反射消失、歩行困難、錯乱、認知症が起こります。 ビタミンB12欠乏症の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む の原因にもなる)
薬剤(例えば、抗てんかん薬のフェニトイン、一部の抗菌薬[クロラムフェニコール、ニトロフラントイン、スルホンアミド系薬剤など]、一部の化学療法薬[ビンブラスチンやビンクリスチンなど])
慢性の多発神経障害の最も一般的な原因は、血糖コントロール不良の糖尿病ですが、過度の飲酒によって起こることもあります。
糖尿病性神経障害は、糖尿病が原因で発生する数種類の多発神経障害です。(糖尿病では 単神経障害 単神経障害 単神経障害は、1本の 末梢神経だけに起こる損傷です。 神経の長時間の圧迫は、単神経障害の最も一般的な原因です。 侵された領域にチクチクする感覚やしびれ、筋力の低下がみられます。 通常、単神経障害の診断は症状と身体診察の結果に基づいて下されます。 通常は、症状を引き起こす活動を止めるか修正し、鎮痛薬を服用することが有用ですが、ときにコルチコステロイドの注射、理学療法、または手術が必要になることもあります。 さらに読む または 多発性単神経障害 多発性単神経障害 多発性単神経障害は、体の別の部位にある2本以上の 末梢神経が同時に機能不全に陥る病気です。異常感覚と筋力低下が起こります。 ( 末梢神経系の概要も参照のこと。) 多発性単神経障害では、通常、数本の神経(体の別々の領域にあることが多い)だけが障害されます。これに対して、 多発神経障害では多数の神経、通常は体の両側でほぼ同じ領域にある多数の神経が障害されます。しかし、多発性単神経障害が多数の神経に生じている場合は、多発神経障害との区別が困難... さらに読む が発生することもあり、後者では、眼や太ももの筋肉に筋力低下がみられるのが典型的です。)
遺伝性の多発神経障害 遺伝性ニューロパチー 遺伝性ニューロパチーは末梢神経が侵される病気で、わずかな症状が徐々に悪化していきます。 ( 末梢神経系の概要も参照のこと。) 遺伝性ニューロパチーでは、以下のいずれかだけが侵されます。 運動神経(運動神経障害) 感覚神経と自律神経(感覚・自律神経障害) さらに読む がある人もいます。
原因に応じて、多発神経障害は以下のものに影響を及ぼします。
運動神経(筋肉の動きを制御する)
感覚神経(感覚情報を伝える)
脳神経(頭部、顔面、眼、鼻、特定の筋肉、耳を脳とつないでいる)
自律神経系(血圧や心拍数などの無意識で働く機能をコントロールしている)
上記の組合せ
多発神経障害は以下のいずれかの損傷により生じます。
軸索 神経細胞の典型的な構造 (情報を伝える神経の長い枝)(糖尿病や腎不全でみられる可能性がある)
多発神経障害の症状
多発神経障害の症状は、原因に応じて、突然現れる場合もあれば(急性、数日から数週間かけて発生)、一定の期間をかけて緩やかに発生する場合もあります(慢性、数カ月から数年かけて発生)。
急性の多発神経障害(ギラン-バレー症候群 ギラン-バレー症候群(GBS) ギラン-バレー症候群は、筋力低下を引き起こす多発神経障害の一種で、筋力低下は通常は数日から数週間かけて悪化し、その後は自然にゆっくりと改善するか正常に戻ります。治療を行えば、もっと早く回復します。 ギラン-バレー症候群は、自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。 通常、筋力低下は両脚で最初に起こり、それから体の上の方に広がります。 筋電図検査と神経伝導検査が診断の確定に役立ちます。... さらに読む や毒素の影響で起こります)は、しばしば両脚で突然始まり、急速に上方に広がって腕に達します。症状としては筋力低下、チクチクする感覚、感覚消失などがみられます。呼吸を制御している筋肉が侵され、呼吸不全に至ることもあります。
慢性の多発神経障害の多くは感覚を最も障害します。最初に症状が現れるのは、通常は足ですが、ときに手の場合もあります。目立つ症状は、チクチクする感覚、しびれ、灼熱痛、振動覚の消失、位置覚の消失(腕や脚の位置を認識できない状態)などです。位置覚が失われると、歩行が不安定になり、立っているだけでもふらつくようになります。その結果、筋肉が使われなくなり、最終的には筋力低下と筋肉の萎縮が生じます。そして、筋肉が硬直し恒久的に短縮(拘縮)します。
糖尿病性神経障害では、手足にピリピリ感や灼熱感が起こる、遠位型の多発神経障害と呼ばれる症状が現れます。痛みはしばしば夜間に悪化し、触れられたり温度が変わったりすることでもひどくなります。温度感覚と痛覚が失われるために熱傷(やけど)を負ったり、長時間の圧迫やけがによって皮膚に潰瘍ができたりします。過剰の負荷がかかっていることの警告サインである痛みを感じないために、関節は損傷を受けやすくなります。この種の損傷は シャルコー関節 神経病性関節症 神経病性関節症は進行性の関節破壊を原因とし、この関節破壊は、しばしば急速に進行し、患者が痛みを感じず関節の損傷が続くため関節の損傷の初期の徴候に気づかないことによって発生します。 神経病性関節症は、糖尿病や脳卒中など、神経を侵す基礎疾患の結果として起こります。 神経病性関節症は、関節に損傷を与える傷を患者が感じることができないために起こり... さらに読む と呼ばれています。
多発神経障害では、血圧、心拍、消化、唾液分泌、排尿など、無意識に維持される体の機能を制御している 自律神経系 自律神経系の概要 自律神経系は、血圧や呼吸数など、体内の特定のプロセスを調節している神経系です。意識的な努力を必要とせず、自動的(自律的)に機能するのが特徴です。 自律神経系の病気は、体のあらゆる部分とあらゆるプロセスに影響を及ぼす可能性があります。また、自律神経系の病気には、可逆性のものと進行性のものがあります。... さらに読む の神経がしばしば侵されます。典型的な症状は便秘、性機能障害、血圧の変動などで、血圧の変動は立ち上がったときに最も顕著にみられます(起立時にみられるこのような急激な血圧の低下を 起立性低血圧 立ちくらみ 一部の人、特に高齢者では、上体を起こしたり、立ち上がったりすると、血圧が極度に低下することがあります(起立性低血圧や体位性低血圧と呼ばれます)。立ち上がると(特にベッドで寝ていた後や長時間にわたって座っていた後に)数秒間から数分間にわたって気が遠くなる、ふらつき、めまい、混乱、かすみ目などの症状が起こり、横になるとそれらの症状は速やかに消失します。しかし、なかには転倒や失神、また極めてまれですが短時間のけいれんが起こる場合もあります。こ... さらに読む と呼びます)。皮膚の色は青白くなり、乾燥して発汗量が減少します。頻度ははるかに下がりますが、排便または排尿を制御できなくなり、便失禁または尿失禁に至ることもあります。
遺伝性の多発神経障害(シャルコー-マリー-トゥース病 シャルコー-マリー-トゥース病 シャルコー-マリー-トゥース病は、下腿(膝から足首までの部分)の筋肉に筋力低下と萎縮が起こる遺伝性ニューロパチーです。 シャルコー-マリー-トゥース病では、筋肉の活動を制御する神経と感覚情報を脳に送る神経が侵されます。 筋力低下はまず下腿で始まり、それから徐々に脚の上の方に広がっていきます。また、振動、痛み、温度を感じる能力が低下します。 診断を確定するために筋電図検査と神経伝導検査が行われます。... さらに読む など)の人では、つちゆび変形、足のアーチの高さの増大、脊椎の弯曲(脊柱側弯症 脊柱側弯症 脊柱側弯症とは脊柱が異常に曲がった状態です。 脊柱側弯症は生まれつきみられることも、青年期に発生することもあります。 軽症であれば軽度の不快感しか起こらないこともありますが、重症では慢性的な痛みをおぼえたり、内臓に影響したりする場合があります。 診断は診察とX線検査の結果に基づいて下されます。 すべての脊柱側弯症が悪化するわけではありませんが、悪化がみられる場合は、重度の変形を防ぐためにできるだけ早く治療しなくてはなりません。 さらに読む )がみられることがあります。感覚異常と筋力低下は軽度です。これらの症状は、本人も気づかずにいたり、気づいてもたいしたことではないと考えていたりすることがあります。なかには、重症化する患者もいます。
どれだけ完全に回復するかは、多発神経障害の原因によって異なります。
多発神経障害の診断
医師による評価
筋電図検査と神経伝導検査
血液検査と尿検査による原因の特定
通常、医師は症状から多発神経障害と認識できます。身体診察は、多発神経障害を診断し、原因を特定する上で役立ちます。
通常は 筋電図検査と神経伝導検査 筋電図検査と神経伝導検査 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む を行い、特に脚と足を調べます。これらの検査は以下の目的でも用いられます。
多発神経障害の存在を確認する
重症度を判定する
運動神経、感覚神経、その両方のいずれが侵されているのかを判定する
問題の原因になっている損傷の種類を判断する―例えば、神経の周囲にある髄鞘が損傷(脱髄 脱髄疾患の概要 脳の内外のほとんどの神経線維は、脂肪(リポタンパク質)でできた何層もの組織(ミエリンといいます)に包まれています。それらの層は髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる組織を形成しています。髄鞘は電気ケーブルを包んでいる絶縁体のような役割を果たしていて、この働きによって、神経信号(電気インパルス)が神経線維に沿って速くかつ正確に伝えられます。髄鞘が損傷... さらに読む )しているかどうか
多発神経障害と診断された場合は、原因が治療可能な場合もあるため、原因を特定する必要があります。医師は、ほかに症状はないか、症状はどれくらい急速に発生したか、などの質問をします。このような情報から原因が示唆されることがあります。
血液検査や尿検査では、多発神経障害を引き起こしている病気(糖尿病、腎不全、甲状腺機能低下症など)を発見できることがあります。
ときには神経または筋肉の生検が必要になります。
ときに、手足の多発神経障害が、糖尿病の最初の徴候である場合があります。
広範な検査を行っても明らかな原因が見つからない場合は、本人以外の家族の症状が軽度なために疑われていなかっただけで、遺伝性ニューロパチーが原因である可能性もあります。
筋力低下が広範囲に及び、急速に悪化する場合、医師は以下の検査を行います。
腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む により、脳と脊髄の周囲を流れている髄液のサンプルを採取します。髄液中のタンパク質の濃度が高く、白血球が少ないかまったくない場合、脱髄を引き起こす自己免疫疾患(ギラン-バレー症候群 ギラン-バレー症候群(GBS) ギラン-バレー症候群は、筋力低下を引き起こす多発神経障害の一種で、筋力低下は通常は数日から数週間かけて悪化し、その後は自然にゆっくりと改善するか正常に戻ります。治療を行えば、もっと早く回復します。 ギラン-バレー症候群は、自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。 通常、筋力低下は両脚で最初に起こり、それから体の上の方に広がります。 筋電図検査と神経伝導検査が診断の確定に役立ちます。... さらに読む など)が原因として疑われます。
スパイロメトリー スパイロメーターの使い方 を行い、呼吸を制御する筋肉に影響があるかどうかを判定します。スパイロメトリーでは、肺にどれだけ空気を貯められるか、肺からどれだけ、またどれくらい速く空気を吐き出せるかを測定します。
多発神経障害の治療
原因の治療
痛みの緩和
ときに理学療法と作業療法
多発神経障害の具体的な治療法は、以下のように原因によって異なります。
糖尿病 治療 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む :血糖値を注意深くコントロールすれば、進行を遅らせることができ、ときに症状が軽減することもあります。ときに、インスリンを分泌する膵臓の細胞を移植する治療(膵島細胞移植 膵臓移植 膵臓移植とは、死亡した直後の人から健康な膵臓を切除するか、またはまれですが生きている人から膵臓の一部を摘出し、膵臓から十分なインスリンがつくられなくなった重度の糖尿病の人に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 膵臓移植を実施するのは、糖尿病患者の膵臓がインスリンを十分に産生できなくなった場合です。糖尿病で膵臓移植を受けた場合、80%を超える患者は後に血糖値が正常になり、インスリンの必要がなくなります。しかしその恩恵の代わり... さらに読む )が行われることがあり、これにより糖尿病が治り、神経障害が緩和する可能性があります。
多発性骨髄腫 治療 多発性骨髄腫は形質細胞のがんで、異常な形質細胞が骨髄や、ときには他の部位で、制御を失った状態で増殖する病気です。 骨の痛みや骨折が発生することが多く、腎臓障害、免疫機能の低下(易感染状態)、筋力低下、錯乱などがみられることもあります。 血液検査や尿検査で各種の抗体の量を測定することで診断が下され、骨髄生検によって確認されます。 多くの場合、治療には従来の化学療法薬であるコルチコステロイドと、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ、カルフィル... さらに読む 、 肝不全 治療 肝不全は、肝機能が大幅に低下した状態です。 肝不全は、肝臓に損傷が起きる病気や物質により引き起こされます。 ほとんどの患者は 黄疸(皮膚と眼が黄色くなる)になり、疲れて脱力を覚え、食欲を失います。 他の症状には、腹部への体液の貯留( 腹水)や、皮下出血や出血が起きやすい傾向などがあります。 医師は通常、症状と身体診察、および血液検査の結果に基づいて、肝不全の診断を下すことができます。 さらに読む 、 腎不全 治療 急性腎障害では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が急速に(数日から数週間のうちに)低下します。 その原因には、腎臓への血流が減少する状態、腎臓そのものが傷つく状態、腎臓からの尿の排出が妨げられる状態などが挙げられます。 症状としては、腫れ、吐き気、疲労、かゆみ、呼吸困難などのほか、急性腎障害を引き起こしている病気の症状もみられます。 重篤な合併症としては、心不全や高カリウム血症(血液中のカリウム濃度が高くなること)などがあります... さらに読む :これらの病気を治療すれば、ゆっくり回復していきます。
自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む :コルチコステロイド、免疫抑制薬(免疫の働きを抑える薬)、 血漿交換 血小板献血 通常の 献血と 輸血に加えて、特別な処置が行われることがあります。 血小板献血では、全血ではなく 血小板だけを採取します。供血者から採取した血液を機器で成分毎に分け、血小板だけを選別して、残りの成分は供血者に戻します。血液の大部分が体内に戻るため、全血の場合と比べて、1回に8~10倍の血小板を安全に採取できます。3日毎に1回(ただし、供血は1年に24回まで)と、より頻繁に血小板を採取できます。全血の場合は採血にかかる時間は10分程度です... さらに読む (異常抗体などの有害物質をフィルターで血液から取り除く治療法)や、免疫グロブリン製剤(複数のドナーから採取された様々な抗体を含んだ溶液)の静脈内投与などの治療が行われます。
薬剤と毒性物質:薬剤の使用を中止したり、毒素への曝露を避けたりすると、ときに多発神経障害が回復することがあります。特定の薬剤や毒性物質には解毒剤があり、それを使用すれば、毒性作用をいくらか相殺できます。
ビタミンB6の過剰摂取:ビタミンの摂取を中止することにより多発神経障害が解消します。
原因を是正できない場合は、痛みと筋力低下に関連する症状を緩和することが治療の中心になります。理学療法によって筋肉のこわばりを軽減できる場合があり、筋肉が短縮して硬くなるのを予防することもできます。理学療法士や作業療法士からは、役に立つ補助器具を紹介してもらうことができます。
通常は痛み止めとはみなされていない薬剤でも、 神経の損傷による痛み 神経障害性疼痛 神経障害性疼痛は、神経、脊髄、または脳の損傷や機能障害によって起こる痛みです。 ( 痛みの概要も参照のこと。) 神経障害性疼痛の原因としては以下のものがあります。 神経の圧迫:例えば、腫瘍、 椎間板破裂(腰痛または脚に広がる痛みを引き起こす)、または手首の神経の圧迫( 手根管症候群を引き起こす)によるもの 神経の損傷:神経に影響を及ぼす病気(例えば 糖尿病や 帯状疱疹)などでみられる さらに読む を軽減できることがあります。そのような薬剤の例として、抗うつ薬のアミトリプチリン、抗てんかん薬のガバペンチンやプレガバリン、不整脈の治療に使用されるメキシレチンなどがあります。麻酔薬のリドカイン(ローション、軟膏、または皮膚に貼るパッチ剤)も役立つことがあります。