かかとと指の付け根の間にある結合組織が、損傷して痛むことがあります。
かかとの下側に痛みを感じ、朝起きた後や長時間の安静の後、最初に体重をかけたときにしばしば悪化します。
診断は足の診察と画像検査の結果に基づいて下されます。
ストレッチ運動や、氷をあてること、靴を変えること、靴の中に器具を装着すること(かかとを、サポートし、位置を高くし、衝撃を和らげる)、ときにコルチコステロイドの注射が役立ちます。
(足の問題の概要 足の問題の概要 足の問題の一部は、足のけがなどが原因で、足自体から始まります。問題は足のあらゆる骨、関節、筋肉、腱、靱帯に起こります。 足と足首の骨折が、かなり多くみられます。 そうではなく、 糖尿病や 痛風、その他の関節炎など、体の多くの部位に影響を及ぼす病気が原因で足の問題が起こる問題もあります。... さらに読む も参照のこと。)
足底腱膜は、かかとの骨の下側と指の付け根をつないでおり、歩いたり走ったりする際に、ばねを与えるのに欠かせないものです。
足底腱膜症は、ときに足底腱膜炎とも呼ばれます。しかしながら、足底腱膜炎という言葉は正確ではありません。腱膜炎という言葉は腱膜の炎症という意味ですが、足底腱膜症は、炎症というよりは、足底腱膜に繰り返し負荷がかかる病気です。
ほかに足底腱膜症を表す言葉として、踵骨の腱付着部症や 踵骨棘 踵骨棘とは 症候群(かかとの骨棘)があります。踵骨棘(しょうこつきょく)は、かかとの骨に余分なとがった骨が増殖したものです。足底腱膜の張力の増大と足の機能障害が組み合わさることによって、時間をかけて生じます。しかし、踵骨棘のある場合も、ない場合もあります。足底腱膜に過度の緊張がかかると、しばしば小さな裂傷が生じます。足底腱膜症は、かかとの痛みの最も一般的な原因の1つです。
足底腱膜症は、座りがちな生活習慣の人、かかとの高い靴を履く人、足のアーチが異常に高いもしくは低い人、またはふくらはぎの筋肉や、アキレス腱(ふくらはぎの筋肉をかかとの骨に付着させる腱)が硬い人にみられます。普段座っていることの多い人は、通常、突然活動レベルを上げたり、サンダルなど支えの少ない靴を履いたりしたときに発症します。足底腱膜症は、ランナーやダンサーでも多くみられ、その理由は、そうした人では、腱膜への負荷が大きいためで、特に足の向きが悪い場合に負荷が大きくなります。痛みを伴うこの病気は、硬い地面や床の上で長時間立っていたり、歩いたりする職業の人に多くみられます。
肥満、関節リウマチ、その他の関節炎が、足底腱膜症を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。コルチコステロイドの注射が多すぎると、腱膜やかかとの下の脂肪体に損傷を与えることで、足底腱膜症の発症の一因になることがあります。
足底腱膜症の症状
足底腱膜症の患者では、足底腱膜に沿ったどの部位にも痛みが起こりえますが、痛みが最もよくみられるのは足底腱膜がかかとの骨の下側に付着する部分です。患者は、しばしば激しい痛みを感じます(特に朝起きて最初に足に体重をかけたとき)。痛みは、5~10分以内に一時的に解消しますが、その日のうちにまた痛くなることがあります。かかとを蹴り出すとき(歩いたり走ったりするときなど)や長時間の安静の後に、痛みが強くなることがよくあります。その場合、痛みがかかとの下側からつま先に向かって広がります。歩いているときに、足の裏の内側の縁に沿って、焼けるような痛みや刺すような痛みを感じることもあります。
踵骨棘とは
踵骨棘(しょうこつきょく)は、かかとの骨(踵骨[しょうこつ])から余分なとがった骨が増殖したものです。かかとの骨の下側から指の付け根まで伸びている結合組織である足底腱膜が、かかとの骨を過度に引っ張ると、骨棘ができることがあります。通常は骨棘ができると痛みを伴いますが、足が順応するにつれて痛みが軽減することがあります。踵骨棘は、必ずしも症状を引き起こすわけではありません。症状が生じる場合は、ほとんどは手術をしなくても治療できます。 |
足底腱膜症の診断
医師による足の診察
ときにX線検査
医師は足の診察によって、足底腱膜症を診断することがあります。足底腱膜がかかとの骨に付着する場所に圧痛があれば、診断が確定します。
X線検査 X線検査 筋骨格系の病気は、病歴と 診察の結果に基づいて診断されることがよくあります。医師が診断を下したり確定したりするのを助けるために、 臨床検査や 画像検査、 その他の診断方法が必要になることがあります。 筋骨格系の病気の診断には、臨床検査がしばしば役立ちます。例えば、赤血球沈降速度(赤沈)は、血液が入った試験管の中で赤血球が底に沈んでいく速さを測定する検査です。炎症が起きていると、通常は赤沈の値が上昇します。しかし、炎症は非常に多くの病態で... さらに読む では、かかとの骨の底部前縁から踵骨棘が突出しているのが認められることがあります。しかしながら、足底腱膜症の患者では、しばしば踵骨棘がなく、踵骨棘のある患者のほとんどは痛みがないため、踵骨棘があるからといって、必ずしも足底腱膜症が確定するわけではなく、かかとの骨棘を治療しなければならないわけでもありません。
足底腱膜症の治療
ストレッチ運動、装具、夜間用装具
患者は、足底腱膜への負荷と痛みを軽減するために、歩幅を小刻みにし、裸足で歩かないようにするという手段をとることができます。ジョギングなどの、足に衝撃が加わる活動は避けるべきです。減量が必要な場合もあります。ふくらはぎの筋肉や足のストレッチは、しばしば治癒を早めます。装具(靴の中に入れる器具)は、かかとの衝撃を和らげ、かかとをサポートし位置を高くするのに役立ちます。
理学療法と夜間の副木などでの固定が、就寝中にふくらはぎの筋肉と腱膜を伸ばすのに役立ちます。
その他の方法には、粘着テープでのテーピングや足のアーチをサポートする包帯、アイスマッサージ、 非ステロイド系抗炎症薬 非ステロイド系抗炎症薬 痛み止め(鎮痛薬)は、痛みの治療に使用される主な薬剤です。医師が痛み止めを選択する際には、痛みの種類および持続期間と、それぞれの痛み止めで予想されるベネフィットとリスクを考慮します。ほとんどの痛み止めは侵害受容性疼痛(損傷による痛み)に対しては効果がありますが、 神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がありません。多くのタイプの痛み(特に... さらに読む (NSAID)の使用、ときにはコルチコステロイドのかかとへの注射などがあります。コルチコステロイドの注射は、病気を悪化させる場合があるため、通常は数回を超えては行いません。
これらの方法で効果が得られないときは、コルチコステロイドを経口投与し、ギプスを装着することがあります。それでも症状が持続する場合は、足底腱膜にかかる圧力を部分的に取り除くとともに、踵骨棘が痛みの一因と考えられるなら、それを除去するために、手術が必要になる場合があります。
体外パルス活性化療法(EPAT)という新しい治療法では、音波の圧力波をかかとにあてる装置を使用します。圧力波が血行を促進し、それが治癒を助けることがあります。