特発性肺ヘモジデローシスは、肺への出血が繰り返し起こる(びまん性肺胞出血 びまん性肺胞出血 びまん性肺胞出血は、繰り返し起こる、または持続性の肺への出血を特徴とする症候群であり、たいていの場合 自己免疫疾患が原因で起こります。 一般的な症状は呼吸困難とせきであり、しばしばせきに伴って血が出ます。 患者には通常、胸部X線検査、血液検査を行うほか、呼吸の通路を気管支鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて調べる(気管支鏡検査)こともあ... さらに読む )まれな疾患です。肺に漏れ出た赤血球が壊れると鉄が放出され、これが肺に蓄積して肺を傷つけます(ヘモジデリン沈着症 ヘモジデリン沈着症 ヘモジデリン沈着症とは、組織中にヘモジデリンと呼ばれる鉄の沈着が起こり、それが過剰に蓄積することを指して使われる用語です。 ( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) ヘモジデリン沈着症が起こる部位として多いのは肺や腎臓です。ヘモジデリン沈着症の原因には以下のものがあります。 組織への直接出血後、赤血球が分解されて組織内に鉄が放出される 血管内で赤血球が破壊されることによって血液中に鉄が放出され、腎臓で血液の老廃物がろ過される際に腎臓内に鉄が蓄... さらに読む も参照)。特発性とは、原因となる疾患が特にみあたらないことを意味します。主に10歳未満の小児にみられますが、成人の若年層と中年層にもみられます。この疾患では、酸素と二酸化炭素の交換に関わる肺の細胞の異常が背景にあると考えられており、この異常は 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む によるものである可能性があります。患者の中には セリアック病 セリアック病 セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、 吸収不良が生じます。 タンパク質のグルテンの摂取後に、腸の粘膜に炎症が生じます。 症状としては、成人では下痢、低栄養、体重減少などがあります。 小児でみられる症状としては、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便、成長不良などがあります。 診断は、典型的な症状と小腸の粘膜から採取した組織サンプルの検査結果に基づ... さらに読む にも罹患している人がいます。
免疫系 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む の重要な機能に、感染に対する防御があります。免疫系は、感染から体を守るために、微生物を自己に対する異物と認識し、その微生物と結合するタンパク質(抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む )を生産して、微生物を体内から除去できるようにします。 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患とは免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 自己免疫疾患の原因は不明です。 症状は、自己免疫疾患の種類および体の中で攻撃を受ける部位によって異なります。 自己免疫疾患を調べるために、しばしばいくつかの血液検査が行われます。 治療法は自己免疫疾患の種類によって異なりますが、免疫機能を抑制する薬がしばしば使用されます。 さらに読む では、自己の組織が異物であるかのように体が誤って反応してしまいます。肺の自己免疫疾患では、肺の組織が免疫系の攻撃を受けて損傷します。肺が侵される自己免疫疾患では、しばしば他の臓器、特に腎臓も侵されます。
症状
小児における特発性肺ヘモジデローシスの症状には、繰り返す息切れやせきなどがあります。せきは通常、最初はたんを伴いません。後に、せきとともに血が出ることがあります。特発性肺ヘモジデローシスの小児には、代わりに 発育不良 発育不良 発育不良とは、体重増加と体の成長の遅れのことをいい、発達や成熟の遅れにつながります。 病気や適切な栄養をとれないことが原因で発育不良が起こります。 小児の成長曲線、身体診察、健康歴、家庭環境に基づいて診断を下します。 生後1年間の栄養が不足すると、小児に発達の遅れが生じることがあります。 治療法としては、栄養のある食事や病気の治療などがあります。 さらに読む や 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血 鉄欠乏性貧血は、赤血球の生産に必要な鉄の貯蔵量の不足や欠乏によって起こります。 過剰な出血が最も一般的な原因です。 脱力感や息切れを覚えたり、顔が青白くなったりします。 血液検査で鉄分の量が測定できます。 鉄分の量を回復させるために、鉄剤が用いられます。 さらに読む がみられることがあります。発育不良の場合は極めて低体重となります。鉄欠乏性貧血では、疲労感、顔面蒼白、脱力感が生じます。
成人で最もよくみられる症状は活動中の息切れと鉄欠乏性貧血の症状です。
診断
胸部画像検査
血液検査
気管支肺胞洗浄
症状のある人では、貧血がないか確認するために血液検査が行われます。
特発性肺ヘモジデローシスの診断は 気管支肺胞洗浄 気管支鏡による処置 気管支鏡検査とは、気管支鏡(観察用の管状の機器)を用いて発声器(喉頭)や気道を直接観察することです。 気管支鏡の先端にはカメラが付いていて、これによって太い気道(気管支)から肺の内部を観察できます。医師は、気管支鏡に小さな器具を通し、肺や気道組織のサンプルを採取して、肺疾患の診断や一部の肺疾患の治療に役立てることもできます。気管支鏡には、柔軟なもの(軟性気管支鏡)と硬いもの(硬性気管支鏡)があります。気管支鏡によるほとんどの処置(特に診... さらに読む によって確定されます。この手技では、肺の細い気道に気管支鏡を挿入し、そこから食塩水を注入します。そして食塩水を吸い出し、検査室に送って検査します。検査で鉄が過剰に含まれていることが判明し、他の病気で説明がつかない場合、診断が確定されます。
それでも診断が分からない場合は、診断を行うために肺の生検が行われることがあります。
治療
コルチコステロイド
出血しているときは、入院し、酸素投与または呼吸補助が必要になることがあります。出血がひどい場合は 輸血 輸血の概要 輸血とは、血液や血液成分を健康な供血者(ドナー)から病気の受血者(レシピエント)に移すことです。輸血を行うことで、血液が酸素を運ぶ能力を高め、体内の血液量を回復させるとともに、血液凝固の障害を正常にします。 米国では毎年約2100万件の輸血が行われています。典型的な輸血の受血者は以下のような人達です。... さらに読む が必要になることもあります。
免疫系を抑制するためにコルチコステロイドなどの薬剤が投与されます。