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睡眠時無呼吸症候群

執筆者:

Kingman P. Strohl

, MD, Case School of Medicine, Case Western Reserve University

レビュー/改訂 2022年 10月
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やさしくわかる病気事典
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睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea)は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。

  • 睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよくあります。

  • 睡眠時無呼吸症候群により特定の病気や若年での死亡のリスクが高まります。

  • 睡眠時無呼吸症候群の診断は、ある程度は医師による症状の評価に基づいて下されますが、診断を確定し、重症度を決定するには、通常睡眠ポリグラフ検査が用いられます。

  • 睡眠時無呼吸症候群の治療には、持続陽圧呼吸療法と歯科医により調節された口腔内装置が使用され、ときには手術が行われます。

睡眠時無呼吸症候群はとてもよくみられる病気です。世界全体で10億人以上が罹患しています。睡眠時無呼吸症候群には異なるいくつかの種類があり、その原因や危険因子が異なります。

睡眠時無呼吸症候群の種類

睡眠時無呼吸症候群には次の2つの種類があります。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群

  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群

患者の一部では閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群が複合的にみられることもあります。

知っていますか?

  • 日中に強い眠気を催す人やいびきをかく人は、その症状について医師に相談するべきです。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、最も一般的なタイプの睡眠時無呼吸症候群で、睡眠中にのどや上気道が繰り返しふさがれることで発生します。上気道は、口および鼻孔からのどを経て声帯に達する通路で、呼吸に伴いこれらの構造物の位置が変化する場合があります。

この種類の閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、成人の約8~16%の健康および幸福な在り方(ウェルビーング)に影響を及ぼしています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は肥満の人により多くみられます。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は以下の場合に診断されます。

  • 睡眠中に呼吸停止がみられる

  • 1時間当たり5回以上の呼吸停止がある

  • 1回の呼吸停止が10秒以上続く

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の可能性を高める危険因子は数多くあります。 肥満 肥満 肥満とは、体重が過剰な状態です。 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くの カロリーを摂取することになります。 そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。... さらに読む 肥満 は、おそらく加齢やその他の要因と相まって、上気道の狭窄に影響を与えます。過度の飲酒や鎮静薬の使用は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を悪化させます。のどが狭い、首が太い、頭が丸いといった特徴は家族内で遺伝する傾向が高く、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高めます。 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの生産が不十分になる病気で、身体の重要な機能が働く速度が低下します。 顔の表情が乏しく、声がかすれ、話し方はゆっくりになり、まぶたは垂れて、眼と顔が腫れます。 通常は1回の血液検査で診断が確定されます。 甲状腺機能低下症の人は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの投与を受ける必要があります... さらに読む 甲状腺機能低下症 (甲状腺ホルモンが減少する)や 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。... さらに読む 胃食道逆流症(GERD) 、夜間 狭心症 狭心症 狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に供給される酸素が不足するために胸部に一時的な痛みや圧迫感が起きる病気です。 狭心症の人では通常、胸骨の後ろの部分に不快感や圧迫感がみられます。 典型的には狭心症は運動時に発生し、安静にしていると回復します。 狭心症の診断は、症状と心電図検査および画像検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む 先端巨大症 巨人症および先端巨大症 成長ホルモンが過剰につくられると、極端な発育を招きます。この状態は、小児では巨人症と呼ばれ、成人では先端巨大症(末端肥大症)と呼ばれます。 成長ホルモンが過剰につくられるのは、ほとんどの場合、がんではない(良性の)下垂体腫瘍が原因です。 小児では身長が異常に伸び、成人では身長が伸びない代わりに骨が変形します。... さらに読む 巨人症および先端巨大症 (成長ホルモンの過剰分泌による過度の異常成長)も、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の一因となることがあります。ときに、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む により、閉塞性睡眠時無呼吸症候群になることもあります。睡眠時無呼吸症候群になりやすい体質が家族の中で受けつがれる傾向があるため、遺伝的なリスクがあることが考えられます。

知っていますか?

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者は、飲酒や鎮静薬の服用を控える必要があり、就寝前は特に注意すべきです。

小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群

小児の場合は、 扁桃やアデノイドの肥大 小児における扁桃とアデノイドの腫れ 扁桃とアデノイドは、感染症などの原因によって腫れる(大きくなる)こともあれば、出生時から大きい場合があります。扁桃とアデノイドの腫れは小児によくみられるものであり、一般的には治療を必要としません。 小児では、感染症が原因で扁桃とアデノイドが腫れることがありますが、腫れているのが正常な場合もあります。... さらに読む 、重度の過蓋咬合(かがいこうごう:かみ合わせが深すぎること)などの歯科疾患、 肥満 青年における肥満 肥満の定義は、BMI(ボディマスインデックス)が各年齢と性別の95パーセンタイル以上であることとされています。 遺伝やある種の病気によっても肥満は起こりますが、青年の肥満のほとんどは、運動不足や活動レベルで必要とされるよりも多くのカロリーを摂取することが原因です。 肥満の診断は、BMIが各年齢および性別の95パーセンタイル以上であることに... さらに読む 、下あごが異常に小さいなどの先天異常などにより、閉塞性睡眠時無呼吸症候群になることがあります。強い鼻づまりを引き起こす季節性アレルギーは、睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがあります。

小児では、大半の患児にいびきがみられます。他の睡眠症状としては、疲れのとれない睡眠や寝汗などがあります。夜尿がみられる場合もあります。日中にみられる症状には、口呼吸、起床時の頭痛、集中力低下などがあります。学習障害や一部の行動障害(多動性など)は、小児における重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群のよくみられる症状です。小児は成長が遅れることもあります。日中の過度の眠気は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の成人ほどではありません。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

中枢性睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に比べてまれな病気です。脳の脳幹と呼ばれる部分が担っている呼吸制御機能の異常により発生します。正常なら血液中の二酸化炭素(体の正常な化学反応の副産物)の濃度変化に対して、脳幹は極めて敏感に反応します。二酸化炭素の濃度が高い場合は、もっと深く速く呼吸して二酸化炭素を外へ吐き出すように脳幹から呼吸筋に信号が送られ、逆に二酸化炭素の濃度が低い場合は、呼吸を抑えるような信号が送られます。ところが、中枢性睡眠時無呼吸症候群では、脳幹が二酸化炭素の濃度変化に対して適切に反応しません。その結果、中枢性睡眠時無呼吸症候群の患者では、睡眠中に呼吸が停止したり、正常より浅く遅くなることがあります。

脳幹から適切な呼吸の信号が送られない理由は数多くあります。例えば、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む 、脳の感染症(脳炎 脳炎 脳炎とは、ウイルスが脳に直接感染して起こることもあれば、ウイルスやワクチン、その他の物質が炎症を誘発して起こることもあります。炎症が脊髄に波及することもあり、その場合は脳脊髄炎と呼ばれます。 発熱、頭痛、けいれん発作が起こることがあり、眠気、しびれ、錯乱をきたすこともあります。... さらに読む )、または脳の先天異常が脳幹に影響を及ぼす可能性があります。痛みの緩和のために用いるオピオイドや、他のいくつかの薬剤も、中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因となる可能性があります。高地にいる場合も中枢性睡眠時無呼吸症候群になることがあります。また 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全 の人では、中枢性睡眠時無呼吸症候群がみられる可能性があります。極めてまれですが、脳腫瘍が原因となることもあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは異なり、中枢性睡眠時無呼吸症候群は肥満が原因となることはありません。

中枢性睡眠時無呼吸症候群の一種で通常は新生児にみられる「オンディーヌの呪い」と呼ばれる病気では、完全に目が覚めているとき以外は、呼吸が十分にできない、またはまったくできないことがあります。「オンディーヌの呪い」によって死に至る可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠中の患者の症状に最初に気づくのは、通常、側に寝ている人、ルームメイト、同居人などです。いずれのタイプの睡眠時無呼吸症候群でも、呼吸が異常に遅く浅くなることもあれば、呼吸が突然止まって(ときには最大で1分間)、また再開することもあります。

いずれのタイプの睡眠時無呼吸症候群でも、睡眠が妨害されるため、 日中の眠気 不眠症と日中の過度の眠気 睡眠関連の問題で最も多い訴えは、不眠症と日中の過度の眠気です。 不眠症とは、寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚める、あるいは、睡眠の質が悪く、寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする状態です。 日中の過度の眠気は、日中に異常なほど眠くなったり、眠り込んでしまったりする状態を指します。... さらに読む 、疲労、易怒性、朝の頭痛、思考力の低下、集中力の低下などが生じることがあります。過度の眠気があると、車の運転や大型機械の操作、眠気があると危険となるその他の作業を行う際に負傷するリスクが高まります。仕事上の困難や性機能障害を抱えることもあります。血液中の酸素レベルが著しく低下するため、 心房細動 心房細動と心房粗動 心房細動と心房粗動は、非常に速い電気刺激が発生することにより、心房(心臓の上側にある部屋)が急速に収縮すると同時に、一部の電気刺激が心室まで到達することで、ときに心室の収縮も正常より速くかつ非効率になる病態です。 これらの病気は、しばしば心房を拡張させる病態によって引き起こされます。... さらに読む が現れ、血圧が上昇することがあります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群で最もよくみられる症状は いびき いびき いびきとは、睡眠中に鼻やのどで生じる荒い音です。非常に多くみられ、加齢とともにますます多くなります。男性の約57%、女性の約40%がいびきをかきます。しかし、何をいびきとみなすかは、聞き手によって決まるもので、また同じ人でもいびきの大きさや頻度は日によって変わります。そのため、上に挙げたいびきをかく人の割合は、推定値に過ぎません。... さらに読む ですが、いびきをかく人のうち、睡眠時無呼吸症候群を有する人の割合はごくわずかです。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者は、耳をつんざくようないびきをかく傾向があり、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚まします。息が詰まって目が覚め、驚く人もいます。

朝になると、多くの場合、夜中に何度も目覚めたことは覚えていません。目覚めたとき、のどの痛みや口腔乾燥を覚える人もいます。閉塞性睡眠時無呼吸症候群が重症化すると、夜間は睡眠時に荒い鼻息や大きないびきを繰り返し、日中は眠気を催したり、居眠りしたりします。

眠り続けることが難しくなる場合もあります。

一人暮らしの人では、日中の眠気が最も気づきやすい症状でしょう。最終的には、眠気によって日中の活動が妨げられ、生活の質が低下します。例えば、テレビの視聴中や会議中に居眠りしてしまう場合や、さらに眠気が強いと、運転中に赤信号で止まっているときに眠ってしまう場合さえあります。記憶が不確かになる場合や性欲が減退する場合があり、眠気や易怒性のため、積極的に会話に参加できないことから、対人関係が悪化する場合もあります。

睡眠時無呼吸症候群の患者が誰かと同居している場合、患者が睡眠時にじっとしておらずまたうるさいために、ベッドパートナー、ルームメイト、または同居人との関係に悪影響を及ぼすことがあります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む 心臓発作 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 急性冠症候群は、冠動脈が突然ふさがる(閉塞する)ことによって起こります。この閉塞により、その位置と程度に応じて、不安定狭心症か心臓発作(心筋梗塞)が起こります。心臓発作とは、血液供給がなくなることにより心臓の組織が壊死する病気です。 急性冠症候群を発症すると、通常は胸部の圧迫感や痛み、息切れ、疲労などが起こります。... さらに読む 急性冠症候群(心臓発作、心筋梗塞、不安定狭心症) 心房細動 心房細動と心房粗動 心房細動と心房粗動は、非常に速い電気刺激が発生することにより、心房(心臓の上側にある部屋)が急速に収縮すると同時に、一部の電気刺激が心室まで到達することで、ときに心室の収縮も正常より速くかつ非効率になる病態です。 これらの病気は、しばしば心房を拡張させる病態によって引き起こされます。... さらに読む (不規則で異常な心臓のリズム)、 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む 高血圧 などのリスクが高くなります。中年の男性で、1時間に約30回を超える閉塞性睡眠時無呼吸症候群がみられると、若年死のリスクが高まります。

知っていますか?

  • いびきをかく人のうち、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を有するのはごくわずかです。しかしほとんどの閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者は、いびきをかきます。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

中枢性睡眠時無呼吸症候群の患者では、いびきはそれほど強くありません。呼吸のリズムは不規則で、停止することがあります。

チェーン-ストークス呼吸(周期性呼吸)は、中枢性無呼吸の一種です。チェーン-ストークス呼吸では、呼吸が徐々に速くなった後、次第に遅くなり、短時間止まってから再び呼吸が始まります。このような呼吸のサイクルが繰り返され、各サイクルは、30秒から2分間続きます。

肥満低換気症候群

極度の肥満の人は、ピックウィック症候群と呼ばれる肥満低換気症候群になる可能性があり、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を併発することもあります。肥満低換気症候群では、過剰な体脂肪が胸の動きを妨げ、それが横隔膜の下にあると肺を圧迫し、その2つの要因が合わさって呼吸が浅く非効率的になります。過剰な体脂肪がのどの周りにあると上気道を圧迫し、空気の流れを妨げます。呼吸の制御が乱れ、中枢性睡眠時無呼吸症候群を引き起こすこともあります。

睡眠時無呼吸症候群の診断

  • 医師の評価

  • 睡眠ポリグラフ検査

睡眠時無呼吸症候群の診断は、その人の症状に基づいて疑われます。医師が質問票を使用して、日中の過度の眠気など、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が原因の可能性がある症状のスクリーニングに役立てることがあります。通常、睡眠中の患者の呼吸をモニタリングすることによって診断が確定され、重症度も正確に判定することができます。最初のステップでは、通常、患者に携帯用装置を数日間装着してもらい、自宅でのモニタリングを行います。この装置では、呼吸、心拍数、鼻の気流、および酸素レベルをモニタリングできます。患者に睡眠検査室で一晩寝てもらい、睡眠ポリグラフ検査を用いてより徹底的な検査を行うこともできます。この検査は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群の判別に役立つこともあります。

睡眠ポリグラフ検査では以下のようなことを行います。

睡眠検査では無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI)を測定します。AHIは、睡眠時間1時間当たりに発生する無呼吸(apnea)および呼吸数減少(低呼吸[hypopnea])の平均回数を表します。これらが発生する回数が多いほど、睡眠時無呼吸症候群はより重度で、有害な影響となる可能性が高まります。医師はAHIと患者の症状から睡眠時無呼吸症候群を診断します。

原因を特定するために追加の検査が必要になることもあります。睡眠時無呼吸症候群の患者では、高血圧や心房細動などの合併症がないか検査が行われることがあります。中枢性睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、原因を特定するために検査を行わなければならないことはほとんどありません。

睡眠時無呼吸症候群の治療

  • 危険因子のコントロール

  • 持続陽圧呼吸療法または歯科医によって調整されたマウスガードや他の器具の使用

  • 場合によっては気道の外科手術や上気道の電気刺激療法

治療は危険因子と睡眠時無呼吸症候群それ自体の両方に対して行います。

車の運転や大型機械の操作、その他の居眠りすると危険な事態を招く活動に従事するリスクについて、患者に警告する必要があります。患者が手術を受ける際には、麻酔によってさらに気道が狭くなる可能性があるため、睡眠時無呼吸症候群であることを必ず麻酔医に伝える必要があります。

睡眠時無呼吸症候群に向き合う患者や家族に対して情報の提供や支援を行っている支援団体もあります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

治療を受け、治療計画に従っている場合、予後は通常、極めて良好です。余命に影響を与えることなく、非常に重篤な合併症も防ぐことができます。通常、血圧はわずかに低下します。

減量、禁煙、節酒は役に立ちます。鼻の感染症やアレルギーは、治療すべきです。甲状腺機能低下症や先端巨大症があれば、その治療も行います。減量が役に立ちますが、特に眠気および疲労がある患者では減量が困難な場合があります。そのため、極めて過体重(重度の肥満)の人には、しばしば減量手術(肥満外科手術)が推奨されます。そのような人では約85%で、肥満外科手術により睡眠時無呼吸症候群が軽減し、症状が改善します。

大きないびきをかく人や睡眠中によく息が詰まる人は、飲酒を控え、睡眠補助薬や鎮静作用のある抗ヒスタミン薬などの、眠気を誘う薬剤を避けるべきです。横向きに寝たり、ベッドの頭側を高くして寝たりすることにより、いびきを減らせることがあります。背中にひもで固定する特殊な器具を使用することで、眠っているときにあお向けにならないようにできます。単純にいびきを減らすには、いびき防止用に市販されている様々な器具やスプレーが有効な場合がありますが、それらによって閉塞性睡眠時無呼吸症候群が改善するかどうかは明らかになっていません。同様に、いびきに対して一般に行われている外科手術がいくつかありますが、その効果がどれくらいあるのか、どれだけ長く持続するのかについては、ほとんど証明されていません。

持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者で、特に日中の過度の眠気がある患者に対する主な治療法です。持続陽圧呼吸療法とは、気道にやや高い圧を加える機器に接続されたマスクを顔や鼻につけて呼吸することです。このように圧力を高めることで、息を吸い込むときにのどが開くようにします。場合によっては、空気を加湿することもあります。治療を始めてから最初の2週間は、医療従事者が綿密なフォローアップを行い、マスクが適合しているか確認し、マスクを装着したまま眠れるよう患者に適切な助言を与える必要があります。鼻中隔のずれがある場合は、修復することで持続陽圧呼吸療法の成功率が高まる可能性があるため、鼻中隔形成術(鼻中隔のずれを修復する手術)が推奨されることがあります。

しかしながら、多くの人はCPAPに耐えるのが難しいと感じ、そのため使用を中止するか、ときどきしか使用しません。医師や技術者が、患者に適切にフィットする装置を見つける支援をし、患者を励ますことで、CPAPの長期的な成功の可能性が高まります。

持続陽圧呼吸療法を行っていても、日中の過度の眠気が治らない人もいます。このような場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者の日中の眠気の治療に使用される、弱い刺激薬(モダフィニルやソルリアムフェトル[solriamfetol]など)の服用が有益となる可能性があります。そのほかにも、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者のために研究が進められている薬があります。

睡眠時無呼吸症候群が軽度から中程度の患者では、歯科医が調節した取り外し可能な口腔内装置(マウスピースなど)により、閉塞性睡眠時無呼吸症候群やいびきを緩和できることがあります。この口腔内装置は寝ている間だけ口に入れるもので、気道を広げておくのに役立ちます。装置の多くは、上下の歯の形状に合わせて成形されたプラスチック製の2つの部品で構成されます。この2つの部品は連結しており、寝ているときに舌が後方に下がってのどをふさがないように、下あごが前に引き出されるように設計されています。

いびきはよくみられるもので苦痛に感じる人もおり、またCPAPの使用は困難なことがあるため、十分に研究されていない一部の代替器具が市販されており、消費者に直接販売されています。治療計画を開始する前に、患者は自身の治療選択肢について医療提供者と話し合うべきです。

上気道に刺激を与える方法では、埋め込み型の電気装置を用いて、舌を制御する 脳神経 脳神経の概要 脳神経は12対の神経で構成され、脳から直接出て頭部、頸部、体幹の様々な部位へと伸びています。脳神経には、特殊な感覚(視覚、聴覚、味覚など)を担うものと、顔の筋肉を制御したり腺を調節したりするものがあります。脳神経は、それぞれの位置に応じて、脳の前から後ろに向かって番号と名前が付けられています。... さらに読む (舌下神経)の1本を刺激する処置を行います。この神経を刺激することにより、舌を前方に押す筋肉が活性化され、気道が開いた状態に保たれるようになります。中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の一部の患者で、CPAP療法に耐えることができない場合に、この治療法がうまくいく可能性があります。

扁桃肥大がある場合や、別の組織による上気道の閉塞が明らかな場合は、頭や首の手術が睡眠時無呼吸症候群の治療として有用です。小児では、扁桃とアデノイドを切除する手術(アデノイド切除術)が最も一般的な治療法です。この種の手術により、通常は睡眠時無呼吸症候群が緩和されます(特に扁桃やアデノイドが腫れている場合)。ほかに有効な治療法がない場合は、閉塞が明らかではなくても手術が行われることがあります。

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術は、上気道から一部の組織(例えば、口蓋、口蓋垂、扁桃、およびアデノイド)を切除することによって上気道を広げる外科手術です。この手術は、ほとんどの場合、軽度の睡眠時無呼吸症候群の患者に有効です。しかしながら、この手術は、例えば咽頭壁(鼻および口の奥の空洞)の安定を試みるような、より侵襲性の低いアプローチにほとんど取って代わられています。ときに他の外科的処置も使用されますが、その予測性と耐久性について十分に研究されたものではありません。

気管切開(呼吸用のチューブを挿入するために気管に永続的な開口部を作ること)は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する最も効果的な治療法です。しかしながら、気管切開は他の治療法で効果がみられなかった重症度が最も高い患者に対する最後の手段としてのみ行われます。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

中枢性睡眠時無呼吸症候群の場合、可能であれば基礎疾患を治療します。例えば、 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全 の症状を軽くする薬を投与することがあります。また、飲酒や睡眠時無呼吸症候群を悪化させる薬剤を避けるか量を減らすことが勧められます。睡眠時に血液中の酸素レベルが低下する患者では、鼻カニューレにより(加圧しないで)酸素を供給することで、無呼吸の発生頻度が減少することがあります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群の患者の中には、レベルを低く設定した持続陽圧呼吸療法(low levels of CPAP)が有効になる人もいます。チェーン-ストークス呼吸のある中枢性無呼吸患者では、この治療を用いることにより、無呼吸の発生頻度が減少し、心機能が改善しますが、生存期間が長くなることはありません。

高地生活が原因で中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症した患者や、一部の心不全患者には、アセタゾラミドが有益である場合があります。

横隔膜を制御する神経を刺激して呼吸を補助する装置(横隔膜ペースメーカー)を植込む処置が有益になる場合もあります。

さらなる情報

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