腎臓

執筆者:Glenn M. Preminger, MD, Duke Comprehensive Kidney Stone Center
レビュー/改訂 2022年 4月
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腎臓は尿路の中でもとりわけ特徴的な臓器で、ソラマメのような形をしています。左右とも長さは約12センチメートル、重さは約150グラムです。脊柱(背骨)の左右両側にあり、消化器系の臓器が納まっている空間(腹腔)より背中側に位置しています。

それぞれの腎臓には、大動脈から枝分かれした腎動脈と呼ばれる血管を通じて血液が流れ込みます。血液は腎動脈から徐々に細い動脈を通過していきますが、最も細くなった部分は細動脈と呼ばれます。細動脈を通過した血液は、毛細血管と呼ばれる微細な血管が房状になった糸球体という構造物に流入します。血液は個々の糸球体から、細い静脈につながった細動脈を通って流れ出ます。複数の細い静脈が合流して最終的に1本の太い腎静脈になり、腎臓に入った血液はこの静脈を通って出ていきます。

尿路の構造

腎臓の機能を担っている最小(顕微鏡レベル)の構造物はネフロンと呼ばれ、そこで血液がろ過され、尿が作られます。1個の腎臓に約100万個のネフロンがあります。それぞれのネフロンは、1つの糸球体をおわん状の薄い壁の構造物(ボーマン嚢)が取り囲んだ構造をしています。さらに、ボーマン嚢内の空間(ボーマン腔)から水分(この後すぐに尿になります)を排出する細い管(尿細管)もネフロンの一部です。尿細管は、近位曲尿細管、ヘンレ係蹄(けいてい)、遠位曲尿細管と呼ばれる3つの部分が連結する形で構成されています。ネフロンを構成する3番目の部分は、複数の尿細管から排出される液体が集められる集合管です。この液体が集合管を通過したら、尿とみなされます。

腎臓は外側の部分(皮質)と内側の部分(髄質)に分けられます。糸球体はすべて皮質の中にありますが、尿細管は皮質と髄質の両方にまたがっています。何千ものネフロンからの集合管を通過してきた尿は、コップのような形をした構造物(腎杯)へと流れ込みます。腎杯は1つの腎臓にいくつか存在しますが、それらから出た尿はすべて腎盂(じんう)と呼ばれる腎臓中央の空洞部分に流れ込みます。左右それぞれの腎臓の腎盂を出た尿は尿管に流れ込みます。

腎臓の機能

腎臓は通常2つありますが、健康な腎臓であれば1つだけでも、2つの腎臓分の機能を十分に果たすことができます。生まれつき腎臓が1つしかない人もいれば、腎不全の人への移植のために片方の腎臓を提供した人もいます。また、病気やけがのために片側の腎臓に重い障害がある人もいます。

腎臓の主な機能は以下の通りです。

  • 体内の水分とミネラル(電解質も含まれる)のバランスを適度に保つ

腎臓のその他の機能としては以下のものがあります。

  • 体内で栄養分が処理されて生じる老廃物や薬物、有害物質(毒素)などのろ過と排泄

  • 血圧の調節

  • 特定のホルモンの分泌

水分と電解質のバランス

人間が生命を維持するためには、定期的に水分を摂取する必要があります。また体内での栄養分の処理(代謝)によっても水分が作られます。体内に入ってくる水分の量に対して体外に排出される水分の量が十分でなくなると、水分が急激に蓄積していく結果、その人は病気になり、場合によっては死に至ることもあります。水分量が過剰になれば体内の電解質が薄まり、水分摂取を制限すれば電解質が濃くなります。体内の電解質の濃度は厳密に維持される必要があります。腎臓は、水分と電解質のバランスを適切に調節して維持する役割を果たしています。

血液は強い圧力を受けて糸球体に流れ込みます。血液のうち液体成分の大半が糸球体の小さな穴からろ過されますが、タンパク質などの大きな分子と血球(血液の細胞)は、ろ過されずに血液中に残ります。ろ過されてタンパク質や血球が除去された液体は、ボーマン腔に入った後、ボーマン嚢から出る尿細管に流れ込みます。健康な成人の場合、1日に約180リットルの水分がろ過されて尿細管に流れ込みます。しかし、その水分(とその中に含まれる電解質)は腎臓内でほぼすべて再吸収され、尿として排泄されるのは約1.5~2%だけです。このように水分が再び吸収される仕組みは、ネフロン内の部位に応じて数種類の電解質が活発に分泌・再吸収され、それと一緒に水分が吸収されるという性質と、ネフロン内の部位に応じて水分の透過性が異なるという性質によって成り立っていて、この仕組みにより、ちょうどよい量の水分が体内の循環に戻るようになっています。これらのプロセスの詳細は少し複雑です。

尿細管の最初の部分(近位曲尿細管)では、ナトリウム、水、ブドウ糖(グルコース)など糸球体を通過した物質の大半が再吸収され、それらは最終的に血液中に戻ります。尿細管の2番目の部分(ヘンレ係蹄)では、ナトリウム、カリウム、塩素イオンが細胞膜のポンプ機能によって再吸収されます。そのため、残った液体は次第に薄くなっていきます。薄くなった液体は尿細管の次の部分(遠位曲尿細管)に進みますが、そこではナトリウムがさらに血液中に吸収され、その代わりにカリウムと水素イオンが尿細管の内部に移行します(尿細管分泌)。

尿細管を通過した液体は、数個のネフロンの尿細管が1本に合流した集合管へと流れ込みます。集合管に流入した時点では、尿は薄いままの場合もあれば、水分が吸収されて(血液中に戻り)濃くなっている場合もあります。水の再吸収は、抗利尿ホルモン(脳下垂体から分泌される)とその他のホルモンによって調節されています。それらのホルモンは、腎臓の機能を調節するとともに、尿の組成を調節して体内の水と電解質のバランスを維持するのに貢献しています。

ろ過と排泄

体内で栄養素が代謝されると、特定の老廃物が作られますが、それらの物質は体内から除去する必要があります。主な老廃物の1つに、タンパク質の代謝によって作られる尿素があります。尿素は糸球体の壁を自由に通過して尿細管へと排出されますが、再吸収されることはなく、その全量が尿に含まれることになります。

そのほかにも望ましくない物質(代謝による酸などの老廃物、多くの毒素、薬物など)が尿細管の細胞によって活発に尿中に排出(排泄)されます(これらが尿特有の臭いの素になります)。

血圧の調節

腎臓のもう1つの機能は、過剰なナトリウムを排出することで血圧の調節を助けることです。排出されるナトリウムの量が少なすぎると、血圧は上昇しやすくなります。また腎臓はレニンと呼ばれる酵素を分泌することで、血圧の調節機能に関与しています。血圧が正常な範囲を超えて低下すると、腎臓から血液中にレニンが分泌され、それがレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系という機構を活性化し、その結果として血圧が上昇します。腎臓からはウロテンシンという物質も分泌され、この物質は血管を収縮させ、血圧の上昇を補助します。腎不全のある人では、血圧の調節が難しくなり、高血圧になりやすくなります。

ホルモンの分泌

腎臓はホルモンを分泌することによって、赤血球の生産や骨の成長と維持など、重要な身体機能の調節に関与しています。

腎臓では、骨髄での赤血球の生産を促すエリスロポエチンと呼ばれるホルモンが作られます。これにより骨髄中での赤血球の生産が活発になり、新たにできた赤血球は骨髄から血液中に放出されます。

健康な骨の成長と維持は、腎臓を含めたいくつかの器官系が関与する複雑なプロセスです。その中で腎臓は、骨の健康に重要なミネラルであるカルシウムとリンの血中濃度を調節する役割を担っています。そのために腎臓では、皮膚で作られ、また多くの食物にも含まれる通常のビタミンDを活性型ビタミンDカルシトリオール)に変換し、この物質がホルモンと同じように作用して、小腸でのカルシウムとリンの吸収を促進します。

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