(尿細管疾患に関する序 尿細管疾患に関する序 腎臓では、血液のろ過と浄化が行われます。腎臓はさらに、血液中に含まれる水分、 電解質(ナトリウム、カリウム、重炭酸塩、塩化物など)、栄養素のバランスを維持するという役割も果たしています。 腎臓のこうした機能は、血液が腎臓の糸球体(小さな穴が多数あいた血管でできた微細な球状の組織)を通過する際に、その一部がろ過されることから始まります。この... さらに読む も参照のこと。)
ファンコニ症候群はファンコニ貧血とは無関係ですから、混同しないよう注意が必要です。
ファンコニ症候群は、遺伝性の場合と、以下の原因によって起こる場合があります。
特定の薬への曝露(一部の化学療法薬および抗レトロウイルス薬など)
重金属やその他の化学物質への曝露
ファンコニ症候群は通常、シスチン症など他の遺伝性の病気と一緒に発生します。シスチン症は遺伝性の アミノ酸代謝の病気 アミノ酸代謝異常症の概要 アミノ酸代謝異常症は 遺伝性代謝疾患です。遺伝性疾患は、これらの病気を引き起こす欠陥のある 遺伝子が親から子どもに受け継がれることで発生します。ほとんどの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーをもっています。通常、病気の発生には異常な遺伝子のコピーが2つ必要であるため、普通はいずれの親にも疾患は現れていません。一部の遺伝性代謝疾患は X連鎖性であり、これは男児に異常な遺伝子のコピーが1つあるだけで病気が発生することを... さらに読む で、アミノ酸の一種であるシスチンが全身に異常に蓄積し、尿中シスチン濃度が異常となることが特徴です。シスチンの異常蓄積により、眼の病気、肝臓の腫大、甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)が起こります。
ファンコニ症候群の症状
遺伝性ファンコニ症候群では、過剰な水分摂取や排尿の増加といった症状が通常は乳児期から始まります。
ファンコニ症候群およびシスチン症のある小児は、 発育不良 発育不良 発育不良とは、体重増加と体の成長の遅れのことをいい、発達や成熟の遅れにつながります。 病気や適切な栄養をとれないことが原因で発育不良が起こります。 小児の成長曲線、身体診察、健康歴、家庭環境に基づいて診断を下します。 生後1年間の栄養が不足すると、小児に発達の遅れが生じることがあります。 治療法としては、栄養のある食事や病気の治療などがあります。 さらに読む 、成長の遅れ、 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が、数カ月から数年かけて徐々に低下します。 主な原因は糖尿病と高血圧です。 血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなります。 症状としては、夜間の排尿、疲労、吐き気、かゆみ、筋肉のひきつりやけいれん、食欲不振、錯乱、呼吸困難、体のむくみ(主に脚)などがあります。 診断は血液検査と尿検査によって下されます。 さらに読む を示すことがあります。腎不全のため、小児期に 腎移植 腎移植 腎移植とは、生きている人または死亡した直後の人から健康な腎臓を摘出し、末期腎不全の患者に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 不可逆的 腎不全(腎臓が機能せず、治療しても治らない)の患者にとって、年齢にかかわらず腎移植は透析に代わる救命法です。腎移植は最も多く行われている臓器移植です。 腎移植は以下の病気がある場合に必要になります。 進行した不可逆的腎不全 さらに読む が必要になる場合があります。
成人では、病気が起きてからしばらく経過するまで、症状が出ないことがあります。成人で最もよくみられる症状としては、筋力低下や骨の痛みなどが挙げられます。
多くの場合、診断がつくまでに骨や腎臓の組織にある程度の損傷が発生します。
ファンコニ症候群の診断
血液と尿の検査
症状と血液の異常(酸の上昇)や尿の異常(グルコース高値)を示す検査結果から、ファンコニ症候群が疑われる場合があります。尿からブドウ糖(ただし血糖値は正常)、リン、およびアミノ酸が高い濃度で検出されれば、診断は確定します。
ファンコニ症候群の治療
炭酸水素ナトリウム溶液を飲む
ファンコニ症候群を完治させることはできませんが、適切な治療によりコントロールすることは可能です。効果的な治療を行えば、骨や腎臓の組織の損傷がさらに悪化するのを防ぎ、損傷の一部を治癒させることができる場合もあります。アシドーシス(血液の酸性度が高くなった状態)がみられる場合は、炭酸水素ナトリウムの溶液を飲むことで酸を中和します。血液中のカリウム濃度が低い場合は、カリウムのサプリメントの摂取が必要になることもあります。
骨の病気には、リンとビタミンDのサプリメントによる治療が必要です。
ファンコニ症候群の小児に腎不全が起きた場合、 腎移植 腎移植 腎移植とは、生きている人または死亡した直後の人から健康な腎臓を摘出し、末期腎不全の患者に移植することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 不可逆的 腎不全(腎臓が機能せず、治療しても治らない)の患者にとって、年齢にかかわらず腎移植は透析に代わる救命法です。腎移植は最も多く行われている臓器移植です。 腎移植は以下の病気がある場合に必要になります。 進行した不可逆的腎不全 さらに読む が救命につながることがありますが、シスチン症が基礎疾患としてある場合には、他の臓器で進行性の損傷が続いて、最終的に死に至ることがあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases[NIDDK]):実施中の研究に関する情報、英語およびスペイン語の消費者向け健康情報、ブログ、ならびに地域の健康促進プログラムやアウトリーチプログラム。