薬の過剰摂取による毒性

執筆者:Daphne E. Smith Marsh, PharmD, BC-ADM, CDCES, University of Illinois at Chicago College of Pharmacy
レビュー/改訂 2021年 4月
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過剰摂取による毒性とは、偶発的(医師、薬剤師、または薬を服用している人の誤りによる)あるいは故意の(殺人や自殺を意図)薬の過剰摂取によって起こる、重度の、多くの場合は有害で、ときには致死的な毒性反応のことをいいます。

同じ効果をもつ2つの薬がある場合、医師はしばしば過剰摂取による毒性のリスクが低い方の薬を選びます。例えば、鎮静薬、抗不安薬、睡眠補助薬が必要な場合、医師はフェノバルビタールなどのバルビツール酸系ではなく、ジアゼパムやテマゼパム(temazepam)などのベンゾジアゼピン系の薬剤を処方します。ベンゾジアゼピン系薬剤はバルビツール酸系よりも効果が高いわけではありませんが、安全域がより広く、偶発か故意かにかかわらず、過剰摂取による重度の毒性を引き起こす可能性がはるかに低いからです。フルオキセチンやパロキセチンなどの新規抗うつ薬が、イミプラミンやアミトリプチリンのような同程度の効果をもつ古い抗うつ薬に大きくとって代わるようになったのも、安全性がその理由です(表「うつ病の治療に用いられる薬剤」を参照)。

年少の小児では過剰摂取による毒性のリスクが高まります。成人向けの用量の成分を含んだ鮮やかな色の錠剤やカプセルは、よちよち歩きの幼児や年少の小児の注意を引くものです。米国では連邦規制により、内服する処方薬はすべてチャイルドプルーフの容器に入れて調剤しなければなりません(そのような容器の使用が困難である趣旨の書類にサインして使用を放棄している場合を除きます)。

米国の大半の大都市圏には、化学物質や薬物による中毒についての情報を提供する中毒情報センターがあり、ほとんどの電話帳には地元のセンターの電話番号が記載されています。【訳注:日本では(公財)日本中毒情報センターが電話による無料情報サービスを提供しています。大阪072-727-2499、つくば029-852-9999】この電話番号は、メモして電話の近くに置いておくか、オートダイヤル機能を備えた電話または携帯電話に登録しておくとよいでしょう。

アレルギー反応の概要も参照のこと。)

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国中毒情報センター協会(American Association of Poison Control Centers:様々な毒物に関する情報、緊急ヘルプライン(1-800-222-1222)【訳注:日本では、大阪中毒110番072-727-2499、または、つくば中毒110番029-852-9999】、予防に関する助言を提供しています。

  2. FDA Adverse Event Reporting System:FDAの有害事象報告システム(Adverse Event Reporting System[FAERS])に関するQ&Aを掲載しています。

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