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先発医薬品とジェネリック医薬品の概要

執筆者:

Daphne E. Smith Marsh

, PharmD, BC-ADM, CDCES, University of Illinois at Chicago College of Pharmacy

レビュー/改訂 2020年 4月
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本ページのリソース

薬にはいくつかの名前があります。薬が発見されると、まず、構成元素や分子構造を表す化学名がつけられます。化学名は日常的に使うにはあまりにも複雑で扱いにくいのが通常です。次に研究者たちが簡単に扱えるように、化学名を簡略化した名前かコード名(RU486のように)がつけられます。

薬が食品医薬品局(FDA)に承認されると(FDAは米国で販売される薬の安全性と有効性を保証する米国政府責任機関で、日本では厚生労働省が承認します)、次の名前がつけられます。

  • 一般名(正式名称)

  • 製品名(登録商標名もしくは商標、または販売名)

例えば、フェニトインは一般名で、Dilantinが製品名です。この薬は一般的に使われている抗てんかん薬です。

一般名は、米国では、公的機関の米国一般名委員会(USAN)によって割り当てられます。

製品名は、その薬の承認を申請した製薬会社が名づけるもので、その会社が独占的な権利を有することを示すものです。

特許で保護されている薬は、会社が製品名で販売します。特許が切れた(特許による保護の期間が終了した)薬は、一般名でも、製品名でも販売できます。特許が切れた薬の販売承認を他社が受ける場合、一般名は同じ名称を使わなければなりませんが、製品名は独自の名前をつけることができます。その結果、ジェネリック医薬品は、一般名で販売されることもあれば(例えば、イブプロフェン)、様々な製品名で販売されることもあります(Advil、Motrinなど)。

一般名と製品名は、薬を処方したり、処方薬を調剤するときに他の薬と間違えないようにするため、ほかに同じものがあってはなりません。起こりうる混乱を防ぐため、製薬会社がつけたそれぞれの製品名は、FDA(日本では厚生労働省)の同意を得なければなりません。

政府職員、医師、研究者などが新薬について論文などを執筆する際には、一般名を使います。一般名はある会社の特定の銘柄や特定の製品ではなく、薬の有効成分そのものを指すからです。しかし、医師が処方せんを書くときは製品名を使うのが一般的です。これは製品名の方が覚えやすいため新薬を製品名で覚える医師が多いからです。

一般名は製品名よりも複雑で覚えにくいのが普通です。一般名の多くは、薬の化学名、構造式、化学式などを簡略化したものです。これに対し製品名は、一般にその薬の使用目的に関連した、親しみやすく覚えやすい名前がつけられ、そのため医師が処方する際や、消費者が薬を探す際によく用いられます。製品名には、薬の特性が分かるようなものが多くみられます。例えば、Lopressorは血圧を下げる(lowers blood pressure)薬、Glucotrolは血糖値の上昇を抑える(controls high blood glucose)薬、Skelaxinは骨格筋を弛緩(relaxes skeletal muscles)させる薬です。ときには、単に薬の一般名を縮めたものを製品名として使う場合もあります。例えば、Minocinは一般名のミノサイクリンを縮めたものです。

食品や家庭用品の場合、ジェネリック商品というと、価格は安いが効果や品質の点では劣る、ブランド品のコピー商品のことを意味することがあります。しかし、ほとんどのジェネリック医薬品は、先発医薬品 より安い価格ながら、同等の効果・品質を有しています(ジェネリック医薬品の生物学的同等性と互換性 ジェネリック医薬品の生物学的同等性と互換性 ある製薬会社が開発した先発医薬品のジェネリック医薬品を別の製薬会社が開発するには、まず、その製薬会社の製剤の専門家が製造方法を解明しなければなりません。単に先発医薬品の化学構造をそのまま再現したり、化学薬品の製造業者から有効成分を購入するだけでは不十分です。( 先発医薬品とジェネリック医薬品の概要も参照のこと。)... さらに読む を参照)。実際に、ジェネリック医薬品のメーカーは、先発医薬品を管理している会社の委託を受けて、多くの先発医薬品を製造しています。場合によっては、複数のジェネリック医薬品が利用できることもあります。例えば、痛みや発熱を緩和する目的で一般的に使用されている非処方薬であるアセトアミノフェンは、いろいろなバージョンが多くの製薬会社から販売されています。

特許による薬の保護

米国では、新薬を開発した製薬会社は、薬そのものとその製造方法、使用法のほか、薬を血液中に運んで放出する方法にまで特許を取得することができます。このため、製薬会社が1つの薬について複数の特許を所有していることがよくあります。特許を取得した製薬会社は1つの薬について20年間の独占権が認められます。追加特許を申請すれば、特許権の有効期限を延長することもできます。通常は、薬が発見されたとき(特許を取得したとき)から、その薬をヒトに使用することが承認されるまで約10年かかるため、製薬会社が新薬を独占販売できる期間は、特許期間の半分程度です。米国食品医薬品局(FDA)は、後天性免疫不全症候群(エイズ)やがん、効果的な治療法がない生命を脅かす病気を治療する薬については、承認審査をスピードアップすることがあります。

ある薬の特許期間が終了すると、特許権を保有していた製薬会社とは別の製薬会社が、FDAの承認を得たその薬と同じ有効成分のジェネリック医薬品を製造し、販売できます。ジェネリック医薬品は、オリジナルの先発医薬品よりも低い価格で販売されるのが普通です。ジェネリック医薬品を製造する製薬会社は、オリジナルの開発コストを回収する必要がなく、マーケティングコストも普通は少なくてすむからです。ジェネリック医薬品は一般名で販売することも、製品名で販売することもできますが(ブランデッドジェネリック)、オリジナルの特許所有者が使用していた製品名では販売できません。

特許が切れた薬でも、ジェネリック医薬品が出ないこともあります。複製が非常に困難であったり、あるいは、ジェネリック医薬品が先発医薬品と同じ作用を発揮することを試験で十分に実証できないことがあるからです。ときには、その先発医薬品の市場が非常に小さいため、ビジネスとして成り立たないという理由から、ジェネリック医薬品が製造されないこともあります。

市販のジェネリック医薬品

一部の非処方薬(市販薬)ではジェネリック医薬品が出ており、しばしばドラッグストアのチェーン店や生活協同組合のプライベートブランドとして低価格で販売されています。市販のジェネリック医薬品は、処方薬のジェネリック医薬品と同じ方法で政府機関により審査され、処方薬のジェネリック医薬品と同じ要件を満たさなければなりません。

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