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疾患

運動の効果

執筆者:Brian D. Johnston, Exercise Specialist, International Association of Resistance Training
レビュー/改訂 2021年 8月
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    定期的な運動をすると心臓が強くなり、肺の調子もよくなります。これにより、心血管系が1回の心拍で運ぶ酸素の量が増加し、肺に取り込むことのできる最大酸素量が増えます。運動には以下のような効果があることも示されています。

    • 血圧を低下させる

    • 総コレステロール値と、低比重リポタンパク質(LDL)コレステロール(悪玉コレステロール)値をいくぶん低下させる

    • 高比重リポタンパク質(HDL)コレステロール(善玉コレステロール)値を上昇させる

    こうした有益な効果によって、心臓発作、脳卒中、冠動脈疾患のリスクが低下します。さらに、定期的な運動をしている人では、結腸がんや一部の糖尿病が起こる可能性が低くなります。手短に言えば、定期的な運動は、病気を防ぎ、健康的な体重を維持し、健康と寿命を保ち、生活の質(QOL)を向上させる最良の手段の1つです。

    また、運動によって筋肉が強化され、それまではできなかった作業ができるようになったり、容易になったりします。体を使う作業は筋力とある程度の関節の柔らかさが必要です。定期的な運動によってその両方を向上させることができます。

    筋肉や関節を伸ばす運動をすれば、体の柔軟性が増してけがをしにくくなります。さらに運動によって、関節の周囲や全身の組織が強くなりバランスが改善されるため、転倒の防止にもつながります。速足のウォーキングやウェイトトレーニングなどの、体に負荷をかける運動を行うと骨が強くなり、骨粗しょう症の予防につながります。また運動は多くの場合、変形性関節症患者における機能の改善や痛みの緩和に役立ちますが、個人に合った運動メニューを作る必要があり、ジャンプやランニングのような関節に過度の負担がかかる運動は避けた方がよいでしょう。

    知っていますか?

    • フレイルの高齢者でもほとんどの場合、運動することで、少なくとも若い人たちと同程度の効果が得られます。

    運動によって、鎮痛や幸福感をもたらすとされる脳内の化学物質、エンドルフィンの体内濃度が上昇します。つまり、運動は気分や活力の改善に役立ち、さらには抑うつの軽減にも有用です。運動によって健康状態や外観が改善すると、その人の自発性も高まります。

    これらのほかにも、高齢者が定期的な運動を行えば、機能的能力が改善して転倒や骨折を予防できるため、自立性を保つ一助になります(高齢者の運動を参照)。介護施設などで暮らすフレイルの高齢者でも、運動によって筋肉を強化できます。また、運動によって食欲が増し、便通がよくなり、睡眠の質が上がる傾向があります。

    運動をやめると、その効果は数週間のうちに消え始めます。心臓の強さ、筋力、HDLコレステロール値が低下するのに対し、血圧が上昇し、体脂肪も増えます。元運動選手であっても、運動をやめてしまえば、その効果を長期間維持することはできません。しかし、過去に活発に運動をしていたことのある人はフィットネスがより速く回復します。

    運動をするその他の理由

    健康と快適さのために運動を推奨する以外に、医師が特定の運動プランを指示することもあります。例えば、待機手術を受ける予定の患者に、術後の回復を促すために、決まった運動を行うよう勧めます。また、心臓発作や脳卒中を起こした人や、大きな手術を受けたり重傷を負ったりした人には、傷や病気から回復するためのリハビリとして、特定の運動プログラムが組まれます(リハビリテーションの概要を参照)。

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