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医療放射線のリスク

執筆者:

Mehmet Kocak

, MD, Rush University Medical Center

レビュー/改訂 2019年 5月
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本ページのリソース
  • 高エネルギー電磁波(X線,γ線)

  • 粒子線(α粒子,β粒子,中性子)

電離放射線は,放射性元素,ならびにX線および放射線療法機器などの装置から放出される。

電離放射線を用いる診断検査(例,X線,CT,核医学検査)のほとんどで,患者は一般に安全とみなされている比較的低線量の放射線に曝露する。しかしながら,全ての電離放射線は有害となる可能性があり,それ未満では有害作用は起こらないという閾値はないため,放射線曝露を最小化するためあらゆる努力を行う。

放射線曝露を表すには様々な方法がある:

  • 吸収線量とは,単位質量当たりの吸収された放射線の量である。これは特別の単位であるグレイ(Gy)およびミリグレイ(mGy)で表される。以前はradiation-absorbed dose(rad:ラド)で表されていた;1mGy = 0.1radである。

  • 等価線量は,被曝した放射線の種類(例,X線,γ線,電子線)に基づく組織への作用に応じた放射線荷重係数を吸収線量に乗じたものである。これはシーベルト(Sv)またはミリシーベルト(mSv)で表される。以前はroentgen equivalents in man(rem:レム)で表されていた(1mSv = 0.1rem)。CTなどのX線の場合,放射線荷重係数は1である。

  • 実効線量とは,がんのリスクの尺度である;これは放射線に曝露した組織の感受性(例,性腺が最も感受性が高い)に基づき等価線量を補正する。SvまたはmSvで表される。若年者では実効線量がより高い。

医用画像検査は,電離放射線への曝露源の1つに過ぎない(典型的な線量* 典型的な線量* 典型的な線量* の表を参照)。他の曝露源として環境からのバックグラウンドでの曝露(宇宙線および天然の放射性同位元素から)があり,これは重大なものとなることがあり,特に高度が高いとその可能性が高い;飛行機に搭乗すると,以下の通り環境放射線への被曝が増大する:

  • 大陸の端から端への単回飛行:0.01~0.03mSv

  • 米国におけるバックグラウンド放射線の年間平均被曝量:約3mSv

  • 高地(例,コロラド州デンバー)での年間平均被曝量:10mSvを超える場合あり

複数回のCTを行った場合のように(CTは他の画像検査に比べて高い線量が必要となるため),個人に蓄積した総線量が高いと放射線は有害となることがある。

以下のような特定の高リスクの状況でも,放射線曝露が懸念される:

  • 妊娠期

  • 乳児期

  • 小児期早期

  • マンモグラフィーが必要な女性の若年成人期

米国では,CTは全画像検査の約15%を占めるが,画像診断において照射される総放射線量の最大70%を占める。米国で最もよく使用される型であるマルチスライスCTスキャナは,旧式のシングルスライスCTスキャナに比べて約40~70%多く放射線を照射する。しかしながら,最近の進歩(例,自動曝露制御,反復画像再構成アルゴリズム,第3世代のCTの検出器)により,CTに用いられる放射線量が有意に減少する可能性が高い。医用画像検査で用いられる電離放射線への曝露の急増に関する懸念に対応して,American College of RadiologyがImage Gently(小児用)およびImage Wisely(成人用)というプログラムを開始した。これらのプログラムは,放射線科医,医学物理学者,その他の画像検査技師,および患者の放射線曝露の最小化に関する手段および情報を提供している。

放射線およびがん

画像診断における放射線曝露によるがんのリスクが,非常に高線量の放射線に曝露した人々(例,広島および長崎に投下された原子爆弾の生存者)の研究から外挿によって推定されている。この分析によると,線量が数十mGy(CTなどで用いられる)であれば,低いながら実際にがんのリスクがあることが示唆される。肺塞栓症を検出するためにルーチンに施行されるCT肺血管造影では,2方向のマンモグラフィー10~25回と同等の放射線を乳房に照射する。

以下の理由により,リスクは若年患者でより高い:

  • 若年者はより長い余命があり,がんが発生するまでより時間がある。

  • 若年者ではより多くの細胞増殖(およびそれによるDNA損傷の感受性)が起こる。

腹部CTを行った1歳児はがんが発生する推定の生涯リスクが0.18%上昇する。より高齢の患者がこの検査を行った場合,リスクはより低い。

リスクは照射される組織にも依存する。リンパ組織,骨髄,血液,ならびに精巣,卵巣,および腸管は非常に放射線感受性が高いと考えられている;成人では,中枢神経系および筋骨格系は比較的放射線抵抗性である。

妊娠中の放射線

放射線のリスクは以下に依存する:

  • 線量

  • 検査の種類

  • 検査する部位

胎児の被曝量は母親に比べてはるかに低い場合がある;以下の部位のX線では,胎児の曝露は無視できるほど少ない:

  • 頭部

  • 頸椎

  • 四肢

  • 乳房(マンモグラフィー),子宮が遮蔽されている場合

子宮の被曝の程度は,妊娠期間およびそれによる子宮のサイズによって変わる。放射線の影響は受胎産物の胎齢(受胎からの時間)によって変わる。

推奨

電離放射線を用いる診断検査,特にCTは,明らかに必要なときにのみ行うべきである。代替法を考慮すべきである。例えば,幼児では,軽い頭部損傷はしばしば臨床所見に基づいて診断および治療でき,また虫垂炎はしばしば超音波検査によって診断できる。しかしながら,たとえ線量が高くても(例,CTの場合),便益が潜在的なリスクを上回る限り,必要な検査を控えるべきではない。

パール&ピットフォール

  • 放射線のリスクは妊娠初期(しばしば認識されていない)に最も高いため,放射線を用いる画像検査では,可能な場合は全ての妊娠可能年齢の女性で子宮を遮蔽する。

妊娠可能年齢の女性では,診断検査を行う前に妊娠が考慮されるべきであるが,これは特に第1トリメスターの中でも初期,しばしば妊娠が気づかれていない時期に放射線曝露のリスクが最大であるためである。そのような女性ではできれば子宮を遮蔽すべきである。

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