耐性(toleranceとresistance)

執筆者:Shalini S. Lynch, PharmD, University of California San Francisco School of Pharmacy
レビュー/改訂 2019年 7月
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    tolerance(耐性)とは,繰り返し使用される薬剤に対する反応が低下することである。resistance(耐性)とは,微生物や腫瘍細胞が以前は破壊的な作用を示していた薬物に抵抗する能力を獲得することである。

    耐性(tolerance)が生じる薬物の例としては,アルコールやオピオイドなどがある。耐性(tolerance)に関与する機序の1つは,例えば,チトクロムP450酵素を始めとする肝酵素の誘導による代謝の加速である。一般に,耐性(tolerance)が生じると,同じを効果を得るのにより多くの用量での投与が必要になる。他に考えられる機序は,薬物-受容体間の結合親和性の低下と受容体の数の減少である。耐性(tolerance)が生じる機序は常に明らかというわけではない。

    耐性(resistance)の例としては,以下のものが挙げられる:

    • 以前は効果がみられた抗菌薬で殺傷または阻害効果が得られなくなった場合,その菌株は耐性(resistant)を獲得したことになる。その機序は,遺伝子の突然変異または獲得に起因する遺伝子変化から始まる。かつて効果的であった抗菌薬によって非耐性菌が選択的に排除されるため,耐性菌が優勢な菌種となる(抗菌薬/抗菌薬耐性の概要を参照)。

    • ある抗がん剤に対する耐性を付与する遺伝子変異が発生し,その抗がん剤が繰り返し使用され,結果的に耐性のない腫瘍細胞が選択的に排除されると,その腫瘍は耐性(resistant)を獲得したことになる。例えば,多くの慢性骨髄性白血病患者は,T315I変異が出現することでチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブに対して耐性を示すようになる。

    • コルチコステロイドへの耐性は,喘息や炎症性腸疾患など,いくつかの疾患の治療に影響を及ぼす可能性がある。この種の耐性の機序は十分に解明されていないが,いくつかの因子(例,感染症,酸化ストレス,アレルゲンへの曝露,炎症,ビタミンD3欠乏症,遺伝子変異または遺伝的変化)が関与している可能性がある。

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