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薬物-受容体相互作用

執筆者:

Abimbola Farinde

, PhD, PharmD, Columbia Southern University, Orange Beach, AL

レビュー/改訂 2019年 6月
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受容体は,細胞間および細胞内の化学的シグナル伝達に関与する高分子であり,細胞膜表面上または細胞質内にある(生理的受容体タンパク質および薬物受容体タンパク質の種類 薬物反応における加齢の影響 薬物反応における加齢の影響 の表を参照)。活性化した受容体は,細胞の生化学的過程(例,イオン伝導率,タンパク質リン酸化,DNA転写,酵素活性)を直接的または間接的に制御する。

受容体に結合する分子(例,薬物,ホルモン,神経伝達物質)をリガンドと呼ぶ。結合は特異的および可逆的でありうる。リガンドは,受容体を活性化または不活化することがあり,活性化により特定の細胞機能が上昇もしくは低下することがある。各リガンドは,複数の受容体サブタイプと相互作用を起こすことがある。1種類の受容体またはサブタイプに完全に特異的な薬物は,あるとしてもごくわずかであるが,ほとんどは相対的な選択性を有する。選択性とは,薬物が他の部位よりもある特定の部位に作用する程度のことであり,選択性は細胞受容体への薬物の物理化学的結合と大きく関連する。

薬物が所与の受容体に作用する能力は,薬物の親和性(ある瞬間においてその薬物がある受容体を占有する確率)および内在的効力(内在的活性―リガンドが受容体を活性化し細胞応答を導く程度)と関連する。薬物の親和性と活性はその化学構造によって決まる。

薬理作用は,薬物受容体複合体が持続する時間(滞留時間)によっても決まる。薬物受容体複合体の存続時間は,薬物の標的分子への結合速度および標的分子からの分離速度を制御する動力学過程(高次構造の変化)の影響を受ける。より長い滞留時間は,薬理作用の持続を意味する。長い滞留時間を有する薬剤には,フィナステリドおよびダルナビルなどがある。薬物の毒性が長引く場合は,長い滞留時間が不利となる可能性がある。一部の受容体では,薬物の一過性の受容体占有は望ましい薬理効果を生むが,長期の受容体占有は毒性を引き起こす。

生理機能(例,収縮,分泌)は通常複数の受容体が媒介する機序によって制御され,最初の分子的な薬物-受容体相互作用ならびに最終の組織もしくは器官の応答の間には,いくつかの段階(例,受容体共役,複数の細胞内2次情報伝達物質)が介入することがある。したがって,同一の望ましい応答を引き起こすために,いくつかの異なる薬物分子を用いることが多い。

受容体に結合する能力は,細胞内の制御機序の他に細胞外の因子にも影響される。ベースラインの受容体密度および刺激-応答機序の効率は,組織によって異なる。薬物,加齢,遺伝子変異,疾患などにより,受容体の数や結合親和性が増加(アップレギュレーション)または減少(ダウンレギュレーション)することがある。例えば,クロニジンはα2受容体のダウンレギュレーションを引き起こすため,クロニジンの投与を急に中止すると, 高血圧クリーゼ 高血圧緊急症 高血圧緊急症は,標的臓器(主に脳,心血管系,および腎臓)障害の徴候を示す重症高血圧である。診断は血圧測定,心電図,尿検査,ならびに血清BUNおよびクレアチニンの測定による。治療法は,静注薬(例,クレビジピン[clevidipine],フェノルドパム[fenoldopam],ニトログリセリン,ニトロプルシド,ニカルジピン,ラベタロール,エスモロール,ヒドララジン)を用いた迅速な降圧である。... さらに読む が起きる可能性がある。β遮断薬を長期投与するとβ受容体の密度が増加するため,投与を突然中止すると重度の高血圧や頻脈を来す可能性がある。受容体のアップレギュレーションやダウンレギュレーションは,薬物への順応に影響を及ぼす(例,脱感作,タキフィラキシー,耐性,獲得耐性,投与中止後の過感受性)。

リガンドは受容体高分子上の,認識部位と呼ばれる精密な分子領域に結合する。薬物に対する結合部位は,内因性作動物質(ホルモンまたは神経伝達物質)の結合部位と同じことも,異なることもある。受容体の隣接部位または異なる部位に結合する作動薬は,ときにアロステリック作動薬と呼ばれる。さらに非特異的な薬物結合,すなわち,受容体とされていない分子部位での結合も起こる(例,血漿タンパク質)。血清タンパク質への結合のような非特異的部位への薬物結合は,その薬物が受容体に結合することを妨げるため,その薬物は不活化される。非結合薬物は受容体と結合できるため,効果がある。

作動薬と拮抗薬

作動薬は受容体を活性化して期待する反応を引き起こす。従来の作動薬は,活性化された受容体の割合を増加させる。逆作動薬は,受容体をその不活性な高次構造の状態で安定化し,競合的な拮抗薬と同様に作用する。多くのホルモン,神経伝達物質(例,アセチルコリン,ヒスタミン,ノルアドレナリン)および薬物(例,モルヒネ,フェニレフリン,イソプロテレノール,ベンゾジアゼピン系薬剤,バルビツール酸系薬剤)は,作動薬として作用する。

拮抗薬は受容体の活性化を妨げる。活性化の阻止は多くの効果をもつ。細胞機能を通常は低下させる物質の作用を拮抗薬が遮断すれば,拮抗薬によって細胞機能が高まる。細胞機能を通常は高める物質の作用を拮抗薬が遮断すれば,拮抗薬によって細胞機能が低下する。

受容体拮抗薬は,可逆性または不可逆性に分類できる。可逆性拮抗薬は受容体から容易に解離し,不可逆性拮抗薬は安定的かつ永続的またはほぼ永続的な化学結合を受容体と形成する(例,アルキル化により)。偽不可逆的な拮抗薬は受容体から緩徐に解離する。

競合的な拮抗では,拮抗薬の受容体への結合が作動薬の受容体への結合を妨げる。

非競合的な拮抗では,作動薬と拮抗薬は同時に結合でき,拮抗薬の結合が作動薬の作用を低下または阻止する。

可逆的な競合的拮抗では,作動薬と拮抗薬は短時間持続する結合を受容体と形成し,作動薬,拮抗薬,ならびに受容体との間で定常状態に達する。そのような拮抗は,作動薬の濃度を上昇させることによって克服できる。例えば,ナロキソン(構造がモルヒネと似ているオピオイド受容体拮抗薬)は,モルヒネの前または後に時間を空けず投与した場合,モルヒネの作用を遮断する。しかし,モルヒネを多く投与することによってナロキソンによる競合的な拮抗は克服できる。

作動薬分子の構造類似体は,しばしば作動薬と拮抗薬の特性を有し,そのような薬物は,部分(低効力)作動薬もしくは作動薬・拮抗薬と呼ばれる。例えば,ペンタゾシンはオピオイド受容体を活性化するが,他のオピオイドによる受容体の活性化を遮断する。それゆえ,ペンタゾシンはオピオイド作用を引き起こすが,ペンタゾシンがまだ結合している間に別のオピオイドを投与すると,そのオピオイドの作用は低下する。ある組織で部分作動薬として作用する薬物が,別の組織では完全作動薬として作用することがある。

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