橈骨頭亜脱臼(肘内障)

執筆者:Danielle Campagne, MD, University of California, San Francisco
レビュー/改訂 2021年 1月
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橈骨頭亜脱臼は幼児でよくみられ,前腕の牽引により生じ,通常は肘関節を動かすことの拒否(偽麻痺)として現れる。

成人の場合,橈骨頭は橈骨頸部より幅が広いため,橈骨頭は頸部をきつく取り巻く靱帯を通り抜けられない。しかし,歩き始めの幼児(約2~3歳)の場合,橈骨頭の幅は頸部と同程度であり,橈骨頭がそのような靱帯を容易に通過できる(橈骨頭亜脱臼)。

亜脱臼は,養育者が嫌がる幼児を前に引っ張ったり,転倒しかけた幼児を手関節で捕まえたりといった,多くの養育者が覚えていない行動の際に,前腕を牽引することにより起こる。

脱臼の概要を参照のこと。)

パール&ピットフォール

  • 幼児が肘関節を動かしたがらない場合は,橈骨頭亜脱臼を考慮する。

症状

橈骨頭亜脱臼の症状は,疼痛および圧痛などである。ほとんどの患者は症状を説明できず,単に患肢を動かしたがらないだけである。橈骨頭は軽度の圧痛があるだけの場合がある。

診断

  • 通常は病歴聴取

単純X線は正常であり,牽引損傷の明らかな既往がある場合は,臨床的に別の診断が疑われない限り,単純X線は必要ないと考える専門医もいる(1)。

整復手技の使用が診断および治療に役立つことがある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Eismann EA, Cosco ED, Wall EJ: Absence of radiographic abnormalities in nursemaid's elbows.J Pediatr Orthop 34 (4):426–431, 2014.doi: 10.1097/BPO.0000000000000126

治療

  • 整復

整復は以下を用いて行われることがある:

  • 回外屈曲

  • 過回内

いずれの方法も鎮静または鎮痛を必要とせず,幼児は数秒間だけ疼痛を感じる。過回内の方が初回の試みによる成功率が高い(1)。(橈骨頭亜脱臼の整復も参照のこと。)

回外屈曲では,肘関節を完全に伸展させて回外した後,屈曲させる。橈骨頭が正常な位置に戻ったときに,しばしば触知できる微かなはじける感じまたはクリック感を認める。

過回内では,施術者が幼児の腕を肘の位置で支持し,橈骨頭に指で中程度の圧力を加える。次にもう一方の手で前腕遠位部を握り,前腕を過回内させる。整復されたときに,橈骨頭ではじける感じが触知できる。

患児は通常10~20分後に肘関節を動かし始める。動かさない場合,肘関節のX線撮影を行うべきである。動かした場合,X線および固定は不要である。

疼痛または機能障害が24時間を超えて持続する場合は,不完全な整復または不顕性骨折を疑うべきである。橈骨頭亜脱臼は20~40%の患児で再発する。

治療に関する参考文献

  1. 1.Bek D, Yildiz C, Köse O, et al: Pronation versus supination maneuvers for the reduction of 'pulled elbow': A randomized clinical trial.Eur J Emerg Med 16 (3):135–138, 2009.doi: 10.1097/MEJ.0b013e32831d796a

要点

  • 橈骨頭亜脱臼は,幼児でよくみられ,養育者が嫌がる幼児を前に引っ張ったり,転倒しかけた幼児を手関節で捕まえたりといった,多くの養育者が覚えていない行動の際に起こりうる。

  • ほとんどの患者は症状を説明できず,患肢を動かしたがらないことのみがこの損傷を示唆する所見となる場合がある。

  • 別の診断が疑われない限り,病歴に基づき診断する。

  • 関節の整復により治療し(回外屈曲または過回内による),橈骨頭が正常な位置に戻ったときに,しばしば触知できる微かなはじける感じまたはクリック感を認める。

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