浸水性肺水腫

浸水性肺水腫は，一般的には深い潜水の初期に発生する突然発症の肺水腫である。

（潜水障害の概要も参照のこと。）

浸水性肺水腫は，ここ20年間でより頻度が高くなっている。左室の収縮期または拡張期の機能異常が一因である可能性もある。浸水性肺水腫は，肺の圧外傷または減圧症とは関係しない。危険因子には，冷水への曝露，高血圧の既往，肺疾患，および左室拡張末期圧の上昇につながりうる他の心疾患（弁膜症および心筋症を含む）などがある。この症候群はダイバーや，特にオープンウォータースイミングの選手に起こる。

重度の呼吸困難が発生する。ダイバーは通常，急速に浮上し，咳嗽，塗抹状の喀痰，両肺野全体で聴取される断続性ラ音およびときにチアノーゼを呈する。低酸素症をしばしば呈する。

胸部X線は，典型的な肺水腫を示す。心臓の評価では通常，右室および左室の機能は正常で，冠動脈にも異常はみられないが，壁運動異常，弁機能障害，および心筋症が報告されている。心エコー検査では，拡張機能障害が記録されることがある。

浸水性肺水腫を消失させるのに通常は，低酸素血症を治療するための酸素投与，およびときに吸入β2作動薬で十分である。利尿薬が必要になることはまれである。重症例では機械的人工換気が必要になることがある。再圧治療の適応はない。