一般に生えている植物のうち少数は非常に高い毒性を有し,多くの植物は中程度の毒性を有する(中程度の毒性の植物 中程度の毒性の植物 の表を参照)。特異的な解毒剤のある植物中毒はほとんどない。植物の摂取では, 中程度の毒性の植物 中程度の毒性の植物 の表に記載されている植物も含めて,葉やその他の部分を濃縮してペースト状にしたり煎じて茶にしない限り,その結果生じる症状はほとんどの場合軽微である。
毒性が高く致死的となりうる植物には以下のものがある:
トウゴマおよびトウアズキの実
キョウチクトウおよびキツネノテブクロ
ドクニンジン
(中毒の一般原則 中毒の一般原則 中毒とは,毒性を示す物質と接触することである。症状は様々であるが,特定の共通する症候群によって特定の毒物のクラスが示唆されることがある。診断は主に臨床的に行うが,一部の中毒に対しては血液検査および尿検査が役立つことがある。治療は大部分の中毒では支持療法による;特異的な解毒剤が必要となる中毒は限られる。予防策には,薬剤の容器に明確にラベルを... さらに読む も参照のこと。)
トウゴマおよびトウアズキの実
トウゴマの実は,極めて濃縮された細胞毒であるリシンを含有する。トウアズキの実は,関連する毒素でさらに毒性の高いアブリンを含有する。いずれも,実には比較的不浸透性の殻があるので,毒素の放出には実を噛む必要がある。しかし,トウアズキの実の種皮はしばしば完全ではなく,単に細菌による消化でもアブリン毒素が放出されることがある。
いずれかの中毒の症状として,ときに重度で出血性である遅発性の胃腸炎があり,続いてせん妄,痙攣発作,昏睡,および死に至る。 全腸管洗浄 全腸管洗浄 中毒とは,毒性を示す物質と接触することである。症状は様々であるが,特定の共通する症候群によって特定の毒物のクラスが示唆されることがある。診断は主に臨床的に行うが,一部の中毒に対しては血液検査および尿検査が役立つことがある。治療は大部分の中毒では支持療法による;特異的な解毒剤が必要となる中毒は限られる。予防策には,薬剤の容器に明確にラベルを... さらに読む は摂取した全ての実の除去を目的とするため,これを考慮すべきである。
キョウチクトウおよびキツネノテブクロ
これらの植物およびスズラン(似ているが毒性は低い)はジギタリス配糖体を含有する。毒性としては,胃腸炎,錯乱,高カリウム血症,不整脈などがある。血清ジゴキシン濃度は,摂取の裏付けとはなりうるが,定量的な情報としては有用でない。
カリウム濃度を注意深くモニタリングする。 高カリウム血症 高カリウム血症 高カリウム血症とは,血清カリウム濃度が5.5mEq/L(5.5mmol/L)を上回ることであり,通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。通常,カリウム摂取の増加,腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤,および急性腎障害または慢性腎臓病など,いくつかの寄与因子が同時に存在する。高カリウム血症は,糖尿病性ケトアシドーシスや,代謝性アシドーシスでも生じる可能性がある。臨床症状は一般に神経筋症状であ... さらに読む は, 血液透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液とは反対方向にポンプで送られる。(その他の腎代替療法[RRT]については,... さらに読む にしか反応しないことがある。 不整脈 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む に対してカルシウムは推奨されない。ジゴキシン特異的Fabフラグメントが,心室性不整脈の治療に用いられている。
ドクニンジン
ドクニンジン中毒(ドクニンジンおよびドクゼリの中毒)は15分以内に症状を生じる可能性がある。
ドクニンジンにはニコチン様作用があり,口腔乾燥から始まり,頻脈,振戦,発汗,散瞳,痙攣発作,筋不全麻痺へと進行する。 横紋筋融解症 横紋筋融解症 横紋筋融解症は,骨格筋組織の分解が起きる臨床症候群である。症状および徴候として筋力低下,筋肉痛,赤褐色尿があるが,この三徴が全てみられる患者は全体の10%未満である。横紋筋融解症の診断は,病歴聴取と典型的には正常上限の5倍を超えるクレアチンキナーゼ(CK)高値の確認による。治療は支持療法であり,輸液のほか,誘因となる原因の治療と合併症があればその治療を行う。 重症例では生命を脅かす... さらに読む および徐脈が生じることがある。
ドクゼリはγ-アミノ酪酸(GABA)活性を増強するようである。症状としては, 胃腸炎 胃腸炎 胃腸炎は,胃,小腸,および大腸の粘膜組織に炎症が生じる病態である。大半の症例が感染性胃腸炎であるが,薬剤や化学的毒性物質(例,金属,植物性物質)の摂取後に発生する場合もある。感染は食品,水,またはヒトからヒトの経路を介して成立する。米国では,毎年6人に1人が食中毒にかかると推定されている。症状としては食欲不振,悪心,嘔吐,下痢,腹部不快感... さらに読む ,せん妄,難治性痙攣,昏睡などがある。