頭蓋縫合早期癒合症

執筆者:Simeon A. Boyadjiev Boyd, MD, University of California, Davis
レビュー/改訂 2020年 5月
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    頭蓋縫合早期癒合症は,1つまたは複数の頭蓋冠縫合が早期に癒合することである。

    頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論ならびに先天性頭蓋顔面異常の概要も参照のこと。)

    縫合の早期癒合により,閉鎖した縫合に対して垂直方向の発育が減少するため,特徴的な頭蓋変形を引き起こす。出生2500人当たり1例の頻度で発生する。どの縫合が癒合するかによって,いくつかの病型がある。

    頭蓋縫合

    矢状縫合早期癒合症

    矢状縫合早期癒合症は,最も頻度の高い病型で,狭く長い頭蓋変形(長頭症)につながる。大半の症例は孤発性かつ散発性であり,将来的な児への遺伝が繰り返されるリスクは3%未満である。学習障害が最大で40~50%の患者にみられる。矢状縫合早期癒合症にはいくつかの遺伝子が関与していることが明らかになっているが,現在のところ,他の先天奇形が存在しない限り特異的な遺伝子検査は推奨されていない。

    矢状縫合早期癒合症
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    この乳児の写真では,矢状縫合早期癒合症により狭く長い頭蓋変形(長頭症)がみられる。
    © Springer Science+Business Media

    冠状縫合早期癒合症

    冠状縫合早期癒合症は,2番目に頻度の高い病型で,両側性の場合は短く幅の広い頭蓋変形(短頭症),片側性の場合は斜めの頭蓋変形(斜頭症)を起こす。真性斜頭症(すなわち,頭蓋縫合早期癒合症によるもの)は,しばしば眼窩の非対称性につながり,体位性斜頭症と鑑別すべきであるが,体位性斜頭症は斜頸または一側ばかり下に向ける乳児の体位に起因するもので,眼窩の非対称性を来すことはない。体位性斜頭症では,頭蓋骨背部の一側が平坦で,同側の前額部の突出(frontal bossing)があり,平坦側の耳は前方へ押し出されているが,眼窩の対称性は維持される。冠状縫合早期癒合症例の約25%は症候群性であり,単一遺伝子の突然変異または染色体異常に起因する。孤発性かつ非症候群性の冠状縫合早期癒合症の患者では,いくつかの遺伝子における変異が同定されている。具体的には,両側性の冠状縫合早期癒合症患者の32%および片側性の冠状縫合早期癒合症患者の10%でTCF12遺伝子の変異がみられる(1)。現在では,散発例でも特異的な遺伝子パネル検査が推奨されている。

    冠状縫合早期癒合症は,Crouzon症候群,Muenke症候群,Pfeiffer症候群,Saethre-Chotzen症候群,カーペンター症候群,またはApert症候群において顔面・頭蓋外奇形を合併しているのが一般的である。

    冠状縫合早期癒合症(左側)
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    この乳児の写真では,左側に冠状縫合早期癒合症がある乳児が写っており,これにより著明なsagittal deviation,垂直方向の異所症,および右前額部の重度の突出が生じている。
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    冠状縫合早期癒合症に関する参考文献

    1. 1.Sharma VP, Fenwick AL, Brockop MS, et al: Mutations in TCF12, encoding a basic helix-loop-helix partner of TWIST1, are a frequent cause of coronal craniosynostosis.Nat Genet 45(3):304–307, 2013.doi: 10.1038/ng.2531.Epub 2013 Jan 27.Clarification and additional information.Nat Genet 45(10):1261, 2013.

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